2026年10月17日土曜日

学校に健全なチーム文化を育てるには

この記事では、よく機能する学校や組織には、すべての関係者を日々の実践で動機づけ、結びつけ、方向づける「使命(ミッション)」と「ビジョン」★があると主張しています。

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 私が最初にリードしたチームのひとつは、ミッションもビジョンももたない学校にありました。その学校では、1年間に6つもの新しい取り組みが始まり、「最重要目標」が9つも掲げられていました。教師たちはそれぞれ、3〜4つの異なるチームに所属していました。学年チーム、教科チーム、図工(美術)を統合するチーム、「文化や雰囲気、人間関係の質」のチーム、リーダーシップのチームなど、数えきれないほどのチームが存在していたのです。

職員会議では、各チームがアジェンダの時間を奪い合い、教師たちは、自分が最も情熱を注いでいる取り組みが他の取り組みと“競争”しなければならない状況に、苛立ちを募らせていました。

 健全で高いパフォーマンスを発揮する教育者チームが育つためには、いくつもの条件が必要です。チームが本来もつ力を最大限に発揮できるかどうかは、メンバーそれぞれのEQ(感情知性)だけでなく、チーム(教師)が属する学校や教育委員会の組織的な環境にも大きく左右されます。

これから、こうした組織的条件のいくつかを見ていきましょう。そうすることで、自分が影響を及ぼせる範囲を見極め、チームづくりにおいて戦略的に行動できるようになります。


目的の最優先性

最も効果的に機能する学校や組織には、すべての関係者を日々の実践で動機づけ、結びつけ、方向づける「ミッション」と「ビジョン」があります。学校の短期・長期の目標は、このミッションとビジョンに沿って設定され、定期的に振り返られます。ミッションとビジョンは「目的のステートメント」として文書化され、資料・壁面・会議のアジェンダなど、あらゆる場所に掲示されます。そして何よりも、それらは実際に働く人々の心と手の中で「生きている」のです。

学校に「生きたミッションとビジョン」があると、教職員は「同じ方向を向いている」と感じられます。難しい判断を迫られる場面でも、個々の欲求や都合ではなく、目的が進むべき方向を示してくれます。学校に「生きたミッションとビジョン」があると、各チームはその大きな目的の一部を担う形で働きます。メンバーは、自分たちがどの部分のミッションに向かって取り組んでいるのかを明確に理解し、その焦点をぶらさずに活動できます。★★

 

縦と横のアラインメント(整合性)

チームは、個々のエネルギーを束ねて、大きな目標に向かう集団的な力へと変えることができます。学校の中で活動するチームは、その学校のビジョン・ミッション・目標・実施計画と整合している必要があります。これが 縦のアラインメント(vertical alignment) と言えます。同時に、チーム同士が 横のアラインメント(horizontal alignment) を保つことも欠かせません。あるチームの取り組みが、別のチームの仕事を補完し合う関係になっていることが重要です。

 チームとしての明確な存在目的を言語化していくために、以下の問いを個人でもチームでも振り返ってみてください。

  • 私たちは、学校のビジョンのどの部分に向かって取り組んでいるのか?
  • ミッションのどの要素を、私たちは体現しようとしているのか?
  • 学校の長期目標・年間目標のうち、どれに貢献しているのか?
  • 学校のビジョンや目標を前進させるために、このチームは具体的に何をする必要があるのか?

 チームメンバーには、こうした“つながり”が明確に示されている必要があります。目的と日々の仕事の交差点がはっきりすると、メンバーはよりエネルギーを感じ、意欲が高まり、自分が大切にされていると実感しやすくなります。自分の個々の努力とチームとしての努力が、より大きな取り組みの成功につながっていくことが見えてくるのです。

 

時間は重要である(Time Matters)

チームにとって最も重要な資源は「時間」です。ファシリテーターが準備するための時間、そしてチームが協働するための時間。チームは継続的に集まり、本当に大切なことに時間を使う必要があります。つまり、ワークプランの実行、共に学ぶこと、そして強い関係性を築くことです。チームが集まり、集中して取り組むための時間を確保することは、戦う価値のある課題です。

ファシリテーターにも、計画し準備するための時間が必要です。私は、担当する研修やファシリテートするチームの「1時間」につき、1〜2時間の準備時間を確保するようにしています。場合によっては、この比率がもっと高くなることもあります。

