2024年5月4日土曜日

「優れたSELのスキルをもった人(現実または架空の人物)とディナーに行くことができるとしたら、誰を招待しますか? その理由も教えてください」

あなたは、この質問にどう答えますか?

長年SELの研究をしている3人の研究者にこの質問を投げかけたところ、名前と理由をあげて答えられたのは一人だけでした。

 ですから、誰でもすぐに答えられる質問ではありません。

 ですが、これからSELに取り組み続けることを考えたら、ぜひそういう人たちをリストアップし続けてください。

●唯一回答したDr.Mark Greenbergの答えは、次の通りです。

 まず、チャーリー・ブラウンです。彼は、他の人とうまくやるコツを教えてくれているだけでなく、自分ともうまくやる方法を教えてくれています。

 2番目は、スパイダーマンです。彼は、決して諦めません。また、常に正しいことをしようとしますし、自分のもっているパワーに責任をもとうとしています。

 3番目ですが、最も好きなのはヨーダ(映画『スター・ウォーズ』に登場人物)です。彼は、とても思慮深く賢明で、学べることがたくさんあります。一つだけ彼の名言を紹介しましょう。「恐れはダークサイド(暗黒面)への道じゃ。 · 恐れは怒りに導き、怒りは憎しみに導き、憎しみは苦しみに導くんじゃ」

ちなみに、ChatGPTの回答は次の通りです:

「その質問に答えるのは難しいですね。私の計算機能と知識ベースから得られる情報をもとにすれば、社交的で感情的に優れた人々の例を見つけることは可能です。しかし、私はそれらの人々と対話した経験がありませんし、感情的な接触もありません。したがって、私の選択は完全に理論的なものになります。

ですが、例えば、アントニオ・デミアスやネルソン・マンデラのようなリーダーシップと感情的知能を持った人々が、多くの場面で他者とのコミュニケーションを成功させてきました。また、フィクションのキャラクターとしては、ディズニーのミッキーマウスやジャンル・オースティンの小説に登場するエマ・ウッドハウスなどが挙げられます。彼らは、自己認識、他者との関係構築、コミュニケーションスキルにおいて優れた能力を示しています。」

 このChatGPTの回答に、あなたは何点ぐらいをつけますか? 筆者の評価は、70点ぐらいです。前段の「言い訳」の部分はユーモアと解しました。アントニオ・デミアスって、誰ですか? (いずれにしても、ChatGPTの回答はまだ6~7割程度で捉えておいた方が無難です!)

●最後に、グリーンバーグ博士にならって、筆者の招待したい人は、まず、『ギヴァー』の主役のジョナスです。ギヴァー以外はもっていないコミュニティー(人類)の過去の歴史を注入されたことによって、単に赤ちゃんのガブリエルを助けるためだけではなく、コミュニティー全体が目を覚ませるような責任のある行動をとったことによります。なお、ジョナスのSELのスキルは「人並」と言ったところだと思いますが、「責任のある行動」は傑出しています(その事実が、結果的には、SELのスキルも押し上げているような気がします。そうでないと、「あのような」行動はとれませんから!)。

 2番目は、鉄腕アトムをはじめ手塚治虫の漫画の主人公たちです。その理由は、グリーンバーグ博士がスパイダーマンを選んだ理由に似ています。ただ、鉄腕アトムの場合は、妹のウランとのセットにすると、SELのスキルがより高まるかもしれません。

 なお、SEL用に使える本のリストは、https://docs.google.com/spreadsheets/d/e/2PACX-1vS_cqoO1OnMIqJzMTAhIbd-UZZTNLZZY-STwjYf9UJg2XvCN5JHLg-PbphrteMzz_-a8F9eRmbce1Om/pubhtml がありますので、それらも参考にしながら、ご自分のディナーに招待したい人のリストを収集し続けてください。

出典:https://casel.org/blog/30-years-of-sel-research-whats-new-and-whats-next/

2024年4月20日土曜日

教員も生徒も大切にするSEL

2月に『SELを成功に導くための五つの要素』を読んだ江濱悦子先生(東京都英語教諭)が書いてくれた現時点での取り組む状況を紹介します。

*****

2年間の大学院での学びを終え、久しぶりに学校現場に戻ってきました。大学院での自分と、学校現場での自分の中で、一番違うことは何か?と冷静に考えると、「学校現場には、めまぐるしい感情が伴っている」と感じます。学校現場では私たち教員はたくさんの感情と共に生活をしています。学校にはたくさんの「人」がいます。生徒だけではありません。保護者、同僚、管理職、専門スタッフ等、様々な場面で、その人、その状況に応じて適切なコミュニケーションが必要となります。私たち教員はそのような状況でコミュニケーションに失敗しないように、かなり気をはって一日を過ごしています。今だから比較できますが、大学院で過ごした一日と学校現場で過ごした一日の疲れ方、自分でも驚くほど違います!

