2024年5月18日土曜日

「生徒の声をしっかり聴き、学校の意思決定に反映させる」

 表題の原タイトルは、Elevate Student Voiceです。

私たちの学校や授業は、果たしてどのくらいそれを実現できているでしょうか?

あなたは、自分の学校と授業を生徒の声を意思決定に反映させるという観点で評価したら、100点満点の何点ぐらいと採点しますか?

SELの5本の柱のうちの一つが、「責任ある意思決定」ですから、これは極めて重要なことです。学校や授業でその練習をしないで、いったいどこでするというのでしょうか?

SELを意識する/しないにかかわらず、私たちは「生徒の声をしっかり聴き、学校の意思決定に反映させる」ことは学校経営や学級経営の柱であるはずです!★

 

あなたの学校や教室では「生徒の声をしっかり聴き、意思決定に反映させる」ために、どんな仕組みや方法が実践されていますか? 以下のような質問に答えることで、そのための最初のステップや、継続的な改善の必要な領域を把握することができるでしょう。

・教職員は、生徒が学習者、リーダー、問題解決者、意思決定者として夢中で取り組む★★形で、生徒一人ひとりの視点と経験を尊重し、高めていますか?

・学校レベルのSELの実践、授業、および学校の風土形成などに、生徒が参加するための方法を組み込んでいますか?

・生徒は、定期的に教室、学校、およびより広い地域社会を改善するための活動、解決策、およびプロジェクトを自ら発案し、取り組んでいますか?

(以上のほかに、自分たちに対して投げかけられる質問は考えられますか?)

 

●「参画のはしご」とSEL

生徒の声を意思決定に反映する主な目的は、生徒が(教師を含めた)大人と協力して変革の担い手となることを支援することです。それを学校時代に練習するために。もう30年も前に提示された「参画のはしご」(下図)は、教師が生徒を意思決定にどのように関与させているかを振り返る方法を示しています。生徒がすべてを自ら発案し、取り組むことが現実的でない場合でも、教師や管理職には(生徒にも)多様な選択肢があることを思い出させてくれます。5段ぐらいは、マイナスの効果しかない(?)と言えるでしょうか。


生徒の声を聴き、学校や授業の意思決定に反映させる方法

・アンケートやインタビューで、学校全体でのSELの実践、学校の文化/雰囲気、授業への取り組み具合、教師と生徒の関係、およびその他の生徒たちが日々学校で体験している重要な要素に関する思いや考えを生徒たちから聞き取る。発展形として、教師が調査をしてしまうのではなく、生徒に調査をしてもらい、結果を発表してもらうことまでしてもらう。さらには、結果をどう活かすかのプロセスに参画してもらうことも!

・学校で意思決定が行われるできるだけ多くの場面に、生徒代表の参加を図る。特に、「声」の弱い生徒たちの参加に気を配る。ミーティングのもち方(話し合いの仕方)や意思決定のプロセスの練習になる。その際、お客さんとして参加するのではなく、自分事として捉えられる内容であることが不可欠!

・生徒主導の教室、学校、地域をよりよくするための計画立案(+実行)や提言活動を奨励しましょう。生徒たちは信じさえすれば、自分たちが関心をもつ問題について仲間と共に取り組むことができます。その際、教師は生徒がリーダーシップを発揮するために必要なスキル(例えば、スピーチ、会議の計画・運営、仲間の組織づくりなどの能力)を身につける手助けをする必要があるでしょう。

・生徒の声や考えが中心になるように授業形態をシフトしていく。もっとも手ごろなのは、プロジェクト学習やデザイン思考の学習です。『あなたの授業が子どもと世界を変える』『子どもの誇りに灯をともす』『プロジェクト学習とは』およびhttps://projectbetterschool.blogspot.com/2023/07/blog-post_16.html を参照ください。

出典:https://schoolguide.casel.org/focus-area-3/school/elevate-student-voice/

 

★同じことは、対教師や、対保護者や、対地域にも言えてしまいます。しかし、管理職や教師の声さえ反映できていない状況で、生徒、保護者・地域の声を反映させることは夢のまた夢の状態が続いています。このテーマに挑戦したい方には、『一人ひとりを大切にする学校』、『ペアレント・プロジェクト』がおすすめです。

★★単に生徒を学習者として夢中で授業に取り組むことさえ、かなりハードルの高い現状では(夢中で取り組めていない場合は、生徒一人ひとりの視点と経験を尊重し、高めることは期待できないことを意味します!)、学習者に加えてリーダー、問題解決者、意思決定者として授業や学校のことに取り組んでもらうということを考えられますか?