学校リーダーとチーム開発の仕事をしていると、よくこう聞かれます。「こんなにたくさんのことを、どうやって時間の中に収めればいいのですか?」しかし、課題は「時間を見つけること」ではありません。時間の使い方に優先順位をつけることなのです。

 

振り返りと次のステップ

ここまで、チームが健全に成長するために必要な多くの条件のうち、3つの組織的条件を見てきました。もしあなたが「チームづくりがうまくいかない」と感じているなら、チームを育てようとしているその“環境”について考えてみる価値があります。もしかすると、健全なチームを育てるための組織的条件が、まだ十分に整っていないのかもしれません。

だからといって、あきらめる必要はありません。むしろ、チームが力を発揮できるような条件をつくるために、組織レベルで働きかける必要があるということです。チームをつくっているのであれば、あなたはすでにリーダーです。そして、効果的なリーダーは、チームづくりに取り組むとき、全体の風景を見渡して考えるものなのです。

 

出典・https://www.edutopia.org/blog/cultivating-healthy-teams-schools-elena-aguilar

この記事は、『教師のためのアート・オブ・コーチング』の著者のエリーナ・アギラー氏によって11年前に書かれたものです。

★ミッション(Mission)は、何のために、私たちは存在するのか? つまり、学校が果たすべき役割、存在する理由、日々の仕事を通じて実現しようとする目的を表します。

それに対してビジョン(Vision)は、その目的を実現したとき、どのような状態になっているのか?を簡潔に表す文章です。子どもたちや学校が、将来どのような姿になっていてほしいのかという目指す未来(それも、いつ達成できるのか分からないのではなく、3年ぐらいで実現可能の未来像)です。

例えば、ある学校が次のように定めているとします。

  • ミッション: 一人ひとりの子どもが、自分の可能性を発揮し、自分の人生を切り拓いていけるようにする。
  • ビジョン: すべての子どもが、自分で学ぶことを選び、仲間と学び合い、自分の成長を実感できる学校をつくる。

ミッションは「なぜ学校があるのか、何を果たすのか」という目的を表し、ビジョンは「その目的が実現した未来の姿」を表しています。

なお、日本によくある(考える子、やさしい子、鍛える子などで代表される)学校教育目標とは違い、ミッションやビジョンは単なる理念やスローガンではありません。

例えば、ある学校で次のような問題が起きたとします。

  • 教科書を予定どおり終わらせることと、理解が十分でない子どもに時間をかけることのどちらを優先するか。
  • 全員に同じ課題を与えるか、一人ひとりの状況に応じて異なる課題を用意するか。
  • 教師が予定した授業を進めるか、子どもの反応を見て授業を変えるか。
  • 会議や報告書を増やすか、教師が子どもの学びを見取り、仲間と対話する時間を確保するか。

こうした判断の際に、「私たちは何のために学校をつくり、何を実現しようとしているのか」というミッションやビジョンが判断の基準になります。つまり、ミッションやビジョンは、学校のあらゆる活動について、何を優先し、何を変え、何に時間や労力を使うべきかを判断する基準になるのです。

★★この点については、上の★および、いい学校のつくり方が書かれている『いい学校の選び方』の「あとがき」をぜひ参照してください。日本によくある学校教育目標は、この機能を果たしていないことが分かります。いったい、何の役にはなっているのでしょうか?

2026年10月3日土曜日

関係修復の対話★でつくる、落ち着いた学級づくり

この記事は、罰や指導でコントロールしようとするやり方から、落ち着いた観察と率直な対話へ。子どもの行動の背景やこだわり(genuine curiosity)や影響を丁寧に確かめながら、関係を整えていくための実践的なヒントをまとめています。

 

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毎日のように、どの教室でも起きている場面があります。教師が、ある生徒が課題から気持ちが離れていることに気づきます。「集中して取り組めないなら、●●をできなくなるよ」とその教師は言います。「そんなの不公平だよ!」と生徒が返します。教師は「いいから、続けよう」と促します。

やり取りは10秒ほど。表面上は、教師が“勝った”ように見えます。しかしその裏では、二つの代償が生まれています。それは、教師と生徒の関係が少しずつ削られていくことと、生徒に本当に必要な“技能”を教える機会を逃していることです。

コロナ禍から数年経ったいまでも、研究と現場の実感は一致しています。生徒たちの社会的な発達は、まだ完全には回復していません。多くの生徒は、友達と面と向かって話すより、スマホでメッセージを送るほうが気楽になっています。

