2026年3月21日土曜日

学校レベルでの責任ある意思決定: その4=評価 ~ 学びと成長のために評価を活用する

  SEL便り: 責任ある意思決定 の9回目です。前回の最後にあったように、評価はカリキュラムと教え方と切っても切り離せない関係にあります。そして、現時点で、日本で主流の評価は、かなり歪んだ(生徒たちの学びと成長にも、教師の教え方の改善にもほとんど寄与しない)形で行われていると言わざるを得ないと思います。3つのなかで、突出しておかしいのは評価の現状だと思う人は多い★でしょうが、それはカリキュラム(教師の立場からは、何をどう教えるかであり、生徒の立場からは何をどう学ぶか、という前回の8回目のテーマ)と実際の教え方(連載の次回10回目のテーマ)の歪み具合に呼応していると言えます。

 「学校レベルの責任ある意思決定」に最も参考になる『みんな羽ばたいて』の第6章は、次のエピグラフ(章頭引用)ではじまります。

 学校で行われる最も重要な評価は、誰も見ることができません。それは、1日中、生徒の頭の中で行われているからです。生徒は、自分が何をし、何をつくり、何を決断したかを評価し、何が十分であるのかについて決定をしています。このような生徒自身の評価によって、生徒がどれだけ課題を気にかけ、どれだけ一生懸命に活動し、どれだけ学ぶかが決まるのです。(中略) 結局のところ、生徒自身の評価がすべてなのです(同、227ページ)。 

 このことを、日本の教育関係者はどれほど認識できているでしょうか? これが理解できていたなら、テスト・成績・通知表/内申書とセットになっている勉強はとうの昔に葬り去られていたはずです!

しかし現実は、「成績をつけることを目的としたテストなどの『総括的評価』(や『形成的評価』の冠をつけた、実は成績をつけるための手段化している単元テスト)のみが、学校の評価を支配し続けているということです。生徒の学びは、テストや通知表の形で保護者や生徒にその結果を伝えられることを前提としており、それは同学年における相対的な位置関係を示します。教師は、教室でのテストや成績を生徒の学びに役立てたり、伸ばしたり、深めたりすることを意図しているかもしれませんが、それはほとんど実現に至っていません。★★」(『みんな羽ばたいて、233ページ』

上に書かれたことは、全国的あるいは自治体レベルで行われている学力テストにも言えます。単なる時間と税金の無駄遣いを繰り返しています。入試は?!

 そして、「より望ましく、公平で、優れた教え方と学び方のビジョンを達成するための要点は、『覚えたことを判定すること』から『学び方(思考の習慣)を身につけること』★★★へと、評価の焦点の移行を支える考え方を理解することです。本章の残りの部分では、この転換が何を意味するのか、なぜそれが重要なのか、そしてそれが実践ではどのように見えるのかを探ります」(同、237ページ)

 

 これは、教育制度(特に、学校)の責任ある意思決定が最も求められている分野であり、現時点ではそれを残念ながら(不幸にも)モデルとして示せていません。モデルで示せるように、ぜひ『みんな羽ばたいて』の第6章を読んでいただいて、至急、実践に移してください。それは、教えた後の総括的評価(=テスト・成績・通知表)ではなく、まだ教師は教えている/生徒は学んでいる最中に行う形成的評価を重視することを意味します。総括的評価にいくら時間とエネルギーを使ったところで、生徒の学びはよくしませんが、形成的評価は「学びのための評価」★★★★とも言われるぐらいに、生徒の学びの質と量を改善するために行われるものです(その前段として、形成的評価によって教師の教え方が改善され(続け)ることが条件にもなります!)。

 

★思うだけで、それを改める行動に出ている人はあまり聞いたことがありません。もし、こういう教科の改善の取り組みをすでにしているという方は、ぜひ教えてください。

 https://wwletter.blogspot.com/2023/11/blog-post.htmlhttps://wwletter.blogspot.com/search?q=%E6%88%90%E7%B8%BEABC を参照ください。

★★この結果として、「人間の能力は生まれたときから決まっている」という固定マインドセットをほとんどの教師や保護者をはじめ社会全体がもつことになり、「人は誰でも努力すればできるようになる」という成長マインドセットをもてなくもしています!

