2025年8月16日土曜日

自己管理のためのその他の方法

 これまで、自己管理のための方法として時間管理の方法、マインドフルネスのテクニック、ストレスへの対処法などを紹介してきましたが、今回は(SELの2本目のである「生徒が自己管理/コントロール能力を身につけることの大切さ」の5回目は)、それ以外の生徒が自己管理のさまざまな側面を理解して、向上させるための4つの方法を紹介します。それは、①目標を達成できる学習者の特徴を明確に特定する、②責任感を養うために教室での役割を活用する、③責任を果たすために考えだしたことを声に出して共有する、④責任ある行為を認める、です(『成績だけが評価じゃない』の142~5ページ)。

 

   目標を達成できる学習者の特徴を特定する

生徒に、目標を達成する学習者の特徴を取り上げてもらうことからはじめます。たとえば、「本を読むのが好き」、「指示に従う」、「計画性があり、物事を順序立てて考えたり行動できる」などです。そして、その回答を書き留め、その資質を「知識」、「責任感」、「態度」などといったいくつかのカテゴリーに分類します。

次に、生徒の年齢に応じて、これらのカテゴリーの特徴を定義づけします。それぞれの特徴がどのようなものか、良い例と悪い例を挙げて定義をより明確なものにします。この表を教室に掲示して、一年を通して参照できるようにします。

 

  責任感を養うために教室での役割/任務を活用する

多くの教師は、教室を管理するために、生徒ができることを記した係活動の一覧表を掲示しています。生徒に係を割り当てるということには、さまざまな利点があります。それによって、「自分の任務を遂行するのに役立つだけでなく、生徒に目的意識と、教室おいて目に見える形での日常的な責任感を与えます」。

係活動を行う場合、欠席する日には、事前に代わりの人を見つけなければならないというレベルの責任が伴います。係活動にかかわる責任の重さは、すべての生徒が目にします。そして、「みんなにとってその役割を果たすことがどれほど重要なのか、果たせない場合にはどのような影響があるか」について目の当たりにするのです。

なお、この点については姉妹ブログ「PLC便り」(https://projectbetterschool.blogspot.com/の8月17日(日)の記事をご覧ください。異なる視点を提示してくれています。

 

  責任を果たすために、考えたことを声に出して共有する

考えたことを声に出すという行為は、状況や行為の結果起こりそうなことを考慮して、最善の計画を立てる方法を示すためによい方法です。教師は次のような形でモデルを示すことができます。

明日、私は学校に来られません。私がいないと何かできないことはありますか? 今週のテーマは、しっかりとコミュニケーションをとることです。明日は、代わりの先生にそのことを伝えて、やってもらいます。

また、明日に起こったことを私が把握しておく必要もあるので、学校に戻ったら朝一番に連絡をとって、前日のことを教えてもらうようにします。いや、明日の放課後に代わりの先生にメッセージを送れば、その日のうちに情報が得られるので、明後日学校に来ても、遅れることなく予定していることはうまくやれると思います。

 

  責任ある行為を認める

教室の規範を実行している生徒を認める、これは非常に重要なことです。そのためには、保護者に連絡し、責任ある行動の具体例を伝える必要もあります。また、家庭において責任感をもたせるためにどのようなことをしているのかと、保護者に尋ねてみるのもいいでしょう。

よいアイディアがあれば、その方法を教室で応用してもいいでしょう。もし、保護者が教師の助けを希望するのなら、保護者と協力して、子どもが家庭で責任感と時間管理のスキルをさらに向上させるためにはどうしたらよいのか、例を挙げながら説明することもできます。

2025年8月2日土曜日

ストレスの管理

 SELの2本目の柱である「生徒が己管理/コントロール能力を身につけることの大切さ」の4回目は、ストレス管理です。

ストレスの管理について、『成績だけが評価じゃない』の著者のサックシュタインさんは、

生徒は、学習が成績に直結するかどうかにかかわらず、授業中に不安を感じたり、集中できない場合があります。また、パニック発作やそのほかの不安障害に苦しんでいる人は、ベストを尽くせません。どのような生徒がこの問題に悩んでいるのかを知り、彼らに恥ずかしい思いをさせないでストレスの管理をし、意欲的であり続ける方法を提供するシステムを用意する必要があります。さまざまな状況に対応できる安心安全で、柔軟な教室環境の実現を目指しましょう(同上、133ページ)。

 ◆このシステム構築に役立つ本として、①生徒の「不安な心」をサポートし、教師も生徒も安心できる学校をつくるためのヒントになる『不安な心に寄り添う』、②私たちのなかに約半分はいる内向的な人の最高の力を引き出す『静かな子どもも大切にする』、そして③いかに生徒のやる気を引き出すかではなく、生徒は挫折するのが当然という逆転の発想から考え出した『挫折ポイント』(3冊とも、新評論)がおすすめです。

