SEL便り: 責任ある意思決定 の3回目です。
前回の最後で、「コピペや剽窃では達成できない課題や活動を提供することを提案しています」が、『成績だけが評価じゃない』の中ではその具体的な方法が紹介されていないので、それが提供されているいくつかの本を紹介しました。
今回までに、その具体的な提案が書いてある資料を見つけたので紹介します。
簡単に不正(カンニングやズル)ないしコピペや剽窃ができてしまう評価や試験を出し続けているのは、教師の側(あるいは、制度の側)と言えます。教育ないし学校という制度ができたときから、これらの問題は付きまとっていたというか・・・・ つまり、生徒の側の問題ではないのです!★
以下のような特徴を持つ試験や課題は不正を起こりがちとされます。
・
単純な暗記問題中心 → 答えを事前に入手すれば容易に高得点が取れる。
・
監督が甘い試験や課題 → 他人に解かせたり、検索で答えを探せる。
・
選択肢が少なく予測可能 → 推測やパターン認識で正答できてしまう。
要するには、ペーパーテストや小論文は必然的に不正を招く評価法、ということ?!
それに対して、「不正が困難な課題ないし評価」の特徴には以下のようなものが挙げられます。
A オープンエンド型の記述問題(思考過程や独自の解釈を問う)
B プロジェクト型課題(成果物やプロセスを評価する)
C 口頭試問や対話型評価(その場で応答する必要がある)★★
さらには、表現の媒体として、文字だけでなく、多様な表現媒体を可能にしたものからの選択が可能、というのも大事ではないかと思います。
不正が容易にできてしまう(よって、頭に残るものも少ない)課題や評価をさせるのではなく、不正が困難で、かつ残るものも多い課題や評価に転換するには、以下のような特徴をもったものを考える必要があります。
1.
各自の独自性や創造性が発揮されるもの
2.
個人的なつながり
3.
取り組む目的・意図がもてる(明確)
ちなみに、この3つは、エッセイ・スピーチ・創作など、どんな表現でも「心に響く」ものにするための基本軸です。逆に言えば、これらがないものは、課題として響かない(残るものではない)ことを意味します。
●教師だけの評価から、4者の視点からの評価への移行
そして、教師だけの評価ではなく、4者の視点からの評価への転換も同時に大切になります。それによって、教師だけに偏らず、多様な視点を取り入れることができるからです。
- 自己評価 ― 学習者自身が振り返りを行い、メタ認知的に自分の学びを考えることで、学習への責任を自覚する。
- 仲間による評価 ― ワークショップや「ギャラリーウォーク」(作品を展示して互いに見合う活動)を通じて、他者の視点から自分の成果を見てもらい、仲間の成果から学ぶ機会を得る。
- 教師による評価 ― 教科の専門知識や学習基準に基づいた専門的なフィードバックを受けることができる。
- 真の対象(オーディエンス)による評価 ― 作品を公開し、ウェブやSNSでコメントをもらったり、閲覧数や共有数などのデータを分析したりする。昔ながらの口コミやアンケート、会話での反応も有効。これらによって、学習者は自分の成果が社会にどのような影響を与えているかを理解できる(だけでなく、さらなる改善・修正の必要性も認識できる!)。
教師の一方的な評価でなく、4者の視点からの評価にすることで、学習者が自分の学びをより深く理解し、現実世界での意味や影響を実感できるようになります。
さらに、従来の簡単に不正ができる評価から困難な評価への移行には、次の点への配慮も大切です。
・内容とスタイルを分けて評価する
事実・知識・正確さといった「内容」と、デザイン・技術的な質・表現力といった「スタイル」を別々に採点します。これにより、創造的なスキルがまだ発展途上でも、知識面での理解は正しく評価されますし、その逆も可能になります。~ https://projectbetterschool.blogspot.com/2023/02/blog-post_19.html の「三つのP」を参照。
・評価を価値観に合わせる
生徒に、研究者として成功したり、建設的なコミュニティーの一員として成長してほしいなら、その資質を伸ばすような評価項目を設定しましょう。例えば「独創性」「勇気」「社会的な影響力」といった観点を重視します。
・ポートフォリオを公開する
生徒に学習の成果物を集め、学期や年度を通して振り返りをさせます。公開可能なデジタルブックやEポートフォリオにまとめることで、学びの物語をより意味深く、より本物らしく伝えることができます。
以上のような形で、カンニングやコピペや剽窃では達成できない課題や活動を提供することが可能となります。
★(教師も含めた)制度側の問題なのに、それを生徒に責任転嫁しているのです!
★★Aのオープンエンド型の記述問題は、まさにライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップで日々やり続けていることです。Bのプロジェクト型課題(成果物やプロセスを評価する)の代表には、『プロジェクト学習とは』『PBL~学びの可能性をひらく授業づくり』『あなたの授業が子どもと世界を変える』『子どもの誇りに灯をともす』『たった一つを変えるだけ』などが参考になります。Cの口頭試問や対話型評価は、『一人ひとりを大切にする学校』の中心の一つに据えられているエキシビションという評価法です。
★★★ 「●教師だけの評価から、4者の視点からの評価への移行」以降で書かれていることのほとんどは、総括的評価のことではなく、形成的評価を重視した書き方になっています! 総括的評価は、成績をつけることが目的なのに対して、形成的評価は生徒の学びの質と量をさらに拡大すること(と、教師の教え方に修正改善をもたらすこと)が目的です。どちらがより価値があるかと言えば、後者です。前者の価値は、いったい何でしょうか?
出典: https://www.ascd.org/el/articles/tips-for-grading-authentic-assessments
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