あなたは、コミュニティー・サークルというパワフルな活動をご存じですか?
常時実践している先生は、身のまわりにいますか?
(他にも、単なる「サークル」、あるいは「魔法のマイク」「シェアリング・サークル」「おしゃべりサークル」などの名称でも呼ばれています。) 生徒相互の共感、コミュニケーションを図るのに、とても優れた活動です。
これをすることのメリットとして、ある教師は、
・すべての活動において、生徒同士の結束力が高まる
・普段の授業でも、積極的に発言するようになる
・リスクを取ることが増える
・個人的な考えや感情を共有することへの安心感と自信が増す
などを挙げています(『聞くことから始めよう!』239ページ)。これらは、彼が実践した結果獲得したことですが、彼は自分が教員研修で体験したことによって、そうしたメリットとは関係なく、生徒たちにも体験してもらいたくなってしまった、というのが本音のところのようです(同、230~231ページ)。
サークルをする際の参加者の責任と期待には、次のようなものがあります。
・生徒は、発言するように促される。(ボールやぬいぐるみや枝などの物を手渡されることで、視覚的にその人のみが話せることを表す効果がある。)だからと言って、発言することを強制されない。発言せずに、パスすることができる。
・一人(=何か物を持っている者)だけが発言し、他の人は敬意をもって聴く。
・ファシリテーターにではなく、生徒は互いに話し合う。
ちなみに、この活動でのファシリテーターの役割は、上記のような質問を紹介し、まずは自分からそれへの答えを発言することぐらいです。(目的によっては、サークルが終わった後の振り返りの進行役を担うこともあります。)
サークルを最初に導入するときのテーマは、次のようなものがあります(賛否が分かれたり人を傷つけたりすることのない安全なものであることが大切です。その場合、「正しい」答えがない質問を使うので感情的な負担も少なくなります):
・もし、あなたがすごい力をもっていたとしたら、それはどんな力で、なぜですか?
・もし、あなたが動物になれるとしたら、何を選びますか?
どうしてですか?
・あなたの夢における休暇はどのようなものですか?
・あなたをもっともよく表す言葉は何ですか?
・もし、あなたがある島から出られなくなったとしたら、欲しいものは何ですか?
・あなたが好きな色は何色ですか? (『学びは、すべてSEL』201ページ)
教科指導で使う場合は、例えば歴史の授業で使う場合は、次のような質問が考えられます。
・第二次世界大戦と聞いて、どのようなイメージがまず浮かびますか?
・あなたの家族や地域が第二次世界大戦の影響を受けたことを知っていますか? どんな影響でしたか? (『聞くことから始めよう!』238ページ)
(これまでの自分たちの考えや思いなどを聞かれた経験がない場合や、対象年齢が上がるに従って)最初からみんなが積極的に発言することは期待できないので、数回はぎこちなくても続けることが大切です。徐々に、みんなが発言できるようになります。個人差もありますから、話す用意ができるまで待つ必要もあります。
サークルは、授業の初め、真ん中、終わりで活用したり、①順番に発言する、②順番に発言しない、③金魚鉢方式(2つのサークルをつくり、内側の人だけが話し、外側の人は聞くタイプ)などの多様な方法もあります(『学びは、すべてSEL』202~210ページ)
なお、バリエーション(というか、サークルの発展形)としての「スパイダー・ウェブ討論」もお勧めで、そのやり方は『最高の授業』アレキシス・ウィギンズ著で詳しく紹介されています。教師役は話し合いのテーマを提供したら、その後は、サークルの外で観察しながら「蜘蛛の巣図」を描く役割を担います。生徒たちは最初の内はかなり偏った図になってしまう話し合いしかできませんが、繰り返し(5回~10回)行うことで本当の蜘蛛の巣図のようないい形を描く話し合いができることから、このネーミングになっています。また、サークルという形だと時間がかかると判断したときは、ペアや小グループでするのも効果的です(『私にも言いたいことがあります!』98~103ページ「さまざまな形態のペア・グループ活動」を参照)。
今回の記事を書くのに特に参考にしたのは、『学びは、すべてSEL』196~210ページ、『聞くことから始めよう!』228~240ページ、そして『生徒指導をハックする』第2章でした。
なお、毎月第2と第4土曜日にSEL便りのスピンオフとして書いてきた「共感」をテーマにした連載は今回で終わりにします。来週からは、毎月第1と第3土曜日に戻ります。
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