と書いて、その大切さは強調していますが、その後の具体的な事例として紹介しているのは、①カウンセラーとソーシャル・ワーカーの活用と、②グループワークと個別学習への柔軟な対応に特化しているので(これらのテーマに関心のある方は、要チェックです!)、ここでは他の本からの事例を紹介します。参考にするのは、『学びは、すべてSEL』(以下、『学びは、すべて』と略す)と『感情と社会性を育む学び(SEL)』(以下、『SEL』と略す)の2冊です。(特に後者は、脳の機能との関連でストレスを捉えています。そして次のように書いています。日常的に教室では、ストレス反応システムが調節不全となっている生徒に直面します。とはいえ、ストレスやトラウマを経験しながらも調節不全に陥っていない生徒もいます。脳が一人ひとり違うように、ストレスに対する耐性もそれぞれ異なっています。逆境や困難、日常的なストレスに効果的に向きあうためには、誰かとつながりをもつことが必要です(最後には、いつも人間関係に行きつきます!)」123ページとしたうえで、「生徒がストレスと向きあえるようにサポートするには、どのようにしたらよいのでしょうか? 生徒がストレスに対処できなければ「学び」は生まれません。クラス全体でストレスを認識し、管理することができるように取り組んでいく必要があります」(129ページ)としています。

 ストレスと聞くと、悪いイメージしかないと思いますが、『学びは、すべて』では「快ストレス」と「不快ストレス」の2種類が、『SEL』では「良好ストレス」「負担ストレス」「毒性ストレス」の3種類が紹介されています。

 「快ストレス」ないし「良好ストレス」は、生徒が何かの競技大会や発表の準備をしているときに経験するもので、子どもの発達には欠かせないものです。人生の浮き沈みを乗り越えるには、脳に適度なストレスが必要」(同上、126ページ)とされ、快いと感じたり、やる気を刺激したりするストレスのことです。

一方、「不快ストレス」ないし「負担ストレス」は、家族の死などといった困難な状況に対して顕著な反応を示すもので、生徒にとってなす術(すべ)のないものです。この種類のストレスはしばらく続くケースがありますが、深い人間関係のもとに成り立つサポートがあれば回復できます。」(同上、126ページ)

 毒性ストレスは、不快/負担ストレスの最も重く、危険な形です。その対処法としては、専門の大人のサポートが必要なことを意味しますから、教室で対処できるものではありません。下手に対処しようとしたら、危険ですらあります。

 そこで、主な対象となるのは、「不快ストレス」ないし「負担ストレス」ということになります。それらへの対処法をいくつか紹介します。

   予測可能性――日課、スケジュール、決まった手順(同上、130~4ページ)

 習慣があることで、クラスは退屈になってしまうでしょうか? そうはなりません。予測できることは、生徒に【ゆとり】を与え、新しいことを学ぶための環境を整えます。もちろん、毎日繰り返してまったく同じことを行えば教師も生徒も退屈になり、その退屈さがストレスの原因となります。そのためにもバランスが大切です。習慣や決まった手順があると、挑戦したり、新しいことやちょっと変わったことをするための余裕が生まれ、教室での経験が楽しいものになります。注・これを授業に取り入れているのが『作家の時間』や『読書家の時間』、『社会科ワークショップ』などです。授業の時間の使い方はほぼ決まっています。ミニ・レッスンではじまり、生徒が「ひたすら書く・読む・探究する」時間を一番多く確保したあと、最後は振り返り/共有の時間となります。作家や研究者の多くが決まった日程で仕事をしているのも、そのほうが独創的な仕事ができるからです。

   90秒ルール(同上、134~5ページ)

 ストレスを経験しているときには、脳と身体を浄化するために90秒かかるという「90秒ルール」は、生徒に教えるなかでもっとも大切なルールといえます。この一分半の間に何が起こるかが重要です。負の感情をどこにも放つことができずにストレス要因が留まる場合には、自分自身が消耗します。

 この90秒間に建設的な方法で対応すれば、ストレスに対抗することができます。そうするために、私は生徒に簡単な対処法を教えています。頭文字をとって「CBS」と呼んでます。「Count(数を数え)」、「Breath(深呼吸をし)」、「Squeeze(握る)」です。

数を数えると脳が落ちつき、ストレスを起こす【きっかけ】となったこと以外に注意を向けやすくなります。そして、きちんと深呼吸をすることによって心拍数が下がり、体内をめぐっているストレス反応物質が減ります。90秒の最後に、ストレスボールや小さなぬいぐるみなど(もしくは、自分の手でも)、生徒にとって握りやすいものを握ることで落ちつきを取り戻しやすくなります。

他にも、③声の調子/話し方と④セラピー犬の事例が『SEL』の136~8ページでは紹介されていますので、興味をもたれた方はご覧ください。

 そして、同書の153ページには、様々な想定される状況と望ましい対応の仕方が表の形でまとめられているので紹介します。                                      

 『SEL』では、「生徒をサポートする前に、教師自身がストレスに対応しなければなりません」ということで、263~6ページで、この点についても言及されています。詳しくは、『教師の生き方、今こそチェック!』がお勧めです。

 