『オープニングマインド』(ピーター・ジョンストン著)とhttps://projectbetterschool.blogspot.com/2020/06/blog-post_21.htmlの記事の『オープニングマインド』の下で紹介されている本、および『マインドセット学級経営』(アニー・ブロックほか著)などをぜひ参照ください。

★★★「学び方を学ぶ」は、ここしばらくのキーワードの一つかと思いますが、それは「見取り」や「子ども理解」などと同じで、言葉としては存在しても実体のないものの典型かもしれません。「思考の習慣(https://bit.ly/3XZmfbh)」を身につけると言い換えた方が取り組みやすくなります。そのための具体的な方法は、『みんな羽ばたいて』と「生徒中心の授業づくり」という観点でとても相性のいい『学びの中心はやっぱり生徒だ!』に書かれています。

★★★★この総括的評価(学びが終わった後の評価)と形成的評価(学びを向上させるための評価)の違いを理解することは、教育において致命的に大切です。後者について詳しくは、『テストだけでは測れない! ~ 人を伸ばす「評価」とは』NHK生活人新書を参照ください。

2026年3月7日土曜日

学校レベルでの責任ある意思決定: その3=カリキュラム ~ 夢中で取り組める学びを提供する

 SEL便り: 責任ある意思決定 の7回目(前回)は、「学習環境」がテーマでした。「学校レベルでの責任ある意思決定」をカリキュラムで行うと、SELの活動(アクティビティー)に取り組むよりもインパクトははるかに大きくなります。毎時間の授業と関係した形でSELを扱うことになりますから。と同時に、通常の授業以外にSELの活動を付け足しの形でする必要もほぼなくなります★。

 この点を見誤ると「うちの学校ではたくさんのSEL活動を取り入れています」と自慢げには言えても、毎日の授業でSELに反するようなことをやり続けていることになりかねませんから、生徒たちにSELの力がどれだけ身につくかはなはだ疑問な状況が続いてしまいます。

 今回のテーマの、学校がカリキュラムに責任ある意思決定と、それに基づいた行動をとるために、よりよい材料は『みんな羽ばたいて』(キャロル・トムリンソン著)の第5章が提供してくれているので、その内容の核となる部分を紹介します。

 

 1989年に公開されたアメリカの青春映画で、「教育とは何か」「生きるとは何か」を問いかけるロビン・ウィリアムズ主演の『いまを生きる』の紹介の後に、カリキュラムでないものの代表として、それといつも混同されてしまう「教科書」と「学習指導要領」が批判的に論じられています。(この三者の関係がスッキリしない方は、生成AIに「教育課程/カリキュラム、教科書、学習指導要領の関係は?」と尋ねてみてください。明快な回答が得られるはずです。教育課程/カリキュラムは、学習指導要領をもとに各学校が編成する教育の設計図であることを含めて。)

 また、カリキュラムの定義についても、カリキュラムは、生徒の教科内容の学び/感情と社会性の学び(SEL)を最大限に引き出すための授業計画です。カリキュラムは、学び手がその教科領域が提供する最も重要な情報、概念、スキルに出合い、それらの習得を助けるものでなければなりません」(同、176ページ)と『みんな羽ばたいて』は明確にしています。(生成AIがどのような定義を出してくれるか、尋ねてみてください。)

そのうえで、質の高いカリキュラムの中核をなす(したがって、質の高い教え方と評価の中核をなす)二つの概念は、「夢中で取り組むこと(エンゲージメント)」と「理解すること」であるとしています。これらは学びの中心であるため、質の高いカリキュラムの中心となります(同、177ページ)

さらに、『みんな羽ばたいて』では次のように書かれています(同、178ページ)。

夢中で取り組むこと(感じること)がないと、生徒は内容を深く学ぼうとはしないでしょう。自分に関連のないものに手を出すことはあるでしょうか? 理解すること(意味づけること)がなければ、生徒は「学んだ」ことを保持し、取り出し、適用し、伝達し、創造することができません。言い換えれば、教室や人生において、生徒はエイジェンシーやスキルを発揮できるような方法で学んでいないということです。

教師が何をどのように教えれば、教室にいる生徒一人ひとりを夢中にさせ、理解へと導けるかについて注意深く考える必要があります。これは、生徒中心の教室を実現するための基本的な心構えであり、日々目指すべきものです。

