2025年12月20日土曜日

協働することの意義

 SEL便り: 責任る意思決定 の4回目は、協同・協働的に学びがいかに意思決定に大切な役割を果たすかについて書いてあるところの紹介です(『成績だけが評価じゃない』の第4章)。

 著者のスター・サックシュタインさんは、次のように書いています。

 生徒がアイディアを共有し、ともに理解を深めるような協働的な環境においては、一人ひとりの生徒が学びに対してもっているネガティブな意思決定は最小限に抑えられます。生徒は、問題解決に取り組んだり、特定の目標を達成する基準を使ってフィードバックを提供しあうときであれ、お互いに大きな助けとなる力をもっています。また、生徒同士の関係が親密になれば、グループにおいて責任ある決定が下せるように生徒がもつ力を最大限に引き出します。(中略)生徒同士の関係が深く結びつけば、試験対策だけでなく、グループ課題やプロジェクトに取り組むときに最適な人を自分で選べるようになります。そして、その選択が自分の学びにとって効果的であったのか、今後改善を必要とするのかなど、自らの選択を振り返ることもできます。

 

 この引用だけでは、何か協働で取り組ませることの価値はありそうだ、とは思わされても、具体的にどういうメリットがあり、またどういう方法があるのかまでは見えてこないので、https://gemini.google.com/share/b2267d79b2b2 をお読みください。「協同・協働的に学習することの教科面以外のメリットにはどんなことがある?」と「いまとなっては45年ぐらい前ですが、個人学習、協同学習、競争学習の3つを比較した表を見たことがあります。そんなもの出せますか?」の2つの問いに、Geminiがわかりやすく情報提供してくれています(記憶に残っている比較の表は、縦の項目がもっとたくさんありましたから、同じものではありません! しかし、これで3つの学習法の違いは明確にしてくれているので、これ以上の深追いはしないことにしました)。

 多くの教師は、「時間が取れない」や「機能するチームづくりが面倒だ」などの理由でいまだにグループ活動(協同・協働学習)を敬遠しているようですが(結果的に、上記のURLの表にある「個人学習」と「競争学習」がほとんどになってしまい)★、「協同/協働学習」でしか得られないたくさんの大切な資質(態度)やスキル(能力)を生徒たちに練習してもらう機会を提供できない状況が続いています。それらの多くは、実態としては圧倒的を占めている「個人学習」と「競争学習」では得られないものです。そして、それらの資質やスキル(4つの項目で整理されている「教科面以外の主なメリット」)は、意思決定を行う際にも大きく貢献するものばかりです。逆に言えば、それらが身についていないと、有効な意思決定ができないことにつながってしまいます。

 

●具体的に、どのような協同・協働学習をすればいいのか

 では、具体的にどのような協同・協働学習をすればいいのか、ということについては、日本協同教育学会https://jasce.jp/)や「協同学習関連のおすすめの本は?」で検索したり、生成AIに尋ねるとたくさんの情報が得られるので、それでは得られにくい情報をここでは提供します。

『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』では、たくさんの協同・協働学習の方法が紹介されています。

・たとえば、そのなかで一番ページが割かれている「学習コーナー」「学習センター」は、『一斉授業をハックする』一冊で詳しくやり方が紹介されています。

・また、Choice Board(選択ボード)は、わずか一段落でしか紹介されていないのが、『ほんものの学びに夢中になる』では具体的なボードの例も踏まえながら、4ページで紹介されています(私自身も、後者を訳していて、ようやくその活動の意味というか意図が理解できました)。

・同じく、わずか一段落でしか紹介されていないブッククラブは、『読書がさらに楽しくなるブッククラブ』という一冊の本になっています。

・『ようこそ、一人ひとりをいかす教室』では8ページで紹介されている「契約」は、『「考える力」はこうしてつける』で1章が割かれて紹介されています。

 これらの本では、他にもたくさんの魅力的な方法が紹介されており、それらをすべての教科でいい機会を見計らって実施することで、イベントとしての協同・協働学習やSELの実践から抜け出して、教科指導とSELおよび協同・協働学習を統合した形の実践が可能になることでしょう。(それは、https://selnewsletter.blogspot.com/2025/10/selai.html にあるように、徳目を一つずつバラバラに扱う道徳教育からの脱却と、資質やスキルの定着を意味します!)

 

 これまで挙げた本とは、少し経路が違う本も紹介します。それは、『「居場所」のある学級・学校づくり』です。日本流に言うと、「学級経営」のジャンルに含まれますが、「居場所」という切り口を使うとアプローチがだいぶ違ったものになります(つまり、学級経営や特活アプローチに欠けているものを補える、ということです! それは、学級経営や特活と教科指導を分けないアプローチということになります)。

 https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784794812247 の目次を見るとお分かりのように、協同・協働学習が第7章で、また生徒を惹きつけ夢中で学べるようにする多様な教え方(それらの7~8割がたは、チームで取り組むものです)が第6章で、そして、SELとの強い関係が第5章で扱われています。残りの章も必ず役立つはずです!

 

★一方で、「単にペアやグループにして話し合わせるのが協同・協働学習」という捉え方が依然として主流を占めており、それに対して「グループ活動をしても、学びにつながらない」という課題を多くの教師が抱えているのも事実です。そこで、生徒一人ひとりが責任をもって学びに向かえる仕組みを、実践例とともに紹介すると共に、形だけのペアやグループ活動から脱却し、目的に応じた柔軟なグループ編成が学びを深める鍵となることを示している翻訳書に挑戦し始めていますので、ご期待ください。

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