 もう一冊の『学びは、すべて』では、第3章の感情調整のなかに「ストレス・マネジメント」と「コーピング(対処・対応)」が含まれています。

 前者の事例の一つとして、「ストレスを感じているときにするべきトップ10」(『学びは、すべて』の122ページ)があります。これは、チャート(模造紙)にこのテーマで生徒が具体的な方法を順次追加していくという活動です。

「最初に挙がったものは主に呼吸、ストレッチなどでした。年間を通して、勉強でストレスを感じているときは、先生や家族、または友人と話すなどといった項目を追加していきました。これは、自分たちの周りにある支援のネットワークに気づいたことを示しています」

この事例を紹介した先生は、ストレス解消のための呼吸やストレッチの時間を設けたり、その経験について考え聞かせ注・読み聞かせのバリエーションで、読む代わりに、自分の頭のなかで考えていることを語って聞かせる方法です。詳しいやり方は『読み聞かせは魔法!』の第3章を参照ください。を行ったりして自ら手本を示しています。

 ストレスと不安のマネジメントを目的とした望ましいコーピング・スキルをいくつか紹介します。

   気晴らし(同上、124~5ページ)

教室や学校外で生徒が使える「健康的な気晴らしリスト」を作成します。そのなかには、自転車に乗ったり、近所を散歩したり、水を飲んだりする、手と手首の柔軟性を高めるための指のエクササイズをするなど、生理面における状況を変えるといったことを目的としているものがあります。また、ペットと一緒にいる、本を読む、音楽を聴くなど、精神面での気晴らしに役立つものもリストアップしています。

   人との交流(同上、125~6ページ)

 上のリストの一環とも位置づけられますが、「私たちは、生活のなかで話ができる人のリストをつくりました。両親、友人、兄弟、私(自分自身)……。この年齢になると、自分のことを心配してくれる人が周りにいることを思い出すだけで状況が好転する場合があります」

話すのに最適な人が自分自身というときもあります。一一年生に英語を教えているサミュエル・イトウ先生は、アリストテレスと古代ギリシャ語の「カタルシス(精神面における浄化)」という言葉の由来について生徒たちに教えています。

   ジャーナルを書く(同上、126ページ)

 「それは、ジャーナル注・日記が個人的な記録であるのに対して、ジャーナルは、自分が考えたこと、発見したこと、疑問に思ったことなどの記録です。さらに、交換することも可能ですので、学びの手段としても効果的です。興味をもたれた方は『増補版「考える力」はこうしてつける』(第6章ジャーナル)、『シンプルな方法で学校は変わる』(二九~三五ページ)、『感情と社会性を育む学び(SEL)』(九六~九九ページ)、『自然探究ノートーネイチャー・ジャーナリング』を参照してください。現在では、ブログやフェイス・ブックなども含まれるでしょう。を書くことです。私は、自宅の本棚に置いてある23年間のジャーナルを撮った写真を生徒たちに見せています」

イトウ先生は、地元のリサイクルショップで購入した全ページが空白になっているジャーナルを大量に保管しており、興味がありそうな生徒に与えると同時に、今は「ジャーナリング・モバイルアプリケーション」の使用を模索しています。このようなアプリはパスワードで保護されていますので(鍵付きの日記よりも優れている)、写真やビデオを含めることもできます。

 

なお、このテーマで書くにあたって情報収集をしていたなかで、以下の情報も見つけました。https://www.smartbrief.com/original/how-to-help-elementary-students-cope-with-stress 興味のある方は、ぜひ翻訳ソフトや生成AIを使って訳してみてください。

2025年7月19日土曜日

マインドフルネス

 マインドフルネスは、最近教育の世界でも聞くようになった言葉の一つではないでしょうか? しかし、それはEQSELと同じレベルで、まだよく分かっていないし、うまく教育に活かせていない状態のような気がします。自己管理スキルとしてのマインドフルネスには、大きなポテンシャルがあるのに(SELの2本目の柱である「生徒が自己管理/コントロール能力を身につけることの大切さ」の3回目のテーマは、そのマインドフルネスです)!

『成績だけが評価じゃない』の著者のサックシュタインさんは、マインドフルネスのコーチのチャーリー・アンスタット氏が言っている定義の「今、自分が何をしているかを知っていること、つまり今この瞬間を完全に意識している状態」を紹介してくれています。彼女の言葉でいうと、「マインドフルな状態であることの要点は、状況のなかで起こりうるすべての問題や結果を心配するのではなく、目の前にあるもの、コントロール可能なことへの集中にあります」★ということになります(『成績だけが評価じゃない』の129ページ)

 「マインドフルネスは、すべての生徒に効くといった特効薬ではありません」としたうえで、生徒たちが最も不安を感じるテストをはじめ、学校生活(あるいは、家庭生活や社会人生活!)のあらゆる側面で不安やストレス(や苛立ちや怒り)をコントロールするのに役立つことから、各自にあった方法を見つけ出すのを助ける役割が教師にはあります。