SELを成功に導くための五つの要素』を読み終わって私が最初に思ったことは、私たち教員にこそ、このSEL★という考え方と実践が必要だということです。先生が疲れ切ったままでは、今私たち教員に求められている、個別の生徒の支援などできないからです。現実、学校が好き、子供が好き、教えることが好き、様々な理由で期待を大きく膨らませ教師になったのに、理想と現実のギャップで苦しんだり、もがいたり、体調を崩したり、そして離職する先生方が多いことに心が痛みます。 今、教員に必要なのは、生徒をエンパワー(人間のもつ本来の能力を最大限にまでひきだす『SELを成功に導くための五つの要素』p223)ために、教師自身がまず、エンパワーされることではないでしょうか? 私たち教員だって支援が必要です! どのようにすれば教師がエンパワーされるか? そのヒントが『SELを成功に導くための五つの要素』にはたくさん書かれています。その基礎となる方法は教師が自身の「教師としての感情の器を大きくすること」(p213)ではないでしょうか? この本には、不快な感情に向き合う、EQ★★の開発・感情の状態に対応する、感情の境界線を引くなど、学校の中で実践できる具体的な方法が満載です。実際、初任からこれらの方法を知っていれば、私自身もっとストレスを軽減できたと確信しています。

この本を参考に私が今年、実際実践していることを紹介します。私の今年の目標は、学校で先生方(もちろん最終的には生徒に良い影響を与えるため)にたくさんの選択肢を用意し、当事者意識をもってもらうことで、先生方をエンパワーすることです。この目標を達成する為に、本で紹介されているエンゲージ・ティーチングの計画表(参考p361)

を作成しました。その過程で学年の先生方と協働で、私たちが育てたい生徒像、どのような生徒に育ってほしいかを共有したり、共有を基に子供達の強みを鑑み、現状を確認しながら計画を立てました。この計画表を基に、常に自身の実践を振り返り、修正しながら自分の目標に向かいたい、と思います★★★。

この本の前提には、効果的な指導法★★★★は習得可能で、実践で向上でき、教師一人一人が自らにしかない才能に気づき、強みをいかし、生徒に良い影響を与え教育者としての経験値を向上させることができるという考え方(p19)があります。そして、教師として大事なことを自分に問い続けることができる貴重な本です。教師というのは、「常に『教師になり続ける』という存在である。・・・信念をもって突き進む学びのなかで、そして自らが築きあげたものへの深い内省のなかで、教師は自分が何者で、何をしようをしているのかを見いだし続ける(p17)」のです。

 

SELは、「感情と社会性を育む学び」ないし「社会性と情動の学習」のことで、本ブログのテーマです。

★★EQは「こころの知能指数」ないし「自分自身や周囲の人たちの感情を適切に察知し、うまく扱う能力」のことを指し、従来重視されてきたIQ(知能指数)よりも、人が成功するにはこちらの方が大切言われるようになってすでに30年が経過します。EQの中味(および、その身につけ方)については、https://selnewsletter.blogspot.com/2023/10/eq.htmlを参照してください。

★★★「今私たち教員が作った計画表に生徒の代表(学級委員)の目標とする生徒の姿を併せて、協働で更に進化したものを作成中です。生徒の目標も入れながら生徒が理想の姿を絵で表してくれる予定です」とのことなので、それが完成次第、再度紹介させていただきます。

★★★★ここでいう「効果的な指導法」は、エンゲージ・ティーチングのことで「生徒たちが夢中で学べるように、教師が夢中で取り組める教え方」のことです。その具体的な方法については、『「居場所」のある学級・学校づくり』の第6章「生徒を惹きつける、生徒主体の授業が居場所の原動力」や、https://projectbetterschool.blogspot.com/2023/07/blog-post_16.html を参照ください。

2024年4月6日土曜日

新年度におすすめの活動

  教室内には、教師とひとりひとりの子ども、教師と子どもたち全体、子ども同士、それぞれの関係性が学級をつくります。新年度は、人間関係を構築し、深める絶好の機会です。成長途上にある子どもが人間関係を培うサポートをし、楽しい学校生活を送れるようにすることはもちろん、教師を信頼でき、安心して学習できる環境をつくることは、学業への取り組み方にも大きな恩恵があります。今回は、新年度活動に効果的な活動をいくつかご紹介します。


一人ひとりの子どもについて知るための活動

 子どもについてをよく知れば知るほど、教室で生徒のニーズを満たすことができるようになります。まずは、子どもの声を聞く機会をつくることが大切です。


「先生に_____を知っていてほしい」という文章を完成させる

 子どもに「先生に____を知っていてほしい」という文章を完成させてもらうと予想以上のことがわかります。子どもの答えには、「今年私のお父さんが死んでしまったことを知っていてほしい」といった深刻なものから、「大きい音に敏感なことを知ってほしい」といった学校生活に必要な情報、「○○のキャラクターが好き」のような趣味を知ることができるものとさまざまことが共有されるでしょう。子どもの感情や考え、置かれている状況を知る一歩になるとともに、子どもは、教師が自分のことを知ろうとしてくれていると感じることができ、新しい一年の関係を築いていく第一歩として効果的な方法です。

