2025年6月7日土曜日

時間の管理

時間の管理を苦手にしている生徒は(大人も!?)少なくありません。著者のサックシュタインさんは、アメリカでは「とくに、思春期の生徒の場合はその傾向が強い」と書いています。「年齢が上がるにつれて、提出物などの期日を忘れないように確認してくれる大人が少なくなり、学習する場所もバラバラになって、生徒自身が時間を管理しなければならなく」なるからです。

「小学校のころは、はっきりと期待を示してくれる教師と一緒に一日の大半を一つの教室で過ごしていたので、楽だったかもしれません。中学生になってクラスが変わる★と時間管理という新たな悩みが生じるため、このスキルを身につける必要があるのです」(『成績だけが評価じゃない』の107ページ)とサックシュタインは書いた後に、

「子どもの計画性や責任感の育成には、万能となる解決策はないということです。一人ひとりの生徒が自立した学習者になるためには、それぞれ少しずつ異なるものを必要とします」。幸いなことに、生徒が自立した学習者になる筋肉(能力)を鍛える方法はたくさんあります。少なくとも、生徒自身が時間管理に関する強みと課題に気づけるようにはできます(同、108ページ)。

と提案してくれています。

 時間を管理する方法は、ハイテク、ローテクを問わず、多様にあります。もっとも一般的なのはカレンダー(手帳、計画表)★★でしょう。いまは、紙媒体とオンライン形式の選択肢があります。さらに、グーグルカレンダーなどのリマインダー機能★★の使い方を紹介してあげれば、より効果的なサポートになります。

期日を入力する際、生徒はどのくらい前に通知すればよいかの判断をします。「はじめよう」というリマインダーを送る生徒もいれば、「プロジェクトの締め切り(レポートの提出日)は三日後」というリマインダーを送る生徒もいます。このように、それぞれに合わせた方法で時間管理を教えて、それぞれの生徒の学習習慣を尊重し、「口うるさい」と感じさせないようにします。それでも、有益なリマインダーが得られます(同上、110ページ)。

 この時間管理がうまくできないという問題は、単に方法の部分に限定されないとも思います。何を大切に思い、何はそう思えないのか(つまり、何は心底自分がやりたいと思い、何はその位置づけではないのか)という個々の生徒の優先順位の問題というか、クリティカルに思考ができるかの問題が大きいような気がします。前者として捉えられれば(優先順位を高く設定できれば)、方法にはほとんど関係なく、生徒たちもしっかりと時間に遅れずに対処できる能力はもっているようです(自分が心底やりたいと思えることは、誰でもちゃんとやれる!?)。そうなると、大切なものとそうでないものをしっかり見極めて行動する能力としてのクリティカルな思考能力/優先順位をつけられる能力をどうやって磨くことができるかの部分が重要になります(もちろん、自分は大切とは思えなくても、やらざるを得ないものへの対応を身につけないといけないという現実的な問題は残ります。しかし、こちらは、上で紹介した「方法論」でかなり磨けるのではないでしょうか?)。

★アメリカでは、中学生以上は、日本の大学のように、自分の取る授業ごとに移動をします。日本の中高のように教師が生徒たちのホームルームに来てくれる体制になっていません。ということは、日本では、アメリカで中高生で起こり始める問題が、大学以降に持ち越しになっているとも言えるかもしれません。

★★私はスティーブン・コヴィーの『7つの習慣』が好きですが、なかでも最も感激したのは、自分のための自分、夫としての自分、父親としての、組織の人間としての自分、コミュニティーの住民としての自分、そして地球市民としての自分(確か、この6つでアメリカ人の執筆なので「国民としての自分」は含まれていなかった記憶です)を書く欄があるスケジュール表を勧めていたことでした。実際、その手帳をしばらくは売られていました。通常の手帳/スケジュール表は、組織の人間としての自分=仕事関係のことしか書き込まないのですが、他の5つも同じように大事するべきだと思うからです。書く欄があれば、空白を埋めることを常に迫られるのでいい練習になり、それが身についたら、通常の手帳に戻っても大丈夫かと思います。

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