 もっとも簡単でどこでも(しかも、短時間で)やれる方法として呼吸法があります。たとえば、次のような二つです★★同上、130ページ)。

チェックイン――姿勢よく席に座らせて、静かに目を閉じ、10回息を吸ったり吐いたりして自分の呼吸に集中するようにします。この間、生徒が姿勢を意識しながらリラックスしていることを確かめてください。さまざまな考えが心に浮かびますが、さらっと受け流すようにと言います。10回の呼吸が終わったところで、目の前の課題に取り組みはじめるようにします。

ボディースキャン――椅子に座るか、仰向けに寝て、背筋を伸ばしリラックスしますが、常に呼吸に集中します。生徒が呼吸に集中している間、生徒の注意を足の先に向けさせ、その部分をリラックスするように指示します。そこから、頭部にまで上へ上へと進んでいきます。この方法は、自分の身体の内なる感覚を、「いま、ここ」に集中させるように設計されたものです。これによって、身体の外側に存在している問題に対する不安が軽減されます。(頭頂部まで意識を広げたうえで、時間の余裕があれば、再び足の指先に戻ったり、数回繰り返したりすることもできます。)

 サックシュタインさんは、マインドフルネスに関する文献をチェックしたうえで、次のような効果があることを指摘してくれています(同上、130~131ページ)。

今この瞬間に意識を向けることで、行動上の問題や感情のコントロールに役立つ。

高ぶった感情を徐々に和らげることで、いじめを減らすことに役立つ。

・思いやりや共感の気持ちをもたらす。

学業成績の向上と学習スキルの習得につながる。

・生徒は集中力を維持し、より深いクリティカルな思考をもって課題に取り組めるようになる。

・呼吸について考えることや感情の状態を理解する方法を身に着けることで、感情的な反応の奥底にあるものまで表現できるようになる。

 これだけの効果があるのですから使わない手はありません。研究者の中には、年齢層や教科を超えて、体育から算数・数学に至るまでマインドフルネスを教えるようにと提唱している人もいます。(ということは、イベント的に、あるいは忘れたころに思い出してたまにマインドフルネスの活動(エクササイズ)を生徒たちにやらせたところで、あまり効果はないことを意味します。計画的にやらなくては。そして、全員に同じものをさせるよりも、各自がベストなものを見いだせる形で行うことの方が大切であることも!)

 サックシュタインさんは、そうした状況のなかで

教師は、こうした行動の見本が示せますし、またそうすべきです。ヨガ教室に行ったり、グループで瞑想をしようと言っているわけではありません(正直なところ、私は何度も挑戦しましたが、ヨガにはあまり興味がもてませんでした。腰を曲げたり、体をひねったりして、頭を他人の背中に近づけて呼吸するという状態はあまりリラックスできませんでした)。私にとってのマインドフルネスとは、自らの思考に寄り添う状態です。散歩やランニングをしたり、サイクリングをしたりすることもあります。何かにイライラしはじめたら、呼吸に注目するようにしています(同上、130ページ)

 と書いています。なんと、彼女は腕に 「忍耐を練習する(Practice Patience)」というタトゥーまで入れているようです。そしてさらに、「生徒のために、今を生きること、配慮に関することをモデルとして示せば示すほど、共有された空間にいる状態をより楽しめます。個人的には、生徒と一緒に(あるいは自分自身でも)マインドフルネスを実践することが、忍耐力、集中力、精神的なゆとりを保つために不可欠な方法でした」(同上、132ページ)としています。

教えはじめたころは、忙しすぎてゆっくりと自分の感情を顧みる余裕がありませんでした(また、そう思いこんでいました)。そのため、早い段階で燃え尽きてしまいそうにもなりました。あのときに、今のようなスキルを身につけていればよかったと思っています。

イライラした気持ちを自覚し、それに対処する方法をもっているだけで非常に助かりました。それが理由で、生徒にもそのスキルを教えるようになったのです。生徒が自分の感情の幅広さに触れ、それに対処できるようになれば、感情が高ぶったときでもうまく機能します(同上、132~3ページ)。

 このような彼女の経験をもっていたり、似たような状況にある先生は、日本でも少ないのではないでしょうか?

 このマインドフルネスを実践するにあたって、サックシュタインさんは再度、次のように警告を発しています(同上、133ページ)。

そうは言っても、マインドフルネスは必ずしもすべての人に同じく機能するものではありません。私は、自己コントロールに役立つマインドフルネスの活動に取り組んでもらうように求めることは正しいと思っていますが、そのような活動に違和感を覚える生徒がいる場合、問題が起きる可能性があることも認識すべきです。

その気にならない生徒に対しては、無理強いをしてはいけません。自分のためになる方法として使えるようにしなければなりません。また、この活動に別のリーダーを必要とする生徒のために、同僚と協力して別の機会を設けることもできます★★。

 

★ 私は20年以上前に、この言葉に関心をもち、『校長先生という仕事』のなかで次のような表を紹介しました。「マインドフルなリーダー」は、校長だけでなく、すべての教師も指します! そして「伝統的なリーダー」は「マインドレスなリーダー」を指し、同じく校長と教師の両者のことです。