 これは、アメリカコロラド州の3年生の教師がはじめた活動で、彼女が日本で話した動画 あります


ランキング表をつくる

 これは、子ども自身にとっても自分の価値観と優先順位をふり返り、意思決定をする経験、そして、教師にとっては、子どもの現在抱えているニーズについてよく知ることができます。

 A4用紙の一枚には、一枚には1から12までの番号を書いた表、もう一枚の紙には、11の言葉:楽しむ、友だちをつくる、お金、物、見た目、家族、教育、ほかの人から尊敬される、健康、何かに秀でる、トラブルに巻き込まれないようにする、を書いた12マスの表を配ります。(白紙のA4用紙を二枚配り、子どもたちに表と言葉を書いてもらってもよいでしょう。)子どもは、12番目の空欄に自分にとって大切なものを足し、言葉の書かれたマスを切り取り、もう一枚の数字を書いた表に優先順の高いと思う順に並べます。

 子どもひとりひとり違うランキングができ、教師は子どもの志向を知ることができます。ほかの人と共有するのにためらいがない場合には、その順番に並べた理由とともに発表してもらったり、ほかの人のランキングをみたりすることで、自分との違う考え方をする人がいることを知り、さらに、自分と価値観の近いクラスメイトを見つけることもできます。


あいさつは一人ひとりの名前を呼んでする

 あいさつにクラスメイトの名前を含めるよう手本を示すと、子ども同士でも名前を呼んであいさつをしやすくなります。「おはよう、調子はどう?」と話しかけるのではなく、「〇〇さん、おはよう、調子はどう?」と聞くようにしましょう。名前を呼びあうことで、会話も促されます。ほかの人の名前を呼ぶのは、初めのうちは気まずく感じるかもしれませんが、教師が子どもたちの名前を呼んであいさつする場合、脳がその方法を認識します。自分の名前を耳にすると脳の特定の箇所、自己に関連づける働きをする内側前頭前皮質が活性化するとの研究があります。この領域は他者の所属意識や絆を育むことと直接つながっている箇所です。

 なお、アメリカでは、教師から子どもは姓ではなく名前(ファーストネーム)で呼ぶことが一般的で、子ども同士の間でも名前で呼び合います。学校全体での方針がある場合もあるかと思いますが、自己紹介の際に子どもたち同士の間でどう呼んでほしいか言ってもらうのもよいと思います。


クラス全体の活動


クラスの価値観を話し合い、契約を結ぶ

 価値観とは、何は正しくて何は正しくないかについての一般的な考えです。状況に応じて変わる規範とは異なり、価値観は一定のものです。そして、優先順位からは、自分が大切にしているものは何かがわかります。生徒と価値観について話し合い、クラス全体の価値観をつくり出しましょう。そして、意思決定が必要なときにはクラスの価値観を参考にすることが大切です。クラスの価値観を話し合ううえでは、一つの方法としてクラスで「契約」を結ぶことがあります。次のような質問を通じて話し合いを進めるのがよいでしょう。

  • 教師にどのように接してほしいか?

  • クラスメイトにどのように接してほしいか?

  • 教師は生徒にどのように接してほしいと思っているか?

  • 守られないときにはどのように対応するか?

 生徒は一人ひとりが質問について考え、考えを共有し、それをもとに合意できるように契約を組み立てます。合意できる契約文書が作成できたら、生徒と教師が署名をし、教室に掲示します。この過程を経ることで、生徒同士の交流が促され、自分の声が届いていると感じるとともに、契約に沿って自分たちをモニターし始めます。上の4つの質問とその答えを下に書くことで契約とすることもできますし、お互いに尊重する、よく聴く、共感を示す、親切にするなど、クラスの価値観を示す行動を並べることをもって契約とするのもよい方法です。


規範づくり

 社会規範を理解し、それに従えることは、社会認識上重要なことです。「向社会的なふるまい」とは、他者に利するよい行動で、個人的利益(私利私欲)によって突き動かされないことを意味します。社会的なスキル、ないし、向社会的スキルは、多くの場合、教師が学校や教室で設ける規範を通じて培われます。

 規範は、すべての生徒が関わり参加していくなかでつくられるべきものです。教科や内容によって異なる規範が必要なこともあります。たとえば、国語の授業では、読むときの規範と書くときの規範が考えられます。「読んで学んでいるときは、自分たちはどのように見え、どのように聞こえるでしょうか?」と尋ね、自分たちについて言い表す形容詞を考えてもらうようにします。集中している、静か、電子機器がない(タブレット端末を使って読まない場合)、みんなが参加できる、落ち着いている、不安がない、夢中になっている、などが挙げられるでしょう。また、「グループワークでは自分たちどのように見え、聞こえるでしょうか?」と尋れば、子どもたちはグループで課題に取り組むのに最も重要な規範を決めることができます。お互いを尊重する、共有する(分かち合う)、用意ができている、パーソナル・スペース(個人の空間)を侵さないなどの規範が出てくるかもしれません。「教室のルール(決まり)」」と呼ぶよりも「規範」と言うことで、ただ何をすべきかを指示するのではなく、どのようにふるまうかを表現することができます。