 取り組む課題は、生徒一人ひとりにとって意味のあるものでなければなりません。夢中で取り組めば、生徒は途中でつまずいたり、行き詰まったりしても、根気よく課題に対して全力を傾けることができます。そして、成果物に焦点を当てる、選択の提供、本物の学びであること★★など課題を魅力的にするための10の特徴が紹介されています。この10の特徴は、カリキュラムを考える際の核となるものですから(残念ながら、学習指導要領も、教科書も、それらはしてくれません!)、それらを自分(たち)のものにするために『みんな羽ばたいて』の179~181ページは、ぜひじっくり読んでいただきたいです。

 この後、『みんな羽ばたいて』の著者は、「カリキュラムを設計し、最終的にそれをもとにして教えるとき、私たちはこれらの要素(10の特徴)を再検討し、生徒のためになるならば、いつでもカリキュラムに取り入れるようにしなければなりません。私たちは、学校が提供するカリキュラムは、生徒の成長のための触媒にならなくてはいけないと考えています。(中略)生徒が世界を理解するのに役立ち、生徒の知的成長を促し、複雑な問題に取り組む能力を養い、継続的に学習する意欲をかき立てるには、カリキュラムのなかに留まらないものが必要なのです」と書いています(同、182ページ)。

 

 先に書いたように、カリキュラムは教科書や学習指導要領ではないことはお分かりいただけたのではないでしょうか。この後、「夢中で取り組むこと」と対をなしている「理解すること」について詳しく説明があり、それらを踏まえたカリキュラム(教育課程)をどう計画したらよいかも書かれていますので、ぜひ参考にしてください。

 

 そして、次回以降で扱うテーマの評価(9回目)と教え方(10回目)との関係については、「カリキュラム評価教え方のつながりを離れて、三つの要素のどれかを完全に理解することはできません。また、このつながりを理解することなく、強固なカリキュラムを開発することもできません」(同、207ページ)と言い切っています。

 

 以上、抽象的な内容だったでしょうか? しかし、確実に言えることは、学習指導要領に準拠した教科書をカバーする指導と評価をしているだけでは、学校レベルでの責任ある意思決定のもとに教え、そして評価しているとは言えない(ということは、真の意味での教師の仕事をしていない!)ことはご理解いただけたでしょうか?★★★

 また、SELの活動に興味をもって生徒たちに対してそれを行うことが、必ずしも効果があるわけではないということです(それは、何十年にもわたる道徳の実践から明らかではないでしょうか?) 同じことをSELでもすることは、避けるべきです。ぜひ、カリキュラムの視点をもって(=学校レベルでの責任ある意思決定のもとに)SELを導入してください。それが引いては、既存の教科指導と評価の仕方までをも変えてしまう芽になりますから大きなチャンスです!

 

★これは、「道徳は単独で教えるよりも、他教科と統合して扱う方が、理解も定着も行動変容も大きい」と言われ続けてきたことと同じです! しかし、ほとんどそれは実現されていませんが・・・その意味で、数時間のSELの活動(道徳)をするよりも、その時間を削っても、他教科との統合(つまりカリキュラム)をしっかり考えてSEL(道徳)を実践した方が得るものは誰にとっても多くなるということです。これこそが今回のテーマである「学校レベルでの責任ある意思決定」の一つとしてのカリキュラムです。

★★本物の学びであることを中心に、「夢中で取り組むこと」と「理解すること」に焦点を当てた『ほんものの学びに夢中になる』(ローレン・ポロソフ著、北大路書房)もありますので、合わせて参考にしてください。

★★★ 学校レベルでの責任ある意思決定をするとは、「学習指導要領に準拠した教科書をカバーする指導と評価」から「学習指導要領に基づく教育課程(カリキュラム)を踏まえて、教科書を活用しながら行う指導と評価」への移行を意味します。この移行/転換を、SELの導入をきっかけに、すべての教科で行うチャンスが提供されているというわけです! ちなみに、『感情と社会性を育む学び』『学びは、すべてSEL』『SELを成功に導く五つの要素』の3冊は、すべてアクティビティーやそれらをつなげたプログラムではなく、学校レベルの判断(=責任ある意思決定)こそがいいSELの提供になることを強調していますので参考にしてください。