★★ 『SELを成功に導くための五つの要素』の94~113ページおよび136~142ページ、『感情と社会性を育む学び(SEL)』の120、138、238~9ページ、『好奇心のパワー~コミュニケーションが変わる』の第8章、そして『生徒指導をハックする』の第6章などを参照してください。また、ネットで「マインドフルネスの方法」「マインドフルネス 呼吸法」「マインドフルネスの本」などで検索してみてもたくさんの情報が得られます。

 

2025年7月5日土曜日

プロジェクト学習

SELの2本目の柱である「生徒が自己管理/コントロール能力を身につけることの大切さ」の初回では「時間の管理」を扱いましたが、2回目はプロジェクト学習です。『成績だけが評価じゃない』の著者のサックシュタインさんは、プロジェクト学習(Project-based Learning。以下、PBL)を、

「生徒が現実世界に存在する、個人として意味のあるプロジェクトに主体的に参加する学び方・教え方」1のことです。生徒が興味をもつ探究課題に深く取り組むことを求める「本物の学習体験」2を促進して、授業をサポートします。

 PBLは、自己管理能力やそのほかのSELの核となる能力を伸ばしながら、必要な学習スキルや内容知識を生徒が身につける最適な方法です(『成績だけが評価じゃない』の117ページ)。

と説明しています。

 PBLは、探究学習(https://x.gd/ATFao)やデザイン思考(https://x.gd/yV0dj)と基本的に同じもの(あるいは、とても似たもの)と捉えられます。この教え方だと、教科で押さえるべき知識面と、自己管理能力を含めたSELの核となるスキルを分けることなく一緒に身につく形で教えることができるという大きなメリットがあります。

 彼女はまた、『Rigorous PBL by Design(生徒が主体的に取り組むPBLの設計)』という本を引用しながら、PBLの特徴を次のように紹介してくれています。

 「優れたPBLをどのようにデザインすれば生徒が内容の理解を深め、最終的には知識を応用・活用できるのか。従来のようなやり方で授業を行い、簡単な試験やテストで評価するのではなく、生徒を巻きこみ、その過程で生徒が何を知っているのか、何ができるのかを実際に見取る教え方がPBLです。PBLには、継続的なフィードバックと問題解決が構造的に組み込まれているからです」(同上、117~8ページ)

そしてさらに、

問題解決型のアプローチの利点を指摘し、PBLを「21世紀にふさわしい成果に対応し、21世紀に必要とされる仕事に関連する行動を真似られ、現実世界の問題を実際に解決する機会を生徒に与えられる教育手段」と表現しています。

現実の問題を解決する機会を生徒に提供するだけでなく、取り組みたい問題を生徒に選ばせることもできます。これには、市民としての意識や社会的スキルを育むためのサービス・ラーニング4といった機会も含まれます(同上、118ページ)。

 中等学校の社会科教師のチャリティー・パーソンズ先生は、PBLを実践するポイントを以下のように整理しています(同上、119ページ)。

     生徒の生活に結びつける。

     現実世界の問題や複数の視点に結びつける。

     教室に探究者のコミュニティー★5をつくる。

     本物の評価★2を行う。

     生徒に考えさせたい質問を提案したいという教師の熱意を認めたうえで、生徒が主導権をとる。

この最後の点について参考になるのが、『たった一つを変えるだけ』ですので参考にしてください。サックシュタインさんは、プロジェクト学習について次のようにまとめてくれています(同上、120ページ)。

パーソンズ先生が提案するように、PBLは学習と評価のプロセスに生徒が参加するという素晴らしい方法です。生徒が授業中にプロジェクトに取り組んでいるとき、必要に応じて教師は手助けをしたり、生徒の生活や興味関心に結びつくスキルや内容を身につけるための実地経験も与えられます。また、プロジェクトは長期間にわたって行われるため、時間の管理や目標設定のスキルを磨く機会ともなります。

 通常の教科書をカバーする授業とは、生徒たちの取り組みはまったく違います! なにしろ、自分たちが教科書に合わせるのではなく、自分たちがしたいことに取り組むのですから!★6 そこでは、もはや授業時間という捉え方も存在しなくなります。生徒たちが主体的に取り組み始めたら、もはや授業時間というくくりは意味のないものになってしまいますから。生徒たちはいつでもどこでも考え続けたり、実験したり、書き続けたり、読み続けたりするようになるわけです。

 

★1・アメリカでPBLの普及でもっとも有名な団体がまとめた本が『プロジェクト学習とは』ですので参考にしてください(https://www.pblworks.org/what-is-pbl)。

★2・「本物の学習体験」とは、実際の生活や社会で直面するような現実的な問題場面での解決方法を考えることです。そのなかで生徒を評価するときは「本物の評価」と言います。「真正の」と訳されることもあります。教科書をカバーして、テストでその記憶力を測るような、学校(あるいは、授業)のなかだけで完結する学習体験を「偽物の学習体験」や「偽物の評価」と位置づけることで際立たせています。