 教室や学校ではいろいろな規範を取り入れられます。重要なことは、生徒が向社会的になれるような規範をつくり、使っていくことです。事前に何をすべきか、どのようにふるまうべきかがわかっていることは、学校内外で生徒の役に立ちます。 


契約も規範について学年の途中でふり返り、改訂するのがよいでしょう。


子ども同士の関係を深める


二重に輪になって1対1のコミュニケーションをする

 子どもたちに二重に輪をつくります。それぞれの輪は同数の子どもが必要で、内側の輪の人は外側に、外側の輪の人は内側に向かって並びます。学級が奇数の場合は教師も加わる、もしくは、外側の輪に二人一組をつくるとよいでしょう。教師は、子どもたちが知り合い理解を深められる質問をし子どもは、向かい合っているパートナーと答えを共有します。数分したら、内側の輪の子どもに右に3つ動いてください、などと指示を出し、異なるパートナーと話せるようにします。慣れてきたら子どもにお題や質問を出してもらったり、教師も答えたりするのがよいでしょう。

 まずは、リラックスできるように。「山が好きか、海が好きか」「お寿司で好きなものは何か」など簡単な質問から始めることをおすすめします。慣れてきたら、一人ひとりを知るために「将来の夢は何か」「怖いものは何か」「学校行事で一番思い出に残っていることは何か」など、個人的な質問をしていくのもよいでしょう。

 なお、各教科でもディスカッションや意見交換をするときにも同じように行うことができます。



 新年度に取り入れやすい活動をいくつか紹介しました。一年間のSELを充実させるためにもぜひ取り入れてみてください。


参照

2024年3月16日土曜日

とても効果的なサークルの異なる使い方

  前回は最も一般的なサークルのもち方およびその効用について紹介しました。図を示しながらSELの5本の柱(https://selnewsletter.blogspot.com/2023/03/の図)のうちのSelf Awareness「自己認識」、Group and Social Skills「社会認識」と「対人関係スキル」、そして、Personal Skills「自己管理」の練習になることが分かりました。今回は、5本の柱の一つだけ含まれていなかった「責任ある意思決定(+行動)」を可能にするやり方を『生徒指導をハックする』から紹介します(44~45ページを参照)。

サークルは、生徒たちが協力して意見を出し合って、問題に対処する機会を提供できるとてもパワフルなツールです。それは、一日を前向きにスタートするためにも使えますし、問題解決に向けて前向きなコミュニケーションを図る力も高めます。

「関係修復のサークル」は、クラスで気になる問題などに対応したいときにとても有効なツールとなります。

・朝の「チェックイン・サークル」(=授業開始時や一日の初めに行うサークル)と同じように、生徒にサークルになるように言います。

・教師は、権威者としてではなく、ファシリテーターおよび生徒の発言の聞き手として輪の中に入ります。

・まず、ファシリテーター(ここでは教師が務めています)が、クラスの問題やもめごとに関する主な要因をみんなに伝えます◆。

・教室の雰囲気が落ち着いたら、サークルでの「期待される行動」注・ここでいう「期待」には、ルールや規則に代わる大事な意味があります。第4章を参照してください。について確認しましょう。たとえば、「スマートフォンはしまっておいてください。『話し手のしるし』(=トーキング・スティック)を持っているときだけ話をすることができます。今回は、授業に集中できていないという問題に焦点を当てます。誰か話しはじめたい人はいますか?」などと進めましょう。

・生徒たちが問題について語りはじめたら、次のようなフォローアップの質問を投げかけてみましょう。「そのことで、あなたはどんな気持ちになりましたか?」や「なぜ鉛筆が飛んできて、あなたは腹が立ったのですか?」などです。相互に説明する責任が果たせる機会を生徒に提供し、問題を解決する方法を話し合ってください。話し合う機会を与えて、生徒の気持ちがスッキリしてからその日の授業に向かいましょう。

・生徒から出される意見が繰り返しになってきたり、意見がなくなったと感じるようであれば、サークルを終わりにするときです。

・サークルを終了する前に次のステップについて話し合い、生徒たちが解決に向けて決めたことを一緒に振り返って確認してください。

・サークルが終了したら、すぐに普段の位置に椅子を戻すように生徒に伝えましょう。

・授業に戻る前に、当日の授業内容の見通しと、授業において生徒たちに期待されることを共有してください。

 この関係修復ないし問題解決のサークルに最初から取り組むことはハードルが高いので、まずは前回紹介したサークルhttps://selnewsletter.blogspot.com/2024/03/blog-post.htmlを定期的に行ってハードルを下げておいてください。それを通じて、

