2023年6月24日土曜日

共感こそが、真のコミュニケーションと人間関係を構築させてくれる ~共感4

以下は、instituteofcuriosity.comが2023年6月9日に配信したinbox(『好奇心のパワー』の著者たちが定期的にフォローアップとして提供している情報)の翻訳です。


共感という言葉、あらゆる組織や職場で飛び交っています。しかし、それは何を意味するのでしょうか? どうすればいいのでしょうか? そして、なぜ気にする必要があるのでしょうか?

ほとんどの人は、自分には共感力があると主張しますが、実際のところ、その方法を知っている人はほとんどいません。

当時末期の病気だった、私の親友が語ってくれた経験を思い出します。

友人から電話があり、買い物に行くと気分がよくなるから連れて行ってあげると言われたそうです。私の友人はしぶしぶ友人の申し出通りに行動し、新しい服を何着か着、そして購入して疲れ果てて帰宅しました。買い物の後、彼女は、もう長くは生きられないので、すべて返品しなければならないと私に言いました。

あなたが落ち込んでいるとき、誰かがあなたの問題を解決したり、あなたを元気づけようとしたりした経験はありませんか? なぜなら、彼らはあなたが何を必要としているのか、つまり何をすれば気分がよくなるのかを知っていると思ったからです。

そのような状況では、「共感」を装って、あなたのニーズではなく、友人のニーズが満たされています。

  ですから、まず、共感とは何なのかを明確にしましょう。

 共感とは、他人の感情を理解する能力です。そして、共感するためには、好奇心を持たなければなりません。

 相手の立場を理解するには、相手の行動を観察し、感情に注意を向け、さらには何を必要としているのか、何を望んでいるのかを尋ねる必要があります。そうして初めて、あなたは相手と相手のニーズに焦点を当てることができるのです。

その方法は、次のとおりです。

1.     彼らの外見、エネルギーのレベル、からだの動きを広い心をもってよく観察してください。他人のボディー・ランゲージから多くのことを学ぶことができます。

2.     彼らの言うことをよく聞いてください。彼らの声の調子、言葉、考えはあなたに何を語っていますか?

3.     彼らの考え、気持ち、望んでいることや必要としていることについて、質問をしてください。

  思いやりの心を忘れないでください。彼らが自分のニーズは何であるかを伝えてくれたら、それに注意を払い、尊重してください。(自分がいるところ/いたいところで彼らと交わるのではなく)彼らがいるところで彼らと交わり、彼らが望む方法で彼らをサポートしてください。

 ボディー・ランゲージ、声の調子、言葉に注意を払うことで、相手の状態をよりよく理解し、相手が望む場合にのみ、必要なサポートを提供することができます。

 もし、彼らがあなたから何も求めていない場合はどうすればよいでしょうか?

 それで大丈夫です。そのことを尊重し、「すること」から「いること」に移行できれば、ただ静かに彼らと一緒に座っているだけで、あなたは(自分のニーズではなく)彼らのニーズに焦点を当て、それを満たすサポートを提供することになります。

 痛みを抱えている人と一緒に座って共感することは、あなたを不快な気分になることがあります。苦しんでいる人に共感し、気づき、つながることは勇気が必要です。

  私たちは皆、時々落ち込むことがあります。職場でも家庭でも苦労することがあります。

  そのような脆弱な瞬間に、人々はただ見ていてくれ、聞いてくれ、そして理解されていると感じたいだけであることを思い出すのに役立ちます。

 そして、それを実現できる唯一の方法は、『好奇心のパワー』のなかで紹介されている方法を使って、 好奇心をもつことです。

 

  Inboxのメッセージは、ここまでです。

『好奇心のパワー』の本の中のどこで扱われているのは確認してみました。主には、第3章でした。そこには、「共感とは、ほかの人のことを自分のことのように感じることができる能力のことで、その人が感じていることを敏感に察することです。共感は、関係を築くだけでなく深めてくれますので、ほかの人のことを理解しようとする際の有効なツールとなります」(78ページ)としたうえで、聴き方の5つの選択肢を紹介しています。