★3・PBLには、ここで紹介されている「プロジェクト学習(Project-based Learning)」と「プロブレム学習(Problem-based Learning)」の2つがあります。両方とも略すとPBLとなり、その方法も、現実に存在する問題を扱って解決するという点でもまったく同じです。プロブレム学習については、『PBL~学びの可能性をひらく授業づくり』(北大路書房)を参照してください。

★4・ボランティア活動のように、教室で得た知識を地域社会において社会貢献活動を行うことです。学習者と地域社会が連携し、双方に利益がもたらされます。日本で行われているボランティア活動、キャリア教育、職場体験などとは大きな違いがあるので、それを明らかにすることで日本でも今後取り組むべき展望が見えてきます。

★5・教室のなかに「学習者のコミュニティー」ができることは、教科書教材を扱っている限りはなかなかハードルが高いです。主役は、教材であって自分たちではないことを、教師も生徒たちも薄々感じているからだと思います。それに対して、自分たちが主役と思えると、まったく違った「(教師も含めて)みんなで「よりよい学習者」になっていくコミュニティー ~ 共に助け合い、教え合い、学び合い、刺激し合う「学習者仲間」として存在している」関係が構築されるのです。https://wwletter.blogspot.com/2010/05/ww.html

 学校においては、教師集団がこれをモデルで生徒たちに示し続ける存在である必要がありますが、それを実現できている学校はどれほど日本に存在しているでしょうか?(それは、「校内研修」という枠組みで捉える限りは到底できるものではありません! 本文の最後に書いたような「授業」という枠組みから脱することができるような工夫をしないと、継続して共に助け合い、教え合い、学び合い、刺激し合う「プロの教師の学習者集団」を構築することはできません。それは、やらされてするもの(というより、仕方なくそこにいるもの)ではなく、やりたくて仕方がないから、やらなければ他の仕事に支障をきたすから、するものです。)

★6・文科省も、この大切さというか価値を知っているので、「総合的な学習の時間」を設けました(残念ながら20年を経て、風前の灯火状態ですが)。それではまずいと、今度は「総合的な学習(探究)の時間」と言い始めています。しかし、それらの関連であまりお勧めできるような情報に出会ったためしがないので、今号では普通ではあまり目にしない多数の本を紹介しています。

2025年6月22日日曜日

アドボカシースキルとエージェンシー

アドボカシーもエージェンシーも本来、日本語で一言で表現することが難しい言葉で、私はこれらの概念の大切さには長い間気がつきませんでした。アメリカで子育てをし、教育関係の仕事に従事するなかで初めて、その意義に気がつきました。


セルフ・アドボカシー・スキルの必要性と育み方の例から発展させて、教育の社会的な意義の一つは、自分を越えて、コミュニティや社会をよりよいものにするためのアドボカシー・スキルと「エージェンシー」を育むことであると思います。


「エージェンシー」の定義はさまざまですが、文部科学省の資料によると「自ら考え、主体的に行動して、責任をもって社会変革を実現していく力」であり、「将来に向けて準備ができている生徒は自らの教育や生活全体を通して、エージェンシーを発揮していく必要がある。エージェンシーは、社会参画を通じて人々や物事、環境がより良いものとなるように影響を与えるという責任感を持っていることを含意する、また、エージェンシーは、進んでいくべき方向性を設定する力や目標を達成するために求められる行動を特定する力を必要とする。」と述べられています。ここでは、社会に「影響を与えるという責任感」とされていますが、エージェンシーは、責任感とともに、社会に「影響を与えられる」と感じていること、自己効力感に近いものであると思います。


さて、コミュニティや地域社会をよりよくするためのアドボカシースキルとエージェンシーはどのように鍛えられるのでしょうか。


セルフ・アドボカシースキルと異なるのは、声を挙げたことによる利益の享受者が個人や声をあげた人自身にとどまらないことだと言えますが、セルフ・アドボカシー・スキルを通じて自分の声を届ける、受け入れられる経験や自分たちで創造するという経験がなくては、社会をより良いものにするためのアドボカシー・スキルは育ちません。


今週アメリカの中学校(8年生)を卒業した子どもの学校での取り組みについてみていきます。


セルフ・アドボカシー・スキルの経験としては、この半年の間に、学校やPTAと話し合いや協力を通じて自分たちの欲しいものを手に入れる経験をしました。

こちらは、日本の学校での文化祭などのイベントの企画などを通じても同じようなことが行われているかと思います。


卒業記念品の変更

卒業記念品として、卒業生全員の名前の入ったTシャツが贈られる予定でした。予算の都合上、担当の先生によってTシャツと決定されていました。寒い時期が長いため、着られる期間が長いパーカーがよいとの意見が何人かの生徒から出ました。卒業イベントのために保護者によって行われていたベークセールなどのファンドレイジングに加えて、生徒たちで積極的に宝くじ(学区内の家を周り、宝くじを一口$10で売り、収入の半分を当選者に、半分を8年生のために使う)を売り、予算上、実現可能になったため、パーカーへと変更されました。