・安心安全なスペースをつくる

・「期待」を根づかせる。「私メッセージ」を使う練習をしておく

・コミュニケーションを促進する。オープンな対話や前向きな発言をほめる

・共感の輪を広げる。生徒が共感を示した時はほめる(同上、48~49ページ)

ができるようになっており、

・サークルを終わりにする。話の内容を要約し、計画や次のステップが決まっていれば、そのことを説明すし、全員に参加してくれたことに感謝する(同上、50ページ)ことで、

問題解決に向けて前向きなコミュニケーションを図り、責任ある意思決定と行動ができるようになっていきます。教師が間に入って問題解決をしてしまうよりもはるかに効果的な、生徒が自立的な問題解決者・意思決定者になるための練習の機会を提供することができるのです。

 

◆なれてくると、必要性を感じた時に生徒が問題解決/関係修復のサークルの開催を求めるようになります。その事例は、46~7ページに紹介されています。深刻な問題解決/関係修復が必要な場合については、第1章に詳しく参考にしてください。いずれも、教師主導ではなく、https://selnewsletter.blogspot.com/2023/12/blog-post.html やhttps://selnewsletter.blogspot.com/2024/02/blog-post_17.html で紹介したのと同じように、生徒が自らのスキルアップを目指すアプローチです。

2024年3月2日土曜日

サークル

サークルタイムで検索すると、保育園(や幼稚園)では人気の活動になりつつあることが分かります。しかし、欧米では5~18歳が対象に設定されていますし、実際行われています。それも、30年ぐらい前から。サークルは元々、ネイティブ・アメリカンやニュージーランドのマオリを世界各地の人々(そのなかには、日本も含まれます。宮本常一の本からそれが分かります。縄文時代からの長い歴史がある気がします!)が集会の際に使っていた方法です。

 保育園でサークルタイムに取り組み始めた理由は、次の通りです。

  • 子どもたち同士で考える場をつくりたかったから
  • 自分の意見を言う。相手の意見に耳を傾ける。が自然にできるようにしたくて
  • 子どもの主体性を大切にするため
  • 単純にみんなで話しをするのが楽しい
  • 子どもたちが思っていること感じていることを知ることができて保育の環境設定のヒントになるから(https://hoiku-is.jp/article/detail/1785/より)

 これは、保育園や幼稚園だけのニーズでしょうか? 小学校~大学、社会教育でも必要なことではないでしょうか? 

 サークルタイムのやり方は、https://hoiku-labo.com/news_710.htmlhttps://hotmilk.jp/column/1179/などに書いてあります。対象に関係ない一般な進め方は以下のようです。

サークル(輪になって話すこと)(幼稚園児~高校生)

・教師があるテーマを提示してから、生徒と教師でそのテーマについて話し合う。

・テーマが提示されたら、一人ずつ順番に話をしていくが、話す準備ができていない、もしくは話したくない生徒は、「パス」することで次の人に話してもらうことができる。

・サークル内の全員にまず話す機会を一巡させたあと、まだ話していない生徒(パスした生徒)に再度話す機会を与えるが、話すか話さないかはあくまで本人次第とする。

・話す時間は生徒一人につき一〜二分とし、チャイムやハンドサインなどを使って、残り時間が一五秒になったら知らせ、生徒は最後のまとめをする(下で紹介しているサークルタイムの中心に据えられている「文章を完成させるエクササイズ」だと一人数秒で十分です)

・今、誰が話しているのかを明確にするために、棒やぬいぐるみなど、何らかのモノ(「トーキング・スティック」などと呼ばれる・訳者付記)を使ってもよい。

         (出典:『SELを成功に導く五つの要素』384ページ)


 私がサークルタイムについて知ったのは、1997年にDeveloping Circle TimeTeresa Bliss他著)という本を購入した時です。そのころはまだ、SELが広く認知されていませんでしたが、この本のなかでサークルタイムをすることで得られるものは、次の3つであることが図で示されていました。

 Self Awarenessは、SELの5本の柱(https://selnewsletter.blogspot.com/2023/03/の図)のうちの「自己認識」です。Group and Social Skillsは「社会認識」と「対人関係スキル」に相当します。そして、Personal Skillsは自分の感情と行動をコントールする「自己管理」です。(「責任ある意思決定」は含まれていませんが、サークルタイムでのやり取りを通して十分に責任ある判断や意思決定の練習はできています!)

