2026年2月21日土曜日

学校レベルでの責任ある意思決定: その2=学習環境

 SEL便り: 責任あ意思決定 の7回目です。

 『成績だけが評価じゃない』では、学習環境について直接は言及されていないので、このテーマを正面から扱っている邦訳のある3冊の本(『みんな羽ばたいて』Tomlinson著、『「居場所」のある学級・学校づくり』Barron & Kinney著、『「おさるのジョージ」を教室で実現』Ostroff著)を使って、何が大切か、何を考える必要があるかを紹介します。

 以下は、生成AICopilotとのやり取りを通してつくられたものです(青字+~以降は、執筆者のコメントです)。


1. 関係性と尊重を基盤とする学習者中心の学習環境

  • Tomlinson: 学習環境は「生徒が自分自身を理解し、他者と関わり、世界を探究する場」であるべきだと強調。安全性、尊重、関係性が鍵。
  • Barron & Kinney: 「居場所があること」が学習の土台。生徒が「受け入れられている」と感じることで、学びへの意欲が高まる。
  • Ostroff: 好奇心を育むには「心理的安全性」と「探索の自由」が不可欠。失敗を恐れずに試行錯誤できる場が必要。

共通点: 学習者が安心してリスクを取れる環境を重視。学習環境は「人間関係の質」によって成立する。~ この大事な「人間関係の質」、あなどっていませんか?

 

2. 内発的動機と自己決定の尊重

  • Tomlinson: 生徒が「自分の学びに意味を見出す」ことが、深い理解につながる。
  • Barron & Kinney: 生徒が「価値ある存在」として扱われることで、自己肯定感と学習意欲が高まる。
  • Ostroff: 好奇心は「自立的な学びの原動力」であり、強制ではなく「興味から始まる学び」が重要。

共通点:学びは「内側から湧き出る力」によって駆動される。~ この大事な要素、見過ごされていませんか?

 

3. 教師の役割の変容

  • Tomlinson: 教師は「学習のデザイナー」として、生徒のニーズに応じて環境を整える。
  • Barron & Kinney: 教師は「関係性の構築者」として、生徒の尊厳を支える存在。
  • Ostroff: 教師は「好奇心の触媒」として、生徒の問いを尊重し、探究を促す。

共通点:教師は「知識の提供者」ではなく、「学びの伴走者」。~「学習のデザイナー」「学習のデザイナー」「好奇心の触媒」としての役割、果たせていますか?

 

◎3者の力点の違いと共通点(比較表)

 

 これら3冊の本に共通するのは、「学習者の内発的動機を引き出す環境づくり」と「教師の役割の変容」に関する示唆に富む考察と具体的な実践例が多数紹介されていることです。SELとの接点も大きいですから、興味をもたれた方はぜひ3冊の本チェックしてみてください。

 また、前回「チョイス(選択)ボード」という教え方・学び方が丁寧に説明されている本として『ほんものの学びに夢中になる』を紹介しましたが、この本は147~8ページをはじめ本全体が「ほんものの学びに夢中になる」ための学習環境の選択肢を(教師と生徒に)提供している内容とも言えるので、合わせて参考にしてください。ある意味では、それほど「学習環境」は大切なのに、日本では依然として「学習環境=教科書」という捉え方中心になっている悲劇が続いているのではないでしょうか?

2026年2月7日土曜日

学校レベルでの責任ある意思決定: その1=順位づけと能力別クラス編成

 SEL便り: ある意思決定 の6回目です。

 日本の学校でも、順位づけと能力別クラス編成がまだ当たり前のように行われています。これは、9回目で予定にしている「テスト・成績・通知表/内申書」の弊害と言えます。

 『成績だけが評価じゃない』の162ページには、次のように書かれています。

 生徒を順位づけて比べるという仕組みを学校が続けてしまうと、どの位置にいようと、生徒に感情的・社会的なジレンマを与えます。生徒を順位づけして比べるという仕組みは、「もってる人」と「もってない人」との間に存在する溝を永遠に埋めることはなく、前者には報酬を与え、後者には障壁を与えてしまいます。

 また、これは家庭や地域の貧富の差や不公平を浮き彫りにも(反映)してしまいます。

 生徒を順位づけしたり、能力別に分けたりする行為は、「生徒同士のヒエラルキーをいつまでも残してしまいますし、彼ら自身の学びに対するエイジェンシー(主体性)を制限」(同上、163ページ)してしまうのです。

 以上のこと及び評価や成績のつけ方に関しては、この本の第5章と第6章でさらに詳しく書かれています。その主な内容を紹介すると:

・すでにSEL便り: 責任ある思決定 の4回目で紹介した「競争 vs 協働・協力」https://gemini.google.com/share/b2267d79b2b2 について(186~191ページ)と特に「成績にサヨナラする」(188ページ)では、『成績をハックする』と『聞くことから始めよう!』が紹介されている(これら2冊の本を、ぜひお読みください!)。

・いま行われている「評価が子どもたちの自尊心に悪影響」を及ぼし(191~196ページ)ているだけでなく、「学業成績によって決めつけられる生徒のアイデンティティー」(196~203ページ)は極めて歪んだものになってしまう。

・そして、第5章の最後には「もし、すべての生徒に帰属意識をもたせたいのであれば、学力(=テストの点数)で競争するという考え方の代わりに、目標をどれだけ達成したのかという基準で評価する方法を理解してもらい、それぞれの生徒が最高の成果が出せるように励まさなければなりません」としたうえで、第6章の「個別評価で生徒の尊厳を高める」ための具体的な方法(特に、成長マインドセットを意識すること、ポートフォリオに力を入れること)が紹介されている。

 なお、第5章と第6章および上で紹介した2冊の本と同じように、順位づけと能力別クラス編成を即刻止めることを提唱しているのが、『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』(特に、46~55ページ)で、その本の残りの部分では、それらに代わるより好ましい教え方が多数紹介されています。その中の一つで最も後半に使われている教室の中に複数の学習コーナーないしセンターをつくって学ぶ方法が詳しく紹介されているのが『一斉授業をハックする』です。

 また、『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』の176ページでは、わずか一段落でしか説明されていない「チョイス(選択)ボード」という教え方・学びかたが、『ほんものの学びに夢中になる』では丁寧に説明されている(68~72ページ)ので、ぜひ試してみたくなります。基本的に、『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』で紹介されている方法は、そういう魅力的なものばかりです。