生徒の問題行動が発生した場合の対処の仕方に、大きな違いが出始めています。
問題行動には、大きくは二つのタイプがあります。一つは、授業妨害や教師の指示に従わない等の問題行動で、もう一つは、加害・被害がある場合です。今回は、前者に焦点を当てて、紹介します。
① 授業妨害や教師の指示に従わない等の問題行動の場合
■日本での典型的な対処手順:
・当該生徒から話を聞く。教師は基本的に複数対応。
・何が起こったか、なぜそれをやったのか、その結果どうなったのか、などの事実の確認。
・当該生徒が自分の非を認めたならば、今後の方向性を確認。今後、何をするか、あるいは何をしないか、ということ。
・当該生徒の保護者に連絡。
■アメリカでの対処手順:
アメリカも最近まで日本での流れに近い形で行われていました。それも、担任(教師)がする代わりに、教頭の部屋に生徒が送られる形で。教頭の役割は、校則に従って罰則を科すというものでした。
しかし、それでは生徒たちは問題を再発しますし、問題行動を起こさないためのスキルが身につきません。そこで取り組まれるようになった方法があります。行動面で問題をもつ子どもを支援するための「問題解決コラボレーション(Collaborative Problem Solving)」です。この方法は、行動に課題をもつ子どもたちは重要な思考スキルが足りないという前提に立っています。
「この思考スキルは、読み・書き・計算などの学習領域に含まれるというよりは、感情をコントロールし、自らの行動の結果を予測し、それが他者にどんな影響を与えるか理解し、自分が困っていることを他者に伝えること、または周囲の変化に計画的かつ柔軟に対処することに関連しています。(中略)課題をもつ子どもたちは、人生の社会性・感情・行動の課題に対処するためのスキルを習得していないのです」(『教師と親のための子どもの問題行動を解決する3ステップ』、17ページ)
まさに、SELのスキルの欠如と捉えているのです。それらのスキルを身につけられるようにすることこそが、真の対処法だと!
この本のタイトルにあるように、本のなかで中心的に説明されているのは、①共感する、②問題定義、③提案の3ステップについてです。
それは、すでにこのブログでも紹介したことのある「デザイン思考」
(https://selnewsletter.blogspot.com/search?q=%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3%E6%80%9D%E8%80%83 や https://projectbetterschool.blogspot.com/2021/05/blog-post_16.html)と、作家の時間や読書家の時間の中心的な教え方のカンファランス・アプローチ(その具体的な進め方は、「大切な友だち」https://projectbetterschool.blogspot.com/2012/08/blog-post_19.html)と同じとも言えます。
なかでも、最初の「共感」がとても大切★であることが、これら3つのアプローチから分かります。この「最初のボタンの掛け違い」が起こっていると、その後のステップは、すべて徒労に終わる可能性が大です。
授業妨害や教師の指示に従わない等の問題行動を抱える子どもへの対処法を探している方は、『教師と親のための子どもの問題行動を解決する3ステップ』(ロス・W.グリーン著、日本評論社、2013年)がおすすめです。
★ 共感については、本ブログで連載しました。https://selnewsletter.blogspot.com/search?q=%E5%85%B1%E6%84%9F