 また、Personal Skillsのなかにサークルタイムで得られるものとして、自尊感情が含まれているのも印象に残っていました。 

 Developing Circle Timeの本のなかで、他の目を引いた点を以下に列挙します。

・サークルタイムは、アドバイスや癒しを目的にしたグループ活動ではない。

・サークルタイムのルールは①誰かが話している時は、よく聴く。②誰も発言しない権利をもっている。③他に人が何をしているべきか注意はしない。④嫌がらせはしない、の4つしかないが、最初からすべてを提示する必要はなく、最初の2つを言い、残りは必要に応じて説明する程度でいい。

・サークルタイムの中心は、文章を完成させるエクササイズ★である。

・サークルタイムを教えることと学ぶことの大切な一部にすると判断するなら、(たまに行う特活の活動としてではなく)継続して取り組む計画を練る。具体的には、一日の最初や最後、授業の初めや終わり、教師ないし生徒がその必要性を感じた時など(この点については、『生徒指導をハックする』の第2章を参照ください)。授業をする際の計画や記録が大事と思えるなら、生徒たちの社会的・感情的な発達面について計画と記録についても同じように価値を感じられるはず。

・まだ慣れていない時や、声に出すのを躊躇するようなテーマを扱う場合は、言葉にせずに行動で示す方法や、ペアで紹介し合って、それを相互に全体に共有する方法などを使う。

・最後にサークルタイムをすることで得られるものは、

 *教師は、生徒たちのことをたくさん知ることができる。

 *生徒は、たくさんの自分たちのことを知れ、どのようにグループのなかで機能すればいいかも知れる。

 *生徒は、自分をどう表現すればいいかを学べる。

 *教師と生徒、生徒同士の、クラス内の対人関係が向上する。

 *生徒たちが待ち望む楽しい時間になる。

 

 私の手元にある何冊かの本のなかには、サークルが多様な形で使われている事例が紹介されています。

・『静かな子どもも大切にする』(154~160ページ)では、「トーキング・サークル(関係修復のサークル)」の名称で紹介されています。

・『学びは、すべてSEL』(200~210ページ)では、「社会的スキル」の章のなかで「コミュニケーション・サークル」の名称で紹介されています。

・『私にも言いたいことがあります!』(89~93ページ)では、「生徒の声で大切な仲間づくり」の章で「クラス・ミーティング」の名称で紹介されています。

・『聞くことから始めよう!』は生徒の意欲を高める評価について書かれた本なのですが、その228~240ページではなんと「生徒の自己評価」の章のなかで「シェアリング・サークル」の名称で、著者自身がもがきながら生徒たちのサークルへの心をつかんだ経験が紹介されています。

そして最後に、サークルについて最も詳しく書かれているのが

・『生徒指導をハックする』です。第2章がすべてサークルの紹介に割かれていますから。参考にしてください。

 

Developing Circle Timeには、「sentence completion themes」が最も重要な活動と書いてあります。「sentence completion for circle time」で検索したら、この本で紹介されているリストが、Sentence Completion Themes_0.docx (live.com)でそのまま見られました(検索すれば、他にもいいリストが見つかるかもしれません!)。日本語版の例は、『静かな子どもも大切にする』の156~159ページで見られます。

◆資料(動画中心) 

60-Second Strategy: Community Circles | Edutopia

Weekly Circles: Building Community to Foster Academic Achievement (youtube.com)

WATCH: How one school is centering social-emotional learning | PBS NewsHour

https://www.youtube.com/watch?v=DqNn9qWoO1M(以上は、アメリカ)

イギリス:Come Round to Circle Timehttps://www.youtube.com/watch?v=fMvuqHaAZ5A

Microsoft Word - circle_techniques_and_activities.doc (pghschools.org)

2024年2月17日土曜日

問題行動への対処法(日米比較)・その2

問題行動には、大きくは二つのタイプがあります。前回は、授業妨害や教師の指示に従わない等の問題行動への対処法を紹介しました、今回は二つ目の加害者と被害者がいる場合の対処法について紹介します。

 日本(の中学校)での対処法は、次のようなものです。★

・被害者の訴えを聞く。経緯と、被害状況、その時の心情、加害者に対してどうしてほしいかなど。

・被害者の保護者に聞いた内容を伝える。その際、加害者に事情を聞いて良いか許可をとる。(仕返しやいじめを恐れる場合もあるため、確認が必要。)

・加害者に事情を聞く。経緯と、加害の状況、その時の心情、トリガーとなったものなど。

・この時、被害者に対して申し訳ない気持ちがあれば、謝罪の意向などを確認する。

・被害者、加害者の話が合っていれば、事実としてほぼ確定となる。合っていない部分がある場合は、周辺にいた生徒から裏をとる場合もある。

・確定した事実を、加害者の保護者に伝える。その際、加害者の心情や謝罪の意向なども含めて、認めてもらう。

・関係修復の会を開く。被害者と加害者、双方の言い分、見え方、感じ方などをそれぞれに言ってもらい、相手の目線でどうだったかをお互いに知る。

・謝罪の意向があれば、加害者から被害者へ謝罪。

・今後の二人の関係性について、被害者側から要望を伝える。加害者側がそれを受け入れられるか確認。

・被害者、加害者の保護者に関係修復の会の経緯を伝え、終了となる。

生徒どうしのみならず、対教師、対物でも似たような手順で行う。

 