教室は、うまく工夫してつくられていれば、子どもたちの大切な社会性(人とかかわる力)を育てるための最も効果的な場です。そのための枠組みを与えてくれるのが、関係修復のアプローチ★です。

問題はただひとつ。教師が「罰や指導によるコントロール」を手放し、 ゆっくりと時間をかけて生徒のSEL/EQ(感情知性)を育てる道を選べるかどうかです。

 

●「〜しないなら、〜になってしまうよ」という指導の限界

「〜しないなら、〜になってしまうよ」と条件で動かそうとする指導は、その場で従わせる効果はあっても、子どもが“自分で正しく行動できる力”を育てることにはつながりません。

罰や不利益をちらつかせれば、表面上は静かになります。でもそのたびに、

  • 子どもとの関係は少しずつ傷つき、
  • 子どもが本当に身につけるべき力(判断・自律・対話)が育つ機会が奪われます。

さらに、教師が“力”で押し切ろうとするほど、子どもは外側の罰やご褒美にしか反応しなくなり、教師の言葉そのものの影響力は弱まっていきます。

そして、指導の名のもとに恥をかかせたり、追い詰めたりする関わりは、ただ有害なだけでなく、周囲にも広がりやすいです。

だからこそ、「〜しないなら、〜になってしまうよ」で従わせるのではなく、 子どもが“自分で正しく行動できる状態”を育てる関わりへと転換する必要があります。★★

 

● まずは「一緒につくるクラスの約束」から始める

関係修復をベースにした教室づくりは、トラブルが起きてから始まるわけではありません。単元や学期、年度の最初に、クラスの「当たり前」を生徒と一緒につくることから始まります。しかも、教師が一方的に決めたルールではなく、「このクラスはこうやって動いていくよね」という共有の合意に変わります。それを教室に掲示しておけば、教師は生徒を言葉で注意する代わりに、そっとその表を指で示すだけでよいのです。生徒を責めずに、クラスとして大事にしたい行動を強調できます。

最初は、この“共同でつくる”やり方が不思議に感じられるかもしれません。生徒に決めさせたら、ルールが甘くなるのでは?と思うからです。でも実際には逆のことが起きます。自分たちでつくった約束だからこそ、生徒はその約束を守り、互いに声をかけ合うようになるのです。この「みんなでつくった」という感覚こそが、 行動面でも学習面でも、高くて一貫した期待を保つことを可能にする力になるのです。★★★

 

● Describe・Explain・Invite の3ステップで関わる

クラスの約束が守られなくなったとき、関係修復をベースにする教師は別の関わり方を選びます。Describe・Explain・Invite の3ステップは、短いやり取りの中で、関係づくり、問題解決、自己調整、感情知性を育てる枠組みです。

Describe(描写する)

いま見えている行動を、客観的で具体的に伝える。意図や性格を決めつけず、事実だけを述べる。

例: 「不真面目だよ」ではなく、「いま授業に参加できていないように見えるし、まだペアの人とも話せていないね。」

Explain(理由を伝える)

なぜそれをすることが大事なのかを、1〜2文で簡潔に伝える。説教でも罪悪感を与える言い方でもなく、行動がもたらす影響を正直に伝える。

例: 「話し合いがないと、下書きをよくするためのフィードバックがもらえないのが心配なんだ。」

Invite(招き入れる)

生徒を「話の中に招き入れ」、状況を一緒に理解しようとする。これが、従来の注意や命令とは決定的に違う点である。

例: 「いま関われていないように見えるけれど、全体をちゃんと知りたい。 あなたを支えるために、どんなことを知っておくといいかな。」

この枠組みがしないこと

Describe・Explain・Invite は、 脅さないし、決めつけないし、解決策を押しつけません。その代わりに、落ち着いて状況を見て、行動の影響を正直に伝え、相手が大切にしたいことを聞き取りながら関わる姿勢を示します。生徒はその姿勢を少しずつ自分のものにし、自分自身で使えるようになっていきます。数週間、数か月という時間の中で、これが感情知性(EQ)を育てる土壌になるのです。★★

 

● 即席のミニ対話(カンファレンス)とクラス・サークルで広げる

Describe・Explain・Invite の3ステップは、状況に合わせて柔軟に使えます。たとえば、二人の生徒の間に小さな火花が散り始めたときには、即席のミニ対話として同じ枠組みを使います。教師が見えていることを描写し、心配している理由を伝え、クラスの約束を思い出させ、そして何より、生徒自身に「どう進めるのがよいか」を考えてもらいます。こうすることで、小さな衝突は大きくなる前に収まり、生徒は次に同じ状況が来たときに自分で使える手立てを身につけていくのです。