卒業アルバムの作成

卒業アルバムは、担当の教員、ボランティアの保護者、そして、生徒の卒業アルバム制作委員会によって作られました。生徒が中心になって、卒業アルバムのテーマから、内容まで決めました。そして、内容に沿ったアンケートをつくり、回答を募ったり、回答していない生徒に働きかけたりしました。


アドボカシー・スキルを育む経験としては、社会科の授業を通じて半年ほどかけて行われたCapstoneプロジェクトがありました。中学校集大成のプロジェクトで、地域社会の課題を見つけ、周りを巻き込みながら解決に向けて行動を起こす、というものです。


地域社会の課題としては、歩道がガタガタで車いす利用者が通れないことや、街中の街灯が少ないこと、ネズミの多さ、など、一人ひとりが課題を決めます。その課題について、個人でリサーチして、どうしてそれが問題となるのか、関連する法律、どのようなデータや情報が必要なのか、改善案やその効果、などについて自分の主張をまとめます。その後、自分の主張を届けるために、公共の該当機関や担当者に問い合わせたり、インタビューやアンケートをとったり、賛同する人の署名を集めたりします。最後に保護者に向けて発表をして締めくくりました。


一人ひとりのプロジェクトの内容や結果はさまざまでした。州や街の担当者に連絡をして、回答をもらえた生徒ももらえなかった生徒もいました。署名が多く集まった生徒もそうでない生徒もいました。とてもよいと感じたことは、発表をしてプロジェクトが終了、というわけではなかったことです。うまくいった生徒はもちろん、うまくいかなかった生徒も、クラスメイトが結果を残して何かを変えられたことを目の当たりにすることで、自分のもつ影響や可能性に気づくことができました。そして、課題を分析し、データを用いて問題点を主張する力、自治体や担当者にアプローチした方法や経験は、アドボカシースキルとともにエージェンシーを育むことにつながります。


2006年に改正された教育基本法第二条では、「…公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養う」としており、すでにエージェンシーと共通することが述べられています。学校生活を通じて社会やコミュニティの一員であることを自覚する機会や経験、そして、社会やコミュニティに影響を与える経験が、エージェンシーを育てるために必要です。


2025年6月7日土曜日

時間の管理

時間の管理を苦手にしている生徒は(大人も!?)少なくありません。著者のサックシュタインさんは、アメリカでは「とくに、思春期の生徒の場合はその傾向が強い」と書いています。「年齢が上がるにつれて、提出物などの期日を忘れないように確認してくれる大人が少なくなり、学習する場所もバラバラになって、生徒自身が時間を管理しなければならなく」なるからです。

「小学校のころは、はっきりと期待を示してくれる教師と一緒に一日の大半を一つの教室で過ごしていたので、楽だったかもしれません。中学生になってクラスが変わる★と時間管理という新たな悩みが生じるため、このスキルを身につける必要があるのです」(『成績だけが評価じゃない』の107ページ)とサックシュタインは書いた後に、

「子どもの計画性や責任感の育成には、万能となる解決策はないということです。一人ひとりの生徒が自立した学習者になるためには、それぞれ少しずつ異なるものを必要とします」。幸いなことに、生徒が自立した学習者になる筋肉(能力)を鍛える方法はたくさんあります。少なくとも、生徒自身が時間管理に関する強みと課題に気づけるようにはできます(同、108ページ)。

と提案してくれています。

 時間を管理する方法は、ハイテク、ローテクを問わず、多様にあります。もっとも一般的なのはカレンダー(手帳、計画表)★★でしょう。いまは、紙媒体とオンライン形式の選択肢があります。さらに、グーグルカレンダーなどのリマインダー機能★★の使い方を紹介してあげれば、より効果的なサポートになります。

期日を入力する際、生徒はどのくらい前に通知すればよいかの判断をします。「はじめよう」というリマインダーを送る生徒もいれば、「プロジェクトの締め切り(レポートの提出日)は三日後」というリマインダーを送る生徒もいます。このように、それぞれに合わせた方法で時間管理を教えて、それぞれの生徒の学習習慣を尊重し、「口うるさい」と感じさせないようにします。それでも、有益なリマインダーが得られます(同上、110ページ)。

 この時間管理がうまくできないという問題は、単に方法の部分に限定されないとも思います。何を大切に思い、何はそう思えないのか(つまり、何は心底自分がやりたいと思い、何はその位置づけではないのか)という個々の生徒の優先順位の問題というか、クリティカルに思考ができるかの問題が大きいような気がします。前者として捉えられれば(優先順位を高く設定できれば)、方法にはほとんど関係なく、生徒たちもしっかりと時間に遅れずに対処できる能力はもっているようです(自分が心底やりたいと思えることは、誰でもちゃんとやれる!?)。そうなると、大切なものとそうでないものをしっかり見極めて行動する能力としてのクリティカルな思考能力/優先順位をつけられる能力をどうやって磨くことができるかの部分が重要になります(もちろん、自分は大切とは思えなくても、やらざるを得ないものへの対応を身につけないといけないという現実的な問題は残ります。しかし、こちらは、上で紹介した「方法論」でかなり磨けるのではないでしょうか?)。

