この本の特徴は、SELの5本の柱(URLを参照)についての解説と具体的に取り組める活動の紹介の前後に、https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784794812056の本の目次でわかるように、第1章の「教師と生徒の関係を築く」、第2章の「共感する」、第8章の「プログラムではなく、人がSELに好影響を及ぼす」の3章が重視されていることです。
共感的であることを含めた教師と生徒の関係が築かれていないと、SELの取り組み自体が絵に描いた餅(取り組んでいる振りをしているだけ)になってしまいます。それは、最後の第8章とも関係します。アメリカには、数百(300とも400とも言われています!)のSELのプログラムがあります。そのうちの一つを選んだら、それで自分の仕事の大半は完了したと思いがちになるのは無理もないことかもしれません(一つしかない教科書をこなしていれば、自分の仕事は安泰と思っている教師も決して少なくはありませんから)。第8章では、それでは子どもたちの助けにならないと強調しているので、ぜひご一読ください(その際は、『学びは、すべてSEL』の最終章の「SEL学校の創造」と合わせて読むとインパクトが増します!)。
共感というよりも、SELについての前置きが長くなりました。
第2章で大きく取り上げられているのは、共感を扱った内容のものでは多くの本や資料で必ずと言っていいほど取り上げられるカナダ人のメアリー・ゴードンの「共感のルーツ(Roots of Empathy)」が紹介されています。
1996年にはじまったこのプログラムは、「月に一度、教室に赤ちゃんを連れていきます。生徒たちは赤ちゃんを観察し、あやし、赤ちゃんが何を感じているかについて話し合います。そして、赤ちゃんが成長し、変化していく様子を目にしたり、仕草や表情、行動を観察したりすることで、赤ちゃんが何をどのように感じているのか推測していきます」(45ページ)という内容です。赤ちゃんを教室に招くことが困難な場合は、「クラスでペットを飼う」という方法もあります(59~61ページ)★。
以上の事例のほかにも、第2章では10以上の活動や事例が紹介されています。
・手本となる ~ 「生徒に共感を教えるうえで一番大切なのは、手本を示すことです。・・・生徒は、思いやりをもって対応してくれる教師がいると分かると、教師に信頼を寄せるようになります」(53ページ)具体的な接し方や反応の仕方(言葉遣い)の例が、67~71ページに多数紹介されています。
・理解しようと心がける
・話したり、指摘をしたりするのではなく、質問をする
・感謝を示すメモを送る
・親切の壁づくり
・対面でのコミュニケーションをはかる ~ そのときの注意点あり
・地域貢献プロジェクト
・学校内外でのボランティア活動
・馴染みのない生徒と昼食を共にするランチ
・文学作品を使って、国語の授業で共感を学ぶ ~共感3を参照
・紙袋のひらめき ~ 紙袋を使って、いじめへの抵抗力をつける
・ぐちゃぐちゃのハート
・教師の自己評価 ~ 「生徒に接するときに共感をしているか?」と問い直すための3つの質問が紹介されている
最初と最後の活動事例(アクティビティー)で、教師がどのような言葉をかけるかが、生徒との関係が築けるか否かの分かれ目となります。この点については、次の機会に。
★ペットを飼うことは、命に対する責任が伴いますから、簡単に決断できる/すべきことではありませんが、飼うことを通して学べるものの多さは、映画の『ブタのいる教室』などにもあったように、言葉にできないものがあります。
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