クラス全体に関わるパターンが見えてきたときには、クラス・サークル★★★★という形で同じ枠組みを使うことができます。サークルは、クラスのつながりを深めたり、繰り返し起きる問題を表に出して解決したり、クラスの約束を見直したり、生徒が自分の考えを表現したり深めたりする場になります。たとえば、教師がクラスにこう投げかけることができます。「最近、授業の振り返りの前に荷物を片づけ始める人が多いように見えます。そのままだと、学んだことをしっかり整理する機会を逃してしまうのが心配です。どうしたらもっとよくできると思いますか?」そこから、生徒たちが一緒に自分たちなりの案をつくっていきます。こうしたサークルは、生徒の「公平さ」への感覚を強め、SEL/EQ(感情知性)のスキルを定期的に使う機会にもなります。

 

● 長い目で育てるということ

ちょっとした気になる行動で生徒を廊下に出したり、別室で待機させたりすると、その瞬間は静かになるかもしれませんが、本来は教室の中で育てられるはずの力を、そこで止めてしまうことになります。注意を受けている間、生徒は学びの時間を失い、「どう乗り越えるか」を練習する機会もなくなります。

一方で、本稿で紹介したクラスの約束を一緒につくること、 Describe・Explain・Invite の3ステップ、即席のミニ対話、 クラス・サークルは、こうした日々の関わりそのものが、SEL/EQ(感情知性)を育てる「毎日のカリキュラム」になります。特別な授業や単元として教えるのではなく、何かうまくいかないことが起きたときの「話し方そのもの」が学びになるのです。こうして生徒は、難しい場面でもその場にとどまり、話し、聞く力とSELを同時に少しずつ身につけていくことになります。

 

出典:https://www.edutopia.org/article/building-students-emotional-intelligence-restorative-conversations ハワード・ヤンク氏は、ポートランド州立大学教育学部の名誉教員であり、25年以上にわたって中等教育で教鞭をとった人です。

 

★関係修復の対話とアプローチについて詳しく紹介されている本に、『生徒指導をハックする』があります。

★★ここのことが詳しく書かれている本に『「しない」が子どもの自力を伸ばす ~ 叱らない・ほめない・コントロールしない、狩猟採集民の子育て術』ですので、ぜひご一読を!

★★★『生徒指導をハックする』の一章は、「ルール」を「期待」に置き換える、という章で、この点について詳しく書かれています。

★★★★『生徒指導をハックする』のなかで最も大切にしていること、そしてすべての教師がすぐにでも取り組み始められることが、このサークルなのでぜひ参考にしてください。

2026年9月19日土曜日

生徒を助けるとは、助けを求める方法を身につけられるように教えること

教育の段階によって、必要なサポートの形は異なります。中高生と学年が上がるにつれて、生徒たちはいつ助けが必要かを自分でより主体的に気づけるようになっていきます。教師は、生徒がいつサポートを必要としているかを見抜くのが非常に得意です。しかし、大人がいつも必要性を見極め、リソースを探し、支援を始めてしまっていたら、生徒はいつそれらの方法を自分で学ぶことができるのでしょうか?

私はこの成長の過程を、全く異なる二つの立場から目の当たりにしてきました。中学校のティーチャー・アシスタント(指導助手)として勤務していた頃、生徒たちが大人の力を頼って自分のニーズを満たすことがいかに自然であるか(かつとてもうまいか)に気づきました。その後、大学生のキャリアコーチとして、彼らがまた別の形での「自立」に向けて試行錯誤する姿を見てきました。こうした経験から、生徒たちが「助けを求めている」ことに自分で気づき、それを手に入れるための第一歩を踏み出すのは一体いつなのかについて、深く考えるようになったのです。

生徒が自立するにつれてサポートが重要になる理由

研究によると、教師からの肯定的なサポートを経験した生徒は、学習に伴うバーンアウト(燃え尽き症候群)のレベルが低く、学習エンゲージメント(学習への没頭度)が高いことが分かっています。このことは、生徒が学業や日常の困難を乗り越えていくうえで、教師からの継続的な指導と支援がいかに価値をもつかを示しているため、非常に興味深いです。