 以上が仙台でのアプローチの流れです。『生徒指導をハックする』で紹介されている「関係修復のアプローチ」★★との関係については、次のように補足してくれました。

 

『生徒指導をハックする』との違いは、「責任の取り方」の部分だと思っています。

『生徒指導をハックする』では、やってしまった出来事に関連する償いや責任を取ること、周りで迷惑を受けた生徒に対して、公の場で行動を変えることを誓うなどといったことが含まれています。

しかし、日本の(仙台の)やり方の場合は、それがありません。

あくまで、本人と、保護者との話だけです。

迷惑をかけた人たちに対する償いの行動は強制されません。

ただ、自分の反省を生かして生活することを期待されるだけです。

ここのところが違うと思います。

日本人の「責任」に対する感覚が甘いところがここにも出ているように思います。

「関係修復の会」という言葉を聞いたのは、5年くらい前からでしょうか。

それまでは「謝罪の会」と言っていたりしたのですが、それでは被害者、加害者がはっきりしてしまい、被害者側は「謝らせたら勝ち」と勘違いしたり、加害者側は「謝ればそれで終わり」として済まそうとすることがあるので、その反省からそういう言い方になっていたように思います。

関係修復アプローチを学んだ人がそういう言い方をするようになったのかもしれませんが、そのあたりはよくわかりません。

ちなみに、「関係修復の会」以外には「お互いの気持ちを伝え合う場」という言い方をすることもあります。

また、聞き取りの時に、関係者一人ずつ行うことも相違点です。

日本の学校では、一人ずつ聞き取りを行うことがセオリーです。

複数の聞き取りを同時に行うと、その場で立場の強い方の生徒に合わせて弱い生徒が迎合したことを言ってしまいがちだからです。

事実の捏造がされやすい、ということがあります。

また、その人の心情を聞きやすいということもあります。

 

    仙台の飯村先生と新潟の佐藤先生に情報提供をしていただきました。

上で紹介したのは仙台アプローチですが、以下が新潟アプローチです。

担任教師が、問題を起こした生徒の話を聞く。

・この時点で、関わった生徒を把握します。

・この時点で、学年で情報を共有し、チームで動きます。いい学校はここで生徒指導主事や教頭が情報共有をします。

・事実の隠蔽、口裏合わせを防ぐために、どのような順番で誰が事情を聞くか、どの程度まで迫るかを決めます。

問題を起こした生徒というよりは、被害者からの訴えや、周りの生徒の訴えがスタートになることが多いです。もちろん、加害・被害両者から話を聞きます。

 

必要に応じて、関わったその他の生徒の話を聞く。

・事実が一致するまで確認を繰り返します。警察みたいです。やりたくありませんが、学校が何もしてくれないとか、逆に学校が動いたせいで事実が不明になったとか言われないためにも、人権に配慮しつつ、聞けるところまで聞きます。

・生徒指導主事や教頭と情報を共有し、判断を仰ぎます。指導の見通し、方向性が決まります。

 

以上から、教師が判断をして、解決策を伝える/やらせる。

 また同じような問題が起きないように祈る。

・ここで事実を認める生徒、しらばっくれる生徒がわかれます(ですが、できるだけ間接的証拠や証言で認めさせます)。

・事実を保護者に連絡します。けがをさせた、物を壊した等は、保護者に動いていただきます(強制はできません)。

・事実の説明のために保護者にご来校いただくこともあります。今後どうすべきか相談します。

・同時に、重大な事態については管理職から市教委に報告します。

・学校ができることは、当事者が関係を修復するための謝罪や、説明です。裁判官、代執行はしません。

・生徒同士が謝罪する場合は、その場を設定します。

・加害者が非を認めなくても、謝罪をしなくても、学校は前向きなコミュニケーションにしか関わることはできません。

・争いは当事者で処理していただきます。学校は仲裁をしません。また、私的なICT機器を介したトラブルには一切介入しません。

・その後の生徒の様子、関係生徒の様子を保護者に連絡します。いじめの場合は一定の解消まで最低3カ月観察します。3カ月トラブルがなければ「一定の解消」と判断します。

・もちろん記録を残します。

 

 そして、先生たちは次のようにも言っています。

生徒指導は年々難しくなっていると思います。

当事者である生徒は事実から逃げようとします。嘘も平気です。

親を悲しませたり、怒らせたりすることが、とても恐ろしいことのようです。

そして保護者は子どもを庇います。論点をずらしてでも、我が子を庇います。

そうなると悪者は相手と学校です。

子どもは親を盾にして逃げていきます。

学校が子どもに踏み込んだ指導をすれば、あっという間に責任転嫁されます。

うちの子を傷つけた、加害者扱いしたと。

悪気がなかったから悪くない。相手が騒ぎすぎ。こういうことを平気で言います。

私たちは子どもに、どうしたらいいと思う?何がいけなかった?どうしたい?と問いかけ、それを支えるように接しますし、電話ではなく保護者と会って説明もします。

でも、納得いただけなくて電話口で罵倒されることもあります。

管理職がしっかり対応できればいいのですが、保護者に日和る管理職が多くて、部活一つ潰すことができません。コミュニティスクールは地域の御機嫌取り、わがままを聞く場にしてしまっています。