★★★以下は、オマケ情報です。Elevate Student Voice」でChatGPTに尋ねてみてください。「生徒の声をしっかり聴き、学校の意思決定に反映させる」ための方法が、網羅されています。果たして、日本の学校ではこのリストのどれだけが行われているでしょうか?(各項目に5点を振り分けると、全部で100点になります。学校を採点する指標として使えるでしょう! 全部の項目を見てみたい方は、pro.workshop@gmail.comに資料請求してください。)

2024年5月4日土曜日

「優れたSELのスキルをもった人(現実または架空の人物)とディナーに行くことができるとしたら、誰を招待しますか? その理由も教えてください」

あなたは、この質問にどう答えますか?

長年SELの研究をしている3人の研究者にこの質問を投げかけたところ、名前と理由をあげて答えられたのは一人だけでした。

 ですから、誰でもすぐに答えられる質問ではありません。

 ですが、これからSELに取り組み続けることを考えたら、ぜひそういう人たちをリストアップし続けてください。

●唯一回答したDr.Mark Greenbergの答えは、次の通りです。

 まず、チャーリー・ブラウンです。彼は、他の人とうまくやるコツを教えてくれているだけでなく、自分ともうまくやる方法を教えてくれています。

 2番目は、スパイダーマンです。彼は、決して諦めません。また、常に正しいことをしようとしますし、自分のもっているパワーに責任をもとうとしています。

 3番目ですが、最も好きなのはヨーダ(映画『スター・ウォーズ』に登場人物)です。彼は、とても思慮深く賢明で、学べることがたくさんあります。一つだけ彼の名言を紹介しましょう。「恐れはダークサイド(暗黒面)への道じゃ。 · 恐れは怒りに導き、怒りは憎しみに導き、憎しみは苦しみに導くんじゃ」

ちなみに、ChatGPTの回答は次の通りです:

「その質問に答えるのは難しいですね。私の計算機能と知識ベースから得られる情報をもとにすれば、社交的で感情的に優れた人々の例を見つけることは可能です。しかし、私はそれらの人々と対話した経験がありませんし、感情的な接触もありません。したがって、私の選択は完全に理論的なものになります。

ですが、例えば、アントニオ・デミアスやネルソン・マンデラのようなリーダーシップと感情的知能を持った人々が、多くの場面で他者とのコミュニケーションを成功させてきました。また、フィクションのキャラクターとしては、ディズニーのミッキーマウスやジャンル・オースティンの小説に登場するエマ・ウッドハウスなどが挙げられます。彼らは、自己認識、他者との関係構築、コミュニケーションスキルにおいて優れた能力を示しています。」

 このChatGPTの回答に、あなたは何点ぐらいをつけますか? 筆者の評価は、70点ぐらいです。前段の「言い訳」の部分はユーモアと解しました。アントニオ・デミアスって、誰ですか? (いずれにしても、ChatGPTの回答はまだ6~7割程度で捉えておいた方が無難です!)

●最後に、グリーンバーグ博士にならって、筆者の招待したい人は、まず、『ギヴァー』の主役のジョナスです。ギヴァー以外はもっていないコミュニティー(人類)の過去の歴史を注入されたことによって、単に赤ちゃんのガブリエルを助けるためだけではなく、コミュニティー全体が目を覚ませるような責任のある行動をとったことによります。なお、ジョナスのSELのスキルは「人並」と言ったところだと思いますが、「責任のある行動」は傑出しています(その事実が、結果的には、SELのスキルも押し上げているような気がします。そうでないと、「あのような」行動はとれませんから!)。

 2番目は、鉄腕アトムをはじめ手塚治虫の漫画の主人公たちです。その理由は、グリーンバーグ博士がスパイダーマンを選んだ理由に似ています。ただ、鉄腕アトムの場合は、妹のウランとのセットにすると、SELのスキルがより高まるかもしれません。

 なお、SEL用に使える本のリストは、https://docs.google.com/spreadsheets/d/e/2PACX-1vS_cqoO1OnMIqJzMTAhIbd-UZZTNLZZY-STwjYf9UJg2XvCN5JHLg-PbphrteMzz_-a8F9eRmbce1Om/pubhtml がありますので、それらも参考にしながら、ご自分のディナーに招待したい人のリストを収集し続けてください。

出典:https://casel.org/blog/30-years-of-sel-research-whats-new-and-whats-next/