高校では、教師がより構造化されたサポートを提供する機会が多くあります。同じ生徒と定期的に顔を合わせるため、学業成績や行動の変化に気づきやすくなります。そこから、スクールカウンセラー、家族、その他の教育関係者がそれぞれ異なる視点を状況にもたらすことができます。

 また、生徒が教室や学年を移動する際、教師間での引き継ぎが特に役立ち、次の担当教師が生徒をサポートするためのより多くの背景情報を得ることができます。しかし、生徒が大学に進学すると、そうした教師間での直接的な引き継ぎは難しくなることが少なくありません。だからこそ、高校を卒業する前に、生徒自身が自分のニーズに気づき、サポートを見つける練習をしておくことが極めて重要なのです。

教師は、生徒が困難を乗り越え、支援を求める責任を段階的に生徒自身に委ね、一歩引いて見守る必要があります。同時に、そのプロセスを通じて生徒を導けるよう、いつでも頼れる存在であり続けなければなりません。

SELを通じた助けを求めるスキルの育成

 助けを求めるスキルは、生徒がそれを練習する余裕をもっているときに最も身につけやすくなります。SELは、教師がこうした能力を育むための効果的な枠組みを提供してくれます。

 SELのフレームワークは、自己認識、自己管理、社会的認識、人間関係スキル、責任ある意思決定という5つの主要な領域で構成されています。これらのコンピテンシー(能力)のいくつかは、助けを求めるプロセスの各段階を直接的に支えています。自己認識は、生徒がいつサポートを必要としているかを気づく助けとなり、一方で社会的認識には周囲の人々やリソースを認識することが含まれるため、どこに助けを求めればよいかを見出すことにつながります。

 また、生徒は自分のニーズを伝えるのに役立つ人間関係のスキルからも恩恵を受けます。選択肢を評価する場面においては、責任ある意思決定が、取りうる選択肢を検討し、受け取ったサポートをどのように活用すべきかを決める手助けとなります。

 これらのコンピテンシーが一体となることで、生徒の学習の連続体に沿って導きが生まれ、サポートを求めることに対するより大きな自信へと徐々に近づけていくことができます。

まずは生徒自身にニーズを説明させる

 生徒が困難に直面したとき、すぐに解決策を提示するのではなく、自分が何を必要としているかを自分で見極め、説明するための時間を与えることが大切です。問題を言葉にして説明することは、生徒自身が自分の学びを理解する助けになると同時に、どこにサポートが必要かを教師がより明確に把握することにもつながります。

  • 生徒が課題の中で難しさを感じている部分を、自分の言葉で説明する時間を確保する。
  • 理解できていることと、まだ曖昧なまま残っていることを切り分けるよう促す。
  • すでにどのようなことを試してみたのかを尋ね、特定させる。

適切なリソースを見つける練習をする

 生徒たちは、教師であれその他の校内リソースであれ、どこから適切な助けを得られるかを見極める方法を学ぶことで恩恵を受けられます。

  • さまざまな学習面・生活面でのサポート源(リソース)を生徒に紹介する。
  • それぞれのリソースがどのようなニーズに適しているかを認識できるよう手助けする。
  • 一方的に誘導する前に、自分自身で選択肢を検討する機会を提供する。
  • 必要に応じて、複数のリソースを組み合わせて活用するよう促す。

質問をルーティンに組み込む

 どこに助けを求めればよいかを知ることは、プロセスの一部にすぎません。生徒たちは、自分に何が必要かを説明し、具体的な質問を組み立てる練習も行う必要があります。

  • 助けを求める前に、質問をあらかじめ準備するよう促す。
  • どこでつまずいているのか、具体的な説明を求める。
  • 質問の準備を授業のルーティン(日常の活動)に組み込む。
  • 自分のニーズを伝える練習ができる、プレッシャーの少ない機会を提供する。

振り返りのプロセスで生徒に役割を与える

 生徒は、受けたサポートが実際に役立ったかどうかや、それをどう活かせるかを考えることも学べます。振り返りのプロセスを組み込むことは、自分の学びについて自分で決定を下せるようにすることで、生徒のエージェンシー(主体性)を育みます。

  • 受けたアドバイスを自力で応用する機会を提供する。
  • サポートから何を学んだかについての振り返りを促す。
  • 同様の困難が再び生じたときに、何を試すべきか考えさせる。
  • 進捗を確認するためのシステムを整える。