2026年2月21日土曜日

学校レベルでの責任ある意思決定: その2=学習環境

 SEL便り: 責任あ意思決定 の7回目です。

 『成績だけが評価じゃない』では、学習環境について直接は言及されていないので、このテーマを正面から扱っている邦訳のある3冊の本(『みんな羽ばたいて』Tomlinson著、『「居場所」のある学級・学校づくり』Barron & Kinney著、『「おさるのジョージ」を教室で実現』Ostroff著)を使って、何が大切か、何を考える必要があるかを紹介します。

 以下は、生成AICopilotとのやり取りを通してつくられたものです(青字+~以降は、執筆者のコメントです)。


1. 関係性と尊重を基盤とする学習者中心の学習環境

  • Tomlinson: 学習環境は「生徒が自分自身を理解し、他者と関わり、世界を探究する場」であるべきだと強調。安全性、尊重、関係性が鍵。
  • Barron & Kinney: 「居場所があること」が学習の土台。生徒が「受け入れられている」と感じることで、学びへの意欲が高まる。
  • Ostroff: 好奇心を育むには「心理的安全性」と「探索の自由」が不可欠。失敗を恐れずに試行錯誤できる場が必要。

共通点: 学習者が安心してリスクを取れる環境を重視。学習環境は「人間関係の質」によって成立する。~ この大事な「人間関係の質」、あなどっていませんか?

 

2. 内発的動機と自己決定の尊重

  • Tomlinson: 生徒が「自分の学びに意味を見出す」ことが、深い理解につながる。
  • Barron & Kinney: 生徒が「価値ある存在」として扱われることで、自己肯定感と学習意欲が高まる。
  • Ostroff: 好奇心は「自立的な学びの原動力」であり、強制ではなく「興味から始まる学び」が重要。

共通点:学びは「内側から湧き出る力」によって駆動される。~ この大事な要素、見過ごされていませんか?

 

3. 教師の役割の変容

  • Tomlinson: 教師は「学習のデザイナー」として、生徒のニーズに応じて環境を整える。
  • Barron & Kinney: 教師は「関係性の構築者」として、生徒の尊厳を支える存在。
  • Ostroff: 教師は「好奇心の触媒」として、生徒の問いを尊重し、探究を促す。

共通点:教師は「知識の提供者」ではなく、「学びの伴走者」。~「学習のデザイナー」「学習のデザイナー」「好奇心の触媒」としての役割、果たせていますか?

 

◎3者の力点の違いと共通点(比較表)

 

 これら3冊の本に共通するのは、「学習者の内発的動機を引き出す環境づくり」と「教師の役割の変容」に関する示唆に富む考察と具体的な実践例が多数紹介されていることです。SELとの接点も大きいですから、興味をもたれた方はぜひ3冊の本チェックしてみてください。

 また、前回「チョイス(選択)ボード」という教え方・学び方が丁寧に説明されている本として『ほんものの学びに夢中になる』を紹介しましたが、この本は147~8ページをはじめ本全体が「ほんものの学びに夢中になる」ための学習環境の選択肢を(教師と生徒に)提供している内容とも言えるので、合わせて参考にしてください。ある意味では、それほど「学習環境」は大切なのに、日本では依然として「学習環境=教科書」という捉え方中心になっている悲劇が続いているのではないでしょうか?

2026年2月7日土曜日

学校レベルでの責任ある意思決定: その1=順位づけと能力別クラス編成

 SEL便り: ある意思決定 の6回目です。

 日本の学校でも、順位づけと能力別クラス編成がまだ当たり前のように行われています。これは、9回目で予定にしている「テスト・成績・通知表/内申書」の弊害と言えます。

 『成績だけが評価じゃない』の162ページには、次のように書かれています。

 生徒を順位づけて比べるという仕組みを学校が続けてしまうと、どの位置にいようと、生徒に感情的・社会的なジレンマを与えます。生徒を順位づけして比べるという仕組みは、「もってる人」と「もってない人」との間に存在する溝を永遠に埋めることはなく、前者には報酬を与え、後者には障壁を与えてしまいます。