 

 結果的に、大切なのは人間関係(特に、損なってしまった関係の修復)のはずなのに、それを学ばぬまま卒業してしまっては、 (日本の国家予算と同じで)問題の先送りをしているだけのようです。誰にとってもよくないのに。

『生徒指導をハックする』で紹介されている大事なところに、気づけていない/学べていない/活用できていないという問題です。

それは具体的には、https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784794811691の目次で見られる、本の第2章の「損なってしまったことを修復する―自分のとった行動の責任を直接とることを生徒に教える」ことはもちろんですが、その他の各章で扱われている日常的に取り組める事柄が7つ紹介されています。「関係修復のアプローチ」が真の意味で機能するのは、これら日常的な取り組みこそが当たり前の状態になっている状態であることが、よく分かります。と同時に、5つのSELの柱を別な言葉で使って表現しているだけで、問題行動の対処にSELが欠かせないことも!

問題が起こったときに、それを解決する対処法をもっていることは当然大切なのですが、問題を起こさないような仕組みを考えて、関係者が育ちあうコミュニティーをつくるための姿勢やスキルとして身につけられるように日常的に取り組むことこそが教師にはもちろん、生徒にも求められています。

 いまの日本で行われている生徒指導のアプローチのように、教師だけが重荷を背負う割には、他の関係者が学べない/姿勢やスキルを身につけられないアプローチを続けざるを得ない、というのはもったいないです。(その時間と重荷を教師が費やし続けるなら、他の関係者が問題を乗り越えるための姿勢やスキル身につけられる方法がすでに存在している場合は、特に!)

 

★★ 関係修復のアプローチは、罰を受けることになるであろう問題行動を学びの機会に転換するものです。生徒にとってもめごとは、自らの行動の影響やその行動に対して責任をもつという義務を理解し、誤りを正すための方法を考え出す機会なのです。生徒自身が問題に向き合えるようにしましょう。損なってしまったことを修復するために、生徒自身が自分なりに考えて、解決策を見いだせるようにするのです。

関係修復のアプローチを用いれば、問題行動に絆創膏を貼って終わりにするといった方法では想像もできないほど、生徒の行動を永続的に変えるための素地を築くことができるのです。(『生徒指導をハックする』の86ページ。そして以下は、同66~67ページからの引用です。)

生徒は、自分の言いたいことや修復のために行うことを考え出さなければなりません。自らの問題行動が引き起こした結果としての措置に、自分から積極的に参加しなければならないのです。そのためにも、生徒には次のような二つの選択肢を与えるとよいでしょう。

     私(教師)と一緒に解決方法を考えます。

    あなたが今後どうすべきかを私(教師)が考えるので、あなたの意見や考えが聞かれることはありません。

 たいていの場合はを選択し、時間とエネルギーをそれにしっかり費やしたいと考えます。

関係修復のアプローチは効果的です。何しろ、あらゆる問題を学びの機会に変えてしまうことになりますから。問題行動を単に分類して自動的に措置をとることをやめて、生徒の問題行動そのものを理解しようとするのです。そうすれば、措置をどうするかの決定にかかわるあらゆる要素に向き合うことが確実にできます。

このアプローチは、「損なってしまったことを修復する」という必要性に焦点を当てています。それは、学校内に「コミュニティー」という連帯の意識をつくり出し、すべての「声」を聴くことによって、損なわれてしまった関係性を回復させることになります。

 これがうまくいくアプローチであるもう一つの要因は、生徒の「共感力」を育むことができるという点です。問題行動を起こした生徒は、被害者や関係者たちが自分の行動からどのような影響を実際に受けたのかについて、直接耳を傾けることになります。自分が傷つけてしまった人の向かい側に座り、自らの行動に対する責任を感じながら、損なってしまったことをどのように修復したらよいかについて相手に尋ねるという行為は、生徒にとってはとても心が動かされるものです。

多くの場合、最終的には「謝る」という行為で終わったりするわけですが、関係修復のアプローチでは、そこに至るまでに、問題解決を目指してすべての生徒を尊重する対話の場がもたれるのです。もし、問題行動を起こした生徒が「声」を聴いてもらえていないと感じたら、措置を受け入れることに納得するとは思えません。しかし、関係修復のアプローチによって、これらの措置を決める過程に生徒自身がかかわることができれば、損なわれたことをどのように修復するかについても一緒に考えることができます。そして、その経験を通してみんなで成長できるのです。