私の経験上、学びがより自分事になるのは、多くの場合この「振り返り」の場面です。生徒たちは自分にどのようなサポートが合うのかを見出し始め、自分自身で同じような判断を下すための準備を整えていくのです。

なぜ生徒には途中でサポートが必要であり続けるのか

 生徒が自立していくにつれて、意味のあるサポートの必要性が消えるわけではありません。その理由の一つは、多くの生徒が、実際にどこに助けを求めればよいのかをまだ完全に分かっていないからです。

 したがって、自立心を育むということは、いつ助けが必要かを生徒自身が認識できるようにすることを意味します。またそれは、利用可能なサポートを有効に活用する力にもつながります。1,000人以上の高校生を対象としたある調査では、40%の生徒が、自分が混乱していることや分からないことがあると認めるのを日頃からためらっていることが分かりました。このギャップは、助けの必要性を自覚することが大半の生徒にとって自然には身につかないことを教えてくれます。それは、学習の他のあらゆる側面と同じように、練習を重ねなければならないスキルなのです。

自立に向けた生徒の準備

 高等教育に関する研究結果によれば、生徒は学習ニーズに対処するために助けを求める際、学業面での恩恵を受けられます。大学に到達する頃には、周囲に豊富なリソースが存在しているかもしれません。しかし、それらにアクセスするためには、生徒自身がより大きな責任を負う必要があります。

 早い段階での練習は、生徒がそうした作業の多くを自分で行うための基盤を与えてくれます。生徒たちはすでに、自分が行き詰まっていることや、誰にサポートを求めればよいかを認識する機会をもっています。異なる環境へと移行する際、こうした経験があれば、助けを求めることが学習の馴染み深い一部のように感じられるようになります。

自信をもって前進できるよう生徒をエンパワーする

 より大きな自立に向けた動きは、生徒が高校を卒業するはるか前から始まります。教師は、自身の学び、意思決定、そして問題解決において生徒がより能動的な役割を担う機会を多く提供することで、彼らの準備を支えることができます。小さな一歩を踏み出すことが自信を育み、生徒がその先にあるものに対してより大きな当事者意識(オウナーシップ)をもつ助けとなるのです。

出典・https://barkleypd.com/blog/when-helping-students-means-teaching-them-how-to-get-help/ このブログはインストラクショナル・コーチのスティーブ・バークレーのですが、今回はゲストブロガーのテッサ・ドッドソンさん(Classrooms | Educational Blogのシニアライター)が1週間前の9月12日書いたものです。彼女は、こうした自立的な学習能力を育むことが、生徒と教師の双方にとってどのようなメリットをもたらすのかについても、インストラクショナル・コーチの視点から探っています。今回焦点を当てていたのは、助けの得方ですが、自分の時間の管理なども大人になってもうまくやれない人がたくさんいることを考えると、SELの一環として、小学校段階からこうしたスキルの練習の機会を提供することはとても大切です。

2026年9月5日土曜日

心のしなやかさを育む

少し立ち止まり、自分と向き合ったり、誰かと深くつながる時間をもつことは、心身のしなやかさを育てる力になります。

 教育に携わる仕事は、いつだって大変です。もちろん、時間がたつにつれて少しずつ楽になる部分もあります――おそらく、困難に向き合うための持ち駒(方法)を増やしていけるからでしょう。それでも、この仕事が「楽になる」日は来ません。変化はつねに難しいものですし、学校で働く以上、それは避けられないことです。

そして、人間として生きることも、ときにとても大変です。私たちにできる最善は、しんどい瞬間への向き合い方を学び、そして、嬉しい瞬間・喜びの瞬間・満たされる瞬間をしっかり心に蓄えていくことです。

秋から冬にかけては、立ち止まって物事を深く考えるのに最適な季節です。この「静かに考えたり振り返ったりすること」★は、感情的レジリエンス(心のしなやかさ)を育てるための大切な方法のひとつです。

 マイルズ・ホートンは、テネシー州にあったハイランダー・フォーク・スクールの創設者で、公民権運動の活動家たち、そして後には環境運動を始めた人々の「学びの場」をつくった人物です。彼が、仕事の重圧から離れたり、レジリエンスを育てたりするために何をしていたのかと尋ねられたとき、こう答えました。

「山を見るんだ。ただ腰を下ろして、山を眺めるだけさ。」

 