・選択肢1 話し手を無視する

 ・選択肢2 自分に焦点を当てる

 ・選択肢3 話し手に焦点を当てる

 ・選択肢4 理解することに焦点を当てる

 ・選択肢5 話し手と聞き手の両方に焦点を当てる

 いうまでもなく、下にいくほど、より好ましいコミュニケーションが成り立ちますし、共感の要素が含まれているのは、下の二つのみです。これは、教師と生徒、親子、教師と教師等のコミュニケーションを含めて、すべての間のコミュニケーションで言えます。興味をもたれた方は、「コミュニケーションの仕方と人間関係が劇的に変わる」とサブタイトルがついた、このinboxの書き手による『好奇心のパワー』をご覧ください。

2023年6月17日土曜日

SELとは

SELの5本の柱は、このブログ(https://selnewsletter.blogspot.com/)の右側に表記されている5つですが、それを図化したものはhttps://selnewsletter.blogspot.com/2023/03/sel.html#moreで見られます。

動画だと(日本語ではないですが)、https://www.edutopia.org/video/5-keys-successful-social-and-emotional-learning/で見られます。(このURL以外にも、「social-emotional learning 動画」などで検索すると、大量の動画が見られます。)

 以下では、4冊の本でSELがどのように説明されているかを紹介します。

1)『感情と社会性を育む学び(SEL)』(マリリー・スプレンガ―著/大内朋子ほか訳、新評論、2022年)

Social Emotional Learning (SEL)は、日本語に訳すと、感情に向き合い対応する力であるEQ(感情知性)と、社会性に関わる力のSQ(社会的知性)を育てるための学びです。本書では、この感情と社会性の学びをSELと呼び、そのスキルをSQEQと呼びます。

 SELには、社会認識と人間関係の構築、維持、修復などの社会性(SQ)と、共感する力、自己認識、自己管理能力などからなる自分と他者の感情と向き合い対応していく力(EQ)を学ぶことが含まれます。これらの力は、学校を越えて、社会で必要な力、学び続けるために鍵となる力です。子どもたちにとっての社会である学校では、子どもたちが日々の生活を通じて、SQEQを鍛えていくことが必要です。学習レベルが異なるように、EQSQも一人ひとり異なります。EQSQを子どもの特性や性格と捉えるのではなく、学力と同じように、現時点での子どものEQSQをふり返り、目標を立て、それに向かって学べる環境をつくることが必要です。基礎的な認知能力である読み書きや計算がその後の学びに必要不可欠なように、EQSQも学ぶために必要な基礎的なスキルとみなし、その発達に取り組んでいくことが大切です」(訳者まえがき、 iiiページ)

 

2)『成績だけが評価じゃない―感情と社会性を育む(SEL)ための評価』(スター・サックシュタイン著、中井悠加ほか訳、新評論、2023年)では、CASELの5本の柱の内容について、https://projectbetterschool.blogspot.com/2023/01/blog-post_22.html で読めます。なお、この本はSELと評価/成績とを関連付けた本なので、評価との関係を若干強調する形の説明になっています。

 このCASELの5本の柱の説明以外に、この本では、

SELの核となる能力は、学習するときを含めて、生きていくうえで不可欠となる「思考の習慣」として研究者が提示しているものとなります。それらはすべて教えられますし、教えられるべきものです。また、誰にも居場所があるクラスを築くために、すべての年齢層の生徒と接する際には不可欠な要素となります。◆注・「思考の習慣(Habits of Minds)」については、69ページの表2-4(https://bit.ly/3XZmfbhおよび『学びの中心はやっぱり生徒だ!』(べナ・キャリックほか著/中井悠加ほか訳、新評論)を参照してください。

二人の教育コンサルタントが著した『生徒の尊厳を大切にした居場所のある教室づくり(Belonging Through a Culture of Dignity』◆注・この本は未邦訳のため、日本のニーズによりマッチしている『「居場所」のある教室・学校づくり』を参照してください。のなかで「尊厳の枠組み」が紹介されています。ひとたび生徒のニーズを見極め、帰属意識の高い文化を築き、教える側だけでなく、教える相手の尊厳が尊重できれば、生徒は力を発揮して、より評価が理解されるような学習環境が築けるのです。