 また、これは家庭や地域の貧富の差や不公平を浮き彫りにも(反映)してしまいます。

 生徒を順位づけしたり、能力別に分けたりする行為は、「生徒同士のヒエラルキーをいつまでも残してしまいますし、彼ら自身の学びに対するエイジェンシー(主体性)を制限」(同上、163ページ)してしまうのです。

 以上のこと及び評価や成績のつけ方に関しては、この本の第5章と第6章でさらに詳しく書かれています。その主な内容を紹介すると:

・すでにSEL便り: 責任ある思決定 の4回目で紹介した「競争 vs 協働・協力」https://gemini.google.com/share/b2267d79b2b2 について(186~191ページ)と特に「成績にサヨナラする」(188ページ)では、『成績をハックする』と『聞くことから始めよう!』が紹介されている(これら2冊の本を、ぜひお読みください!)。

・いま行われている「評価が子どもたちの自尊心に悪影響」を及ぼし(191~196ページ)ているだけでなく、「学業成績によって決めつけられる生徒のアイデンティティー」(196~203ページ)は極めて歪んだものになってしまう。

・そして、第5章の最後には「もし、すべての生徒に帰属意識をもたせたいのであれば、学力(=テストの点数)で競争するという考え方の代わりに、目標をどれだけ達成したのかという基準で評価する方法を理解してもらい、それぞれの生徒が最高の成果が出せるように励まさなければなりません」としたうえで、第6章の「個別評価で生徒の尊厳を高める」ための具体的な方法(特に、成長マインドセットを意識すること、ポートフォリオに力を入れること)が紹介されている。

 なお、第5章と第6章および上で紹介した2冊の本と同じように、順位づけと能力別クラス編成を即刻止めることを提唱しているのが、『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』(特に、46~55ページ)で、その本の残りの部分では、それらに代わるより好ましい教え方が多数紹介されています。その中の一つで最も後半に使われている教室の中に複数の学習コーナーないしセンターをつくって学ぶ方法が詳しく紹介されているのが『一斉授業をハックする』です。

 また、『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』の176ページでは、わずか一段落でしか説明されていない「チョイス(選択)ボード」という教え方・学びかたが、『ほんものの学びに夢中になる』では丁寧に説明されている(68~72ページ)ので、ぜひ試してみたくなります。基本的に、『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』で紹介されている方法は、そういう魅力的なものばかりです。

2026年1月17日土曜日

教師のSELを育てるための5つの基本レッスン

 去年の12月に『教師のためのアート・オブ・コーチング』という本を出したのがきっかけで、その著者のエリーナ・アギラ―さんがあちこちに書いた無料で読める記事(ブログ等)を読んでいます。ここで紹介するのは、彼女が11年前の2014年4月24日に書いたものです(CASELの設立は1994年ですから、アメリカでは20年が経過した段階です。いまは30年経っていることになります!)。~以降の青字は、紹介者のコメントです。エリーナさんの説明だけで試してみるのに自信がもてない方は、参考図書をご覧ください。

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 前回(4月17日)のブログ(PLC便り: すべての人に(生徒にも教師にも)SELを!を参照)では、SELは子どもだけでなく、教師、管理職、コーチ、そして学校で働くすべての大人に必要だという主張をしました。これから紹介するレッスンは、学校全体のスタッフで取り組むことも、個人で実践することもできます。目的は、感情への気づき、自己管理、社会的な気づき、そして人間関係のスキル★を育てることにあります。

 

レッスン1:感情を認識する練習をする

1日、あるいは1時間だけでも、自分の感情的な反応を観察してみましょう。たとえば、学校に着いたとき、「子どもたちが来る前に全部終わらせなきゃ」と不安を感じている自分に気づくかもしれません。そのときは、ただ気づき、「あ、不安があるな」と心の中でつぶやいてみてください。また、ある同僚の教室の前を通ると、彼女が友人であるために安心感や心地よさを感じることがあるかもしれません。そのときも、「あ、安心しているな」と気づいてみます。大切なのは、評価や判断を加えずに、ただ気づき、名前をつけることです。もしよければ、メモを取ったりジャーナルを書いたりして、一定期間の自分の感情の動きを記録してみてもよいでしょう。ときには、自分が何を感じているのかうまく言葉にできない瞬間もあるはずです。それでも大丈夫です。思い浮かぶ言葉をすべて書き留めてみてください。 ~『感情と社会性を育む学び(SEL)』の第3章に似た活動がいくつか紹介されています。

