生徒が責任を果たす/負うことは、自己管理における重要な要素です。これまでの5回の連載(SELの2本目の柱である「生徒が自己管理/コントロール能力を身につけることの大切さ」)では、具体的に自己管理をするための方法を紹介してきました。
『成績だけが評価じゃない』のなかでは、多くの教師や保護者は「宿題は子どもの責任をもたせるのに役立つ」と思っているのに対して、著者のスター・サックシュタインは「私は、まったくそうは思いません」と言い切っています。そのあと、2ページにわたってアルフィー・コーン★の文章を引用する形で、「宿題の価値を裏づける証拠がないことに加えて、ほかの活動に費やすべき時間を宿題が奪っていると言えるでしょう」と書いています。そして彼女は、放課後は伸びやかに過ごしたり、家族とかかわったり、そしてもっとも重要なことは遊ぶことです、と言い切っています。
『成績だけが評価じゃない』のなかでは、このぐらいしか宿題については扱っていないので、残りの部分では、彼女が共著で書いている『宿題をハックする★★』の「まえがき」の内容を紹介します。
・教師に「やってきなさい」と言われた生徒が、何も考えずに、ワークシートを埋め」たり、問題集を解いたりすることほどおかしなことはありません(iiページ)。
・保護者からの要望があるというだけの理由で、生徒に無意味な宿題をさせることを教師の義務や責任と思ってしまうこと自体、本末転倒です(iiページ)
・毎日の宿題に効果があることを占める研究結果がほとんどないにもかかわらず、生徒の学びの可能性を破壊するようなことを、教師に(そして、結果的に生徒に)対して期待し続けるのはなぜでしょうか?(ivページ) ~ 日本の場合は、受験への準備?
・宿題(家庭学習)は、教育においてもっとも誤用されているツールです(訳者コラム・誤用されているツールを参照★★★)(viiページ)。
・あまりにもたくさんある矛盾する考えが、宿題という枠組みのなかに組み込まれています。顕著なものとしては、学校で学ぶことのほかに課される課題と、より自然な状況で行われる遊びや学びとの間に矛盾があります。生活と直接関係しない宿題を出したときは、生徒の時間価値を貶めているだけではなく、学ぶことの価値も軽んじていることになります(vii~viiiページ)。
・成績表に成績を書き込むためだけに宿題を出して、それらに成績をつける代わりに、その時間とエネルギーを生徒の学習経験を改善するために費やすべきではないでしょうか?(viiiページ)
・『宿題をハックする』は、読者に宿題に対する伝統的な見方を改め、教師、保護者、そして生徒にとって、より意味のある宿題(家庭学習)の新たな見方とやり方を可能にするために書きました(ixページ)。
以上が「まえがき」に書いてある内容の一部です。少しでも共感する部分があったり、宿題は子どもたちの時間の結構な部分を占めているので再確認する必要があると思われた方や、https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784794811226 で目次をチェックして興味がもてた方は、是非読んでみて(かつ少しでも実行に移して)ください。
★彼の本は、宿題に関するものやテストに関するものを含めて数冊訳されていますので、興味のある方は是非ご一読を。とても刺激的な内容です。
★★ハックするは、現状を改善・修正するという意味です。
★★★訳者コラム・教育においてもっとも誤用されているツール(viiiページ)のコピー:
現時点でほかに誤用されているツールは、評価や成績、教師による講義形式の授業、少人数クラス編成(能力別は弊害が大きい!)、グループ学習、教科書、時間割、学年、教員研修などたくさんあります。それらの多くは、その効果が検証されているのではなく、単に習慣化しているもの(結果的に「悪習」?)が多いです。あるいは、本来手段でしかないものを目的化してしまうことによって、本来の目的(生徒の学びの質と量を最大化すること)とは逆の結果を招いています。これらの点について興味のある方は、ブログの「PLC便り」をご覧ください。そして、あなたがハック(=修正や改善)したい学校の習慣や決まりごとは何かと考えてみてください。