6月に入り、子どもも教師も新しい教室に慣れ、クラス全体の様子が安定してきたころではないでしょうか。一人ひとりの子どもたちの性格や特性を把握してきたころでもあるかと思います。
そんなときだからこそ、子どもたちに固定観念をもたずに接し、批判することなく耳を傾けること、対話していくことが大切になります。それが教師と一人ひとりの子どもの信頼関係や、子ども同士の関係を深めていくことにつながります。クラス全体や一人ひとりへの話し方、対応の仕方は、日々それに触れている子どもの感情認識やコントロールする力、子ども同士の関係性にも大きく影響します。
クラス全体への対応
1.声の調子、話し方
教室内ではとくに、落ちついて、批判的に聞こえないようにはっきりした声で話すことが大切です。子どもたちの家庭はさまざまで、子どもたちの話し方やコミュニケーションの取り方は一人ひとり異なりますが、適切な話し方で自己管理することを表現していくことが必要です。教師が、子どもに耳を傾けながら状況を把握していることを伝えることで、安心できる、大事にされているといった心理的安全性を確保できるとともに、落ちついた状態をみせることで、感情をコントロールする手本となることができます。
常に冷静さを保つことは大人でも難しいものです。だれしもイライラしたり、不快に思ったりといった感情をもちますが、それを感情のコントロールを学ぶ途上にある子どもたちの前でどのように表現するか、教師自身の感情のコントロールと声の調子の訓練が必要になります。練習が必要な場合も多いでしょうが、練習することで目の前の子どもたちにとって適切な声の調子を保つことにつながります。
また、別の活動に移行するときや注意を促す際には大きな声を出す必要もあるでしょう。怒鳴ることなく、冷静に対応すること、大声を出すのではなく、別の手段(ベルを使うや事前に合図を決めておく)を講じることも有効です。
2.平等に対応する
子どもが意見を言ったときや質問をしたときに、「いい考えだね!」「よい質問だね」というコメントをすることはよくあることだと思います。しかし、子どもたちのなかには敏感に反応する子どももいて、教師の自分への対応をよく記憶しています。自分の発言に対して、ほかの人の発言と同じ対応をとられなかったときー前に発言したクラスメイトは肯定的なコメントをもらったのに、自分はそうでなかったときーその子どもが次に発言する確率は高くなるでしょうか。
教師と子どもたちとの関係性が深まる前に評価を含めるコメントをすると、それがポジティブなものであっても、クラス全体の発言のしやすやや、心理的安全性の確保に影響します。発言してくれたこと、質問をしてくれたことの行為自体を認め、感謝すること、子どもたちに同じ対応をとり、コミュニケーションをしやすい環境をつくっていくことが大切です。
一人ひとりの子どもへの対応
一人ひとりの子どもと接するときには、相手を理解するために敬意をはらいながら耳を傾ける聴くスキルが大切です。
感情面のサポートについての研究でも、子どもが何かを相談しにきたり、不満を表したりするときに、批判することなく子どもの感情を認めること(例:「辛いね。傷ついてイライラするのは当然だと思う」)がのぞましいとされています。
肯定的な発言においても、下記のように「どう感じるべきか」を意見し、子どもの感情を認めていないときが多くあります。
✖「明日にはよくなるよ!」ー感情を無視する
✖「そんなに気にすることじゃないよ」ー感情を却下する
✖「過剰反応だね」ー感情を批判する
ただし、子どもの感情について完全にわかると伝えることも裏目にでることがあります。完全に子どもと同じ状況や感情を経験することは不可能です。自分はあなたのすべてをわかることができると言い切ってしまうと、子どもではなく話を聴いている相手側に注意が向けられてしまうことになります。似たような状況や過去の経験からその感情を想起し、共感することは大切ですが、子どもの独自の状況や立場を尊重して、「あなたの状況や体験を完全にわかることはできないけれど、動揺するのは無理ないことだよ」と子どもの感情を認めて受け入れることが、子どもの共感と関係性を育むことに繋がります。
また、感情をコントロールする方法をシェアし、次にどうしたらいいかを話し合うことが有効です。このときに、「○○するべきだよ」と押しつけるのではなく、ある感情に圧倒されてしまっているときに、隣に座って子どもに寄り添うことが大切です。そして、その感情がずっと続くものではなく一時的なものであることを学べるように共にふり返る機会をもつことも重要です。
子どもとのコミュニケーションでは、耳を傾け、敬意をはらい理解しようとする態度を示していたか次の点でふり返るのがよいでしょう。
コミュニケーションを丁寧に行い、その子どもにどれだけ集中していたか
適切なアイコンタクト、表情、声の調子、言葉遣い、ボディーランゲージで、自分の感情を表現したか
話し手の伝えたいことを理解したか
日々のコミュニケーションのすべてを理想通りに行うことはできませんが、気をつけるポイントを頭に入れて、ふり返ることで、どんどんよいコミュニケーションがとれるようになります。そして日々の積み重ねが子どもたちとの関係性を築き、子どもたちの感情と社会性を育む力へとつながるでしょう。
参照:Providing Students With Emotional Support | Edutopia
『感情と社会性を育む学び(SEL)』(新評論 2022年)
0 件のコメント:
コメントを投稿