 

レッスン2:身体の反応に気づく

自分の身体がどのように感情を経験しているかを認識する力を磨くことも、SELの大切なステップです。私たちの身体はしばしば感情を表現します。もしその反応に意識を向けられれば、役に立つ情報を得られることがあります。たとえば、保護者が子どもを送りに来たとき、自然に笑顔になっている自分に気づくかもしれません。そのとき、心の奥にある感情にも気づけるかもしれません――「ありがたい。このお母さんはいつも前向きだな。」また、管理職と話すとき、肩がこわばり、お腹が固くなり、呼吸が浅くなることに気づくかもしれません。そのとき、こうした身体反応の背後にある感情を認識できるかもしれません――「身構えている。不安だ。」こうした気づきを得ることで、私たちは「どう行動したいか」を選べるようになります。たとえば、管理職と話すときに不安を感じていると気づいたら、深呼吸をしたり、肩の力を抜いたりすることができます。感情に気づき、名前をつけることは、「自動操縦」の状態から抜け出すことにつながります。そのほうが、たいていの場合、自分の力をより発揮できる状態になります。 ~『感情と社会性を育む学び(SEL)』の100~102ページ参照。

 

レッスン3:好奇心をもつ

感情に気づき、名前をつけられるようになったら、次はその感情に対して好奇心をもってみましょう。調べてみる。探ってみる。問いかけてみる。たとえば、管理職と話すときに不安を感じる自分に気づいたら、こんなふうに振り返ってみます。
「私はいつからこう感じているんだろう?」
「最初はどんなきっかけだった?」
「もう一人の管理職と話すときはどう感じる?」
「この人は私の中の何を刺激しているんだろう?」
「その感覚はどこから来たんだろう?」

ここでの目的は、自分の心理的な歴史を深掘りすることではありません。体験そのものに問いや不思議さ、好奇心を吹き込むことです。そうすることで、感情のつかみが少しゆるみ、その体験について役立つ何かが見えてくることがあります。 ~ 『SELを成功に導くための五つの要素』の第3章「自己を見つける」を参照。

 

レッスン4:感情を観察する

私たちは感情そのものではありません。もし感情を観察する練習ができれば――まるで地上1万フィート上空から、自分が感情を経験している様子を眺めるように――その感情に振り回されずに行動を選べるようになります。感情がときに強く、しがみつくように感じられることもあれば、軽くてすぐに流れていくように感じられることもあります。感情に執着しない練習はとても役に立ちます。
 感情はただの「状態」であり、やって来ては去っていくもの――そして、私たちはその状態にある程度の影響を与えることができます。私はときどき、自分の感情を天気のようにイメージします。嵐の日もあれば、穏やかな空の日もある。激しい雨もあれば、そよ風の日もある。天気が変わるように、感情も必ず変わります。そして私は、自分を一本の木として思い描きます。その木は、やって来ては過ぎていくさまざまな感情(天気)をただ経験しているのです。 ~ 『学びは、すべてSEL』の第3章「感情調整」を参照。

 

レッスン5:自分の感情が他者に与える影響に気づく

自己批判に陥らずに、自分の感情状態が周囲にどんな影響を与えているかに気づくことから始めましょう。ポイントは、科学者のように観察することです。たとえば、こんなふうに自分に語りかけてみます。
「へえ、面白いな。今まで気づかなかった。」
「わあ、私が〇〇な気持ちのとき、Xにはこんな変化が起きるんだ。」

たとえば、ある生徒に対して、いつも大きな笑顔で温かく迎え、会えると本当に嬉しくなる自分に気づくかもしれません。そのあとで、こんなことにも気づくかもしれません。
「私があんなふうに挨拶すると、この子の表情がふっと緩んで、笑顔が広がり、落ち着いて席につくんだ。」

また、疲れて不安を感じているときに、事務の方に書類をそっけなく頼んだら、相手の肩がすくみ、返事も刺々しくなったことに気づくかもしれません。

こうした観察をするときは、自分を責めないことが大切です。ただ気づく。名前をつける。観察する。それだけで十分です。~ 『SELを成功に導くための五つの要素』の114ページ前後の「セルフ・サイエンティストになる」を参照。