★アメリカでは、中学生以上は、日本の大学のように、自分の取る授業ごとに移動をします。日本の中高のように教師が生徒たちのホームルームに来てくれる体制になっていません。ということは、日本では、アメリカで中高生で起こり始める問題が、大学以降に持ち越しになっているとも言えるかもしれません。

★★私はスティーブン・コヴィーの『7つの習慣』が好きですが、なかでも最も感激したのは、自分のための自分、夫としての自分、父親としての、組織の人間としての自分、コミュニティーの住民としての自分、そして地球市民としての自分(確か、この6つでアメリカ人の執筆なので「国民としての自分」は含まれていなかった記憶です)を書く欄があるスケジュール表を勧めていたことでした。実際、その手帳をしばらくは売られていました。通常の手帳/スケジュール表は、組織の人間としての自分=仕事関係のことしか書き込まないのですが、他の5つも同じように大事するべきだと思うからです。書く欄があれば、空白を埋めることを常に迫られるのでいい練習になり、それが身についたら、通常の手帳に戻っても大丈夫かと思います。

★★★スマホやパソコンなどに案内が自動的に送られる機能です。筆者もこれに毎日助けられています。

2025年5月17日土曜日

生徒が自己管理/コントロール能力を身につけることの大切さ

  SELの5本の柱の一番目は「自己認識」ですが(https://selnewsletter.blogspot.com/2024/11/blog-post.html)、二番目の柱は「自己管理」です。それはまさに、『成績だけが評価じゃない』(スター・サックシュタイン著)の第3章のテーマです。この本を読んだある先生から、「第3章の『より良く学ぶために自己管理能力を促進する』ことはとても面白いと思いました。あまり学校現場では教えられていないけど、人生においては大切なことだと思います」というコメントを頂きました。つまり、自己管理は教えられるスキルなのだ、ということです!

 この章の書き出しで、サックシュタインさんは以下のように書いています(105ページ)。

生徒の自己管理とコントロール能力の欠如は、小学校から大学まで、すべての教師が抱えている悩みの一つです。時間管理、計画・組織化、教室での人とのつながり方(どのようにして自分と気のあう人を選ぶのか、あるいは選ばないのかなど)、行動上の問題などといったさまざまな問題が生徒にはあり、教師は苦労し続けています。

上の文章に賛同する読者は、多いのではないでしょうか? そして、次のような疑問も湧きました。

・「自己管理とコントロール能力」は、教育関係者がよく言う「自律」と同じと捉えられますか? それとも違いますか? 「自律」には、「自己管理とコントロール能力」以外にどんなことが含まれるでしょうか? 「自律」の大切さは、よく強調されていますが、それを身につけるためにどのようなことを実際にしていますか?

・「小学校から大学まで」どころか、「社会人になっても」というか、「死ぬまで」ではないでしょうか?

・サックシュタインさんが挙げている4つの問題以外には、何が考えられるでしょうか?

 この後に、CASELの「自己管理」の定義も次のように紹介してくれています。

さまざまな状況下で、自分の感情、思考、行動を効果的にコントロールし、目標や願望を達成する能力。これには、個人や集団の目標を達成するために、目先の満足にとらわれないこと、ストレスの管理、そして、やる気や行動力をもつことが含まれます。

まさに「自律」の定義でしょうか?

ちなみに、私がいつも気になるのは、「自律」と「自立」の違いです。考えたことのある方、両者の違いに興味のある方は、その違いについて(pro.workshop@gmail.com宛に)教えてください。

 この後に、サックシュタインさんは次のように書いています(106ページ)。

これらのスキルが、あなたの学習スペースでどのように現れるのかについて考えてみましょう。もし、生徒たちがさまざまな状況下において、自己管理する方法を特別に教えられていたとしたらどうでしょう? そして、うまくできない場合に叱られるのではなく、克服するためのさまざまな方法を学べたとしたどうでしょうか?

もちろん、一般的な生徒にも効果はありますが、自己管理スキルは、周囲に圧倒されやすく、気持ちの区切りが苦手な、不安の大きい生徒にも有効です。たとえば、クラスではよい成績を収めていても、成績や進学、就職など、人生を左右するような重要な試験や評価では苦戦するといった生徒です。自己管理スキルを分かりやすく教えれば、生徒の自信を高め、目標を達成する能力も高まります。

いいこと尽くめと思いませんか?

 自己管理スキルの向上を促進し、教室内外における学習を整える方法として、サックシュタインさんは以下のような内容について紹介してくれます(次回以降、それぞれを取り上げていきますので、ご期待ください!)。

  1時間の管理

  2プロジェクト学習

  3マインドフルネス

  4ストレスの管理

  5自己管理のためのその他の方法

  6宿題と自己管理

 これらを扱うことによって、サックシュタインさんが目指しているのは、生徒が学習のオウナーシップ(当事者意識)をもてるようにすることです。