コンテンプレーションの力

ふつう「コンテンプレーションの実践」と聞くと、瞑想や祈り、静けさや沈黙といったものを思い浮かべるかもしれません。でも、この概念の定義をもっと広げてみると、同じ目的――立ち止まり、内側に向かい、自分や人生について振り返り、小さな喜びを味わい、ほかの生きものや無生物ともつながる――を果たす、さまざまな活動があることに気づけるかもしれません。

今朝、この文章を書こうと考えていたとき、私の猫が膝の上に乗ってきました。私はパソコンを置き、猫の柔らかくふわふわした毛を撫で、低く響くゴロゴロという音に耳を傾けることに夢中になりました。やがて彼女の目がゆっくり閉じていき、前足の上に頭を落として眠りに入るのを見つめました。その数分間、私は時間を忘れ、この家で一緒に暮らすこの小さな存在への深い感謝に満たされていました。心が静まり、穏やかで、幸せな気持ちになりました。そして気づいたのです――私は今、まさに「コンテンプレーションのひととき」を過ごしていたのだと。

 

行動としてのコンテンプレーション

The Center for Contemplative Mind in Society(社会におけるコンテンプレーションのためのセンター)は、「コンテンプレーションの実践の樹」というモデルを示しており、そこでは7つの枝――静けさ、創造、生成、アクティビズム、関係性、動き、儀式――が紹介されています。その中には、歌うこと、物語を語ること、イメージを思い描くこと、日記を書くこと、絵を描くこと、踊ること、そして「立ち会う(見届ける)こと」などが含まれています。またこの資料は、リンゴを食べる、庭の草取りをする、食事をつくるといった日常の行為も、意識と知恵を育てる意図をもって行えば、コンテンプレーションになり得ると教えてくれています。

あなたはどんなコンテンプレーションをすでに実践していますか?

どれが好きですか?

他にどんなことを試してみたいでしょうか?

立ち止まり、内側に向かい、人と深くつながる時間をつくることは、感情的にも、身体的にも、そしてもしかしたら精神的にも、レジリエンス(しなやかさ)の源を満たす行為です。
 大切なのは、意図をもって、今ここにいる感覚と集中をもって取り組むこと。

陽が短くなる時期にいろいろ試すことで、新しい年にも続けられるようなコンテンプレーションの実践を育てる時間が見つかるかもしれません。

 

★「静かに考えたり振り返ったりする」は「コンテンプレーション」の訳として使いました。他には、内省、自分を見つめ直す、専門用語としてはmeditationの「瞑想」に対して、contemplationは「観想(神や真理について静かに思いを巡らすこと)」と訳されます。

出典・https://www.edutopia.org/blog/cultivating-your-emotional-resilience-elena-aguilar

この記事の執筆者のエリーナ・アギラーさんは、『教師のためのアート・オブ・コーチング』(図書文化)や、この記事のテーマを含む『Onward: Cultivating Emotional Resilience in Educators (しなやかな心で歩み続ける ― 教師のためのレジリエンスの育て方)』という一番売れているとても中身の濃い本を10冊近く書いています。その中身の濃さを、唯一邦訳のある『教師のためのアート・オブ・コーチング』でぜひ味わってください。

2026年8月15日土曜日

共感の力

 他者への共感は、相手の行動を必ず変えるわけではありません。

 それでも、自分が難しい状況をよりうまく乗り越える助けになります。

 

 ある生徒に、本当に手を焼いていました。新学期のほとんどの期間、彼女は毎日、私の最終時限の授業に怒りながら飛び込んできて、机にバックパックを叩きつけ、こう叫ぶのです。
「このクラスなんて大嫌い。私はバカじゃないし、ここにいるべきじゃない!」
 彼女は8年生=中学校の最終学年向けの読解支援クラスに在籍していました。彼女は何もしようとせず、授業を妨げるギリギリのところをいつもさまよっていました。

私は毎週、毎週、なんとか彼女とつながろうとしました(ここではTと呼びます)。でも彼女は自分のまわりに大きな壁をつくり、私を寄せつけませんでした。そのうち、私自身も心を閉ざしていくのを感じました。
 正直に言うと、心の中ではこう思っていたのです。「あなたは難しい子なんだね。わかったよ。私だってもう気にしない。ただ静かにしていてくれればいい。」

 そして1学期が終わろうとしていたある日、ちょっとした出来事がきっかけで、私はTに対して湧き上がるような共感の源を見つけることができました。
 そのとき気づいたのは、生徒や同僚、上司といった「他者への共感を育てること」が、実は自分自身を楽にしてくれるということでした。共感を育てることで、気持ちが軽くなり、エネルギーが戻り、困難に向き合う力が増したのです。