 これが私の「理想の姿」です。

学校のスタッフが、これらの実践に数週間から数か月取り組む。その過程で、自分たちがどんな体験をしているのか、何に気づいているのか、何を学んでいるのかを語り合う。それは、週に10分(職員会議や研修の冒頭など)でもよいし、本来ふさわしい時間――週に1時間以上――を確保してもよいでしょう。

これらのレッスンには、感情を表す語彙を広げること(多くの大人に欠けているスキルです)や、難しい感情にどう対応するかという「ツールキット」を育てることも含まれます。
 そして、私の理想をさらに広げるなら、学校のすべてのスタッフとすべての生徒が、この学びに一緒に取り組む姿を見てみたいです。 ~ まさに、エリーナさんの理想を実現するために書かれた本が、『SELを成功に導くための五つの要素』です。それも原書の出版年は2013年ですから、彼女がこのブログを書いたのとほぼ時を同じくしています。

これは始まりにすぎません――しかし、とても力強く、変革をもたらす始まりです。
大人が本来受けるべきSELを提供するための第一歩であり、学校をもっと落ち着いた、もっと幸せな場所にすることにつながると私は確信しています。

出典: https://www.edutopia.org/blog/five-social-emotional-learning-lessons-for-adults-elena-aguilar

★このリストには、「責任ある意思決定」が含まれていませんが、いま本ブログで連載中です。https://selnewsletter.blogspot.com/search/label/%E8%B2%AC%E4%BB%BB%E3%81%82%E3%82%8B%E6%84%8F%E6%80%9D%E6%B1%BA%E5%AE%9A

2026年1月3日土曜日

時間管理をうまくやる方法

  新年おめでとうございます。

 SEL便り: 責任ある意思決定 の5回目です。今回のテーマは、年の初めということもあって、より一層重要かと思います。多くの人がこれで悩んだり、失敗していますから!

 時間管理については、すでにhttps://selnewsletter.blogspot.com/2025/06/blog-post.html で紹介しました。まさに、自己管理・コントロール能力の柱と言えます。

 『成績だけが評価じゃない』の著者のスター・サックシュタインさんがこちらの意思決定にも、時間管理を含めた意図は何かな、と考えました。彼女は、次のように書いています(158ページ)。

責任ある選択をするということは、その選択によってどのような結果がもたらされるかを知ることにもなります。そうした気づきは、誘惑的な選択(たとえば、放課後はたっぷり友だちと遊び、試験前夜まで勉強を先延ばしにしてしまうこと)を生徒がするのではなく、もっとも有益な選択(たとえば、試験の準備のために時間をかけてさまざまな方法を試してみること)をするのに役立ちます。

 これは、まさによくあることですし、教師も含めた大人も、公私両面でよくやらかしてしまう過ちです。それは多分に、優先順位が明確でないというか、いい判断を下せないことによる悲劇といえます。

 先のURLの最後で、スティーブン・コヴィーの『7つの習慣』で最も感激した内容に触れましたが、もっとも有益だったのは、まさにこの優先順位の明確化/判断の仕方に関する情報だったかもしれません。それは、次の図に表されるものです。

 私たちは往々にして、重要性を考えずに、緊急性に飛びついてしまいがちです! つまり、優先順位が低いもの、にです。もちろん、緊急で重要なものに取り組むことは、選択肢がほとんどありません。しかし、緊急性はあっても、重要性が低いものはどうでしょうか? それを見極めないと、「忙しい」「時間がない」と言い続けざるを得ない状況に陥って、重要なものへの取り組みがほとんど無視されることになってしまいます。その結果、後で後悔することが少なくないわけです(スターさんが紹介してくれていた生徒の事例のように!)。このマトリックスを常に、あたまの中において、いま自分がやろうとしていることは、そのどれに当てはまるのか? 他により重要なことはないか? を考える習慣をつけられるようにするとよいでしょう。要するに、「錯覚」や「無駄」をできるだけ避けて、「価値」に振り向けることを意味します(「緊急」は避けて通れませんから、やるしか選択がありません!)。