親であっても教師であっても、日々、自分の状態と向き合い、感情と行動をコントロールしながら過ごすことは難しいもので練習がいるものです。私たち大人は過去の経験から対応を学んでいますが、経験の少ない子どもの場合は、大人にとって小さく思える問題でも過剰に反応したり、大きなストレスを感じたりしてしまうが多くあります。そのために、その問題が起こる前に想定して、自分ならどのように感じ、どのように対応するか、考えておくことは、実際にその問題に直面したときの「練習」になり、感情が先走って行動してしまうことを抑えてくれます。
感情をコントロールし問題に対処するために、ワシントン州の4年生の先生は、「問題の大きさ」について事前に考えるアクティビティを取り入れています。これは、実際に起こりうる問題について、自分たちにとってどの程度の問題なのかを子どもたちが話し合うものです。
各グループにいろいろな問題を書いた紙の入った箱を入れておきます。
例えば、『クラスメイトが勝手に自分の鉛筆を使った』『がんばって終わらせた宿題を校庭に置き忘れてしまった』『祖父の体調が悪く入院した』のように、実際の生活のさまざまな場面で起こりうる問題です。書かれた紙を一枚ずつひき、一人ひとりがその問題について、1(小さな問題)~5(大きな問題)のなかで自分にとってその問題がどれくらいの大きさなのかを考え、理由を話します。
鉛筆を勝手に使われたときのレベルは1とする子どもが多いかもしれません。しかし、ある子どもは、その鉛筆は引っ越した友だちにもらったとても大切にしていたものだったら、自分にとってはレベル3だと話します。また、宿題を置き忘れてしまった場合も祖父の病気も、一人ひとりのおかれた状況(宿題を忘れる頻度や教師との関係性、祖父との親密度など)によってとらえ方が異なることがあるでしょう。
また、子どもたち自身に、実際に起きた問題や想定される問題を書いてもらって、それらについて話し合うのもよいでしょう。
このアクティビティによって、問題に対する心構えができ、類似した問題が起きたときに感情をコントロールし、理性的に対応する準備となります。また、ある問題は、人によって捉え方が異なること――自分では小さな問題だと思っていても、相手にとっては大きな問題であったり、その逆であることもよくあること―を学ぶことができます。ある問題の大きさについて、ほかの人ととらえ方が異なる場合があることを認識しておくことで、実際に何らかの問題が起こったときに、自分にとっては大きな問題だと捉える理由を説明する必要があるときがありうること、もしくは自分がほかの人に起きている問題を自分が過小評価している可能性についても考えることができるでしょう。これは、人への想像力をめぐらし、ひいては共感する力を育てることにつながります。
さらには、体調やそのほかのストレスなど、自分の状態によっては、小さな問題であっても、大きな問題として反射的に対応してしまうことがあります。そのような場合でも、問題の大きさについて一度考えることで、感情をコントロールしやすくなるでしょう。実際に起きた問題を取り上げて、自分の対応が問題の大きさと合致していたか振り返ることも感情をコントロールするよい練習になります。
参照
https://www.edutopia.org/article/self-regulation-strategies-teachers-students
https://www.edutopia.org/video/learning-measure-size-problem/