 

共感の力

 「良い人であるために、すべきこと」として語られることの多い共感ですが、実際には、他者とつながり、より深く理解するための大切な力です。共感は「同情」とは異なります。同情は、相手の苦しみを外側から見て「かわいそう」「つらいね」と感じること。一方、共感は、相手の痛みを自分の内側で感じたり、相手の目を通して世界を見ることです。そして共感は、思いやり(コンパッション)につながる入口でもあります。思いやりとは、共感を行動に移し、相手の苦しみを和らげようとする姿勢のことです。

 共感を育てるもう一つの理由があります。他者への共感は、自分自身の人生をより良くしてくれます。共感は心を開き、さまざまな感情を受け入れやすくしてくれる一方で、つらい経験をやわらげる働きもあります。他者への共感が育つほど、私たちは相手をより理解し、これまでとは違う形でつながれるようになります。そのことが、レジリエンス――困難から立ち直る力――を高めてくれるのです。

 Tとの間に起こったことは、次のようなことでした。授業で「もしも魔法のジーニーが願いを一つ叶えてくれるとしたら、何を頼みますか?」というお題で、短い作文を書いてもらった時のことです。

Tは、「ジーニーに新しい服を買ってもらいたい」と書きました。彼女の書いた内容によると、最近急に背が伸びて、今持っている服がどれも小さくなってしまったそうです。でも家には新しい服を買う余裕がなく、毎日、サイズが合わないと分かっているズボンや、今にもはち切れそうなシャツを着て登校するのが恥ずかしくてたまらないのだと綴っていました。「ただ、自分の体にぴったりの服が欲しい」——急成長期を迎えた彼女の願いは、切実なものでした。

 私は思いました。「13歳の女の子にとって、それはいったいどんな気持ちなんだろう」

自分自身の思春期を思い出し、彼女の服を着ている自分を想像し、彼女が感じているかもしれない気持ちの一部を、私も感じたのです。

 私は、共感を込めた短いメッセージを書いて返信しました。すると彼女は返事をくれて、病気のおばあさんのことや、発達障害のあるお母さんのことを話してくれました。私がまた返信すると、彼女もさらにいろいろと打ち明けてくれました。彼女は相変わらず怒った様子で教室に入ってくることもありましたが、その怒りは以前よりずっと早くおさまるようになりました。そして私自身、彼女の怒りに前ほど振り回されなくなっていることに気づきました。むしろ自然に微笑みかけることができ、「今日は来てくれてうれしいよ」と心から言えるようになっていたのです。

 他者への共感は、必ずしも相手の行動を変えるわけではありません――そして、私たちもそれを期待すべきではありません。ただ、自分の内側にある「共感という険しい道」を探っていくことで、他者について、そして自分自身について、より深く学べることを願うだけです。

 

共感のエクササイズ

他者への共感を育てる方法はいくつもあります。ここでは、そのうちの一つの活動を紹介します。まず、あなたが苦手に感じている人、関係がうまくいっていない人を一人思い浮かべてください。それは生徒でも、同僚でも、上司でもかまいません。その人の靴を、スマートフォンでそっと写真に撮ってみましょう。もしそれが難しければ、靴をよく観察して心に留めておくか、簡単なスケッチを描いても構いません。一日のあいだ、その人の靴を履いている自分を想像してみてください。あなたが知っている情報を手がかりに、朝その靴を履くところから、学校に来るまでの道のり、学校で過ごす時間、放課後に帰宅するまでの流れを思い描いてみます。そして一日の終わりに、感じたことを記録します。
どんな体験だったか?
どんな気持ちになったか?
その人への考え方や感じ方は、どう変わったか?

 

 共感とは、心を開くことです。それが難しく感じられることもあるでしょう。でも、私たちの心は本当にたくさんのものを受け止められる力をもっています。教師には、心を開く機会が日々たくさんあります。そして、共感を「実践として育てる」ことは、教育者としての仕事をむしろ楽にしてくれるのです。

 

出典・https://www.edutopia.org/article/power-empathy

この記事の執筆者のエリーナ・アギラーさんは、『教師のためのアート・オブ・コーチング』(図書文化)の著者で、コーチングや教員研修を中心に10冊近くの本を書いています。邦訳があるのは、まだ『教師のためのアート・オブ・コーチング』のみです。

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