前回(先週)お伝えしたように、第2と第4土曜日は、「共感」をテーマにしばらく書いていきます。今回は、その2回目です。
表題の本を訳された佐柳さんが、本への思い・こだわりを綴ってくれましたので紹介します。
本著の第1章から第9章まで、一貫して強調されている点を箇条書きにしてみる。
①
人は生まれつき共感力を持っている。
②
生まれつき持つ共感力が、その後の教育環境で失われることが多い。
③
教育環境を整えることにより、共感力は育てていくことが可能である。
④
スマホや電子媒体に長時間浸ると、共感力が育たない。
⑤
電子媒体使用については、ルール(時間や場所等)を決め、賢く利用すべきである。
⑥ 共感力を持つ子どもは、自分自身も幸せな人生を送るし、周囲の人も幸せにする。
以上の点を、著者は最新の心理学的知見を紹介しつつ、共感力が発揮された実例を豊富に掲載し、読者に呼びかける。
・共感力を育む方法については、そのために役立つ推薦図書やビデオ、映画★、ゲームなどを年齢別に、具体的に挙げている。
・電子媒体の利用の仕方についても、家庭で実行できる具体的な提案がなされている。
本書は具体的な提案に満ちているので、幼児教育、学校教育、社会教育、家庭教育など、あらゆる場で活用できる。最近正規の科目となった「道徳」の授業の時など、生徒に紹介できるエピソードが全編を通して散りばめられている。道徳の中心は、何と言っても共感力に尽きると、私は思う。
世界の潮流は、あらゆる分野でAIの活用が進みつつある。その潮流に乗り遅れてはならぬと、文科省は「プログラミング教育」を小学校から必修化し、一人一人の生徒にタブレット端末を持たせてデジタル機器運用能力を高める方向に、教育の力点を置き始めている。
しかし、デジタル機器運用能力の基礎には、共感力が必須である。共感力なしの技術発展は、原子爆弾であり戦争であり、人種差別から起こる強制収容所に結びつく。
技術教育の前に、心の教育が叫ばれなければならない。共感力の重要性を本著で熱く説く原著者ボーバ氏は、そのためにアメリカ中、世界中を飛び回り、啓蒙活動を続けている。
本書を読んで伝わるボーバ氏の熱意が、私たち二人の訳者と出版社ひとなる書房を動かし、出版が実現した。多くの方々に手に取ってほしい一冊である。
★なお、この価値あるリストは後日、紹介する予定でいます。