この記事では、よく機能する学校や組織には、すべての関係者を日々の実践で動機づけ、結びつけ、方向づける「使命(ミッション)」と「ビジョン」★があると主張しています。
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私が最初にリードしたチームのひとつは、ミッションもビジョンももたない学校にありました。その学校では、1年間に6つもの新しい取り組みが始まり、「最重要目標」が9つも掲げられていました。教師たちはそれぞれ、3〜4つの異なるチームに所属していました。学年チーム、教科チーム、図工(美術)を統合するチーム、「文化や雰囲気、人間関係の質」のチーム、リーダーシップのチームなど、数えきれないほどのチームが存在していたのです。
職員会議では、各チームがアジェンダの時間を奪い合い、教師たちは、自分が最も情熱を注いでいる取り組みが他の取り組みと“競争”しなければならない状況に、苛立ちを募らせていました。
健全で高いパフォーマンスを発揮する教育者チームが育つためには、いくつもの条件が必要です。チームが本来もつ力を最大限に発揮できるかどうかは、メンバーそれぞれのEQ(感情知性)だけでなく、チーム(教師)が属する学校や教育委員会の組織的な環境にも大きく左右されます。
これから、こうした組織的条件のいくつかを見ていきましょう。そうすることで、自分が影響を及ぼせる範囲を見極め、チームづくりにおいて戦略的に行動できるようになります。
目的の最優先性
最も効果的に機能する学校や組織には、すべての関係者を日々の実践で動機づけ、結びつけ、方向づける「ミッション」と「ビジョン」があります。学校の短期・長期の目標は、このミッションとビジョンに沿って設定され、定期的に振り返られます。ミッションとビジョンは「目的のステートメント」として文書化され、資料・壁面・会議のアジェンダなど、あらゆる場所に掲示されます。そして何よりも、それらは実際に働く人々の心と手の中で「生きている」のです。
学校に「生きたミッションとビジョン」があると、教職員は「同じ方向を向いている」と感じられます。難しい判断を迫られる場面でも、個々の欲求や都合ではなく、目的が進むべき方向を示してくれます。学校に「生きたミッションとビジョン」があると、各チームはその大きな目的の一部を担う形で働きます。メンバーは、自分たちがどの部分のミッションに向かって取り組んでいるのかを明確に理解し、その焦点をぶらさずに活動できます。★★
縦と横のアラインメント(整合性)
チームは、個々のエネルギーを束ねて、大きな目標に向かう集団的な力へと変えることができます。学校の中で活動するチームは、その学校のビジョン・ミッション・目標・実施計画と整合している必要があります。これが
縦のアラインメント(vertical alignment) と言えます。同時に、チーム同士が 横のアラインメント(horizontal alignment) を保つことも欠かせません。あるチームの取り組みが、別のチームの仕事を補完し合う関係になっていることが重要です。
チームとしての明確な存在目的を言語化していくために、以下の問いを個人でもチームでも振り返ってみてください。
- 私たちは、学校のビジョンのどの部分に向かって取り組んでいるのか?
- ミッションのどの要素を、私たちは体現しようとしているのか?
- 学校の長期目標・年間目標のうち、どれに貢献しているのか?
- 学校のビジョンや目標を前進させるために、このチームは具体的に何をする必要があるのか?
チームメンバーには、こうした“つながり”が明確に示されている必要があります。目的と日々の仕事の交差点がはっきりすると、メンバーはよりエネルギーを感じ、意欲が高まり、自分が大切にされていると実感しやすくなります。自分の個々の努力とチームとしての努力が、より大きな取り組みの成功につながっていくことが見えてくるのです。
時間は重要である(Time Matters)
チームにとって最も重要な資源は「時間」です。ファシリテーターが準備するための時間、そしてチームが協働するための時間。チームは継続的に集まり、本当に大切なことに時間を使う必要があります。つまり、ワークプランの実行、共に学ぶこと、そして強い関係性を築くことです。チームが集まり、集中して取り組むための時間を確保することは、戦う価値のある課題です。
ファシリテーターにも、計画し準備するための時間が必要です。私は、担当する研修やファシリテートするチームの「1時間」につき、1〜2時間の準備時間を確保するようにしています。場合によっては、この比率がもっと高くなることもあります。
学校リーダーとチーム開発の仕事をしていると、よくこう聞かれます。「こんなにたくさんのことを、どうやって時間の中に収めればいいのですか?」しかし、課題は「時間を見つけること」ではありません。時間の使い方に優先順位をつけることなのです。
振り返りと次のステップ
ここまで、チームが健全に成長するために必要な多くの条件のうち、3つの組織的条件を見てきました。もしあなたが「チームづくりがうまくいかない」と感じているなら、チームを育てようとしているその“環境”について考えてみる価値があります。もしかすると、健全なチームを育てるための組織的条件が、まだ十分に整っていないのかもしれません。
だからといって、あきらめる必要はありません。むしろ、チームが力を発揮できるような条件をつくるために、組織レベルで働きかける必要があるということです。チームをつくっているのであれば、あなたはすでにリーダーです。そして、効果的なリーダーは、チームづくりに取り組むとき、全体の風景を見渡して考えるものなのです。
出典・https://www.edutopia.org/blog/cultivating-healthy-teams-schools-elena-aguilar
この記事は、『教師のためのアート・オブ・コーチング』の著者のエリーナ・アギラー氏によって11年前に書かれたものです。
★ミッション(Mission)は、何のために、私たちは存在するのか? つまり、学校が果たすべき役割、存在する理由、日々の仕事を通じて実現しようとする目的を表します。
それに対してビジョン(Vision)は、その目的を実現したとき、どのような状態になっているのか?を簡潔に表す文章です。子どもたちや学校が、将来どのような姿になっていてほしいのかという目指す未来(それも、いつ達成できるのか分からないのではなく、3年ぐらいで実現可能の未来像)です。
例えば、ある学校が次のように定めているとします。
- ミッション: 一人ひとりの子どもが、自分の可能性を発揮し、自分の人生を切り拓いていけるようにする。
- ビジョン: すべての子どもが、自分で学ぶことを選び、仲間と学び合い、自分の成長を実感できる学校をつくる。
ミッションは「なぜ学校があるのか、何を果たすのか」という目的を表し、ビジョンは「その目的が実現した未来の姿」を表しています。
なお、日本によくある(考える子、やさしい子、鍛える子などで代表される)学校教育目標とは違い、ミッションやビジョンは単なる理念やスローガンではありません。
例えば、ある学校で次のような問題が起きたとします。
- 教科書を予定どおり終わらせることと、理解が十分でない子どもに時間をかけることのどちらを優先するか。
- 全員に同じ課題を与えるか、一人ひとりの状況に応じて異なる課題を用意するか。
- 教師が予定した授業を進めるか、子どもの反応を見て授業を変えるか。
- 会議や報告書を増やすか、教師が子どもの学びを見取り、仲間と対話する時間を確保するか。
こうした判断の際に、「私たちは何のために学校をつくり、何を実現しようとしているのか」というミッションやビジョンが判断の基準になります。つまり、ミッションやビジョンは、学校のあらゆる活動について、何を優先し、何を変え、何に時間や労力を使うべきかを判断する基準になるのです。
★★この点については、上の★および、いい学校のつくり方が書かれている『いい学校の選び方』の「あとがき」をぜひ参照してください。日本によくある学校教育目標は、この機能を果たしていないことが分かります。いったい、何の役にはなっているのでしょうか?