本書では、第1章から第4章までにおいて「CASEL」の能力を取り上げ、その内容と、生徒の感情と社会性のウェル・ビーイング◆注・健康で幸福であり、肉体的にも精神的にも社会的にもすべて満たされた状態を言います。◆を促進しながら、子どもたちの学びをより良く評価するために学校がすべきこと、そしてそれらの能力との重なりを説明していきます」(11~12ページ)

そして、「居場所の感覚を高め、違いを認め合う」については42~44ページで、学習の過程で得ることが求められている(それが得られていないなら、教育の成果はあるのか、と問われてしまうほど大切な!)「思考の習慣」ないし「学習気質」については詳しく68~77ページで説明されています。なお、後者の「思考の習慣」については、日を改めてこのブログで詳しく触れたいと思っています。

 

3)『学びは、すべてSEL(ナンシー・フレイほか著、山田洋平ほか訳、新評論、2023年)では、6~10ページにかけて次のように説明しています。

SELにはさまざまな定義があります。それらは、学校や職場、そして地域での良好な人間関係を可能にする社会的・感情的・行動的、および性格(キャラクター)のスキルに焦点が当てられています。

これらのスキルは、生徒の学業に影響を与えるにもかかわらず、学校教育においては明確な指導対象とはなっておらず、「ソフトスキル」や「個人の特性」と見なされている場合が多いです。しかし実際には、無自覚かもしれませんが、教師はSELを教えているのです。ある教師が次のように述べています。

「私たちがどのように教えるかは、私たちが何を教えるのかと同じくらい生徒に対しては影響があります★。教室における文化が帰属意識と精神面の安全を反映しなければならないのと同じく、教科指導においてもそれらの能力を体現し、強化すると同時に教科指導もそれらの能力によって高められます」

意識するかどうかにかかわらず、教師はまちがいなくこれらの価値観を生徒に伝えているのです★。

まったくその通りで、この部分の認識が乏しいです。もし、意識や認識が乏しいままだと、負の価値観やメッセージが生徒たちに伝わる可能性が大なのに・・・・!

SELのニーズに対処するための取り組みは、1983年の研究にまでさかのぼれます。その研究では能力(コンピテンス)を、「ニーズに対する柔軟で適応力のある反応をつくりだしたり、調整したりする力、および環境のなかで機会を生みだして活用する力」と表現しています。言い換えれば、有能な人々には適応力があり、適切な方法で状況に対応し、所属するコミュニティーのなかでチャンスを求めるということです。こうした力を、私たちは生徒に望んでいるのではないでしょうか。つまり学校は、これら一連のスキルが身につくように力を注ぐべきなのです。

年々、SELに対する考え方は進化してきました。1997年にSELが一連の能力で構成されていると示されましたが、別の研究者たちが以下の能力としてSELを説明しています。

•感情の認識と管理

•前向きな目標の設定と達成

•他者視点の理解

•生産的な対人関係の確立と維持

•責任ある意思決定

•対人関係の諸問題の建設的な処理

 

そして2005年、教科指導とSELの統合を推進することを目的として1994年に設立された非営利団体「CASELCollaborative for Academic, Social, and Emotional Learning」が、相互に関連する五つの認知・感情・行動の能力を次のように定義しました。

自己への気づき(自己認識)――自分の感情、価値観、行動を内省する能力

他者への気づき(社会認識)――別の視点から状況を眺める能力、他者の社会的および文化的規範を尊重する能力、多様性を称える能力

対人関係スキル――仲間や教師、家族、その他の集団との前向きなつながりを築き、維持する能力

自己のコントロール(自己管理能力)――動機づけ、目標設定、計画遂行、自制心、衝動のコントロール、およびストレス対処法の使用を含む一連のスキル

責任ある意思決定――自他の幸福を考慮した選択を行う能力

 

また、最新の書籍では、「ウォレス財団」のモデルによってSELの三領域が定義されています。

認知の調整(自ら考えや行動を観察して、適切に修正する)――注意力や集中力を自らコントロールする「注意制御」、不適切な反応を抑制する「抑制制御」、「ワーキングメモリ(短期記憶)」と「計画性」、および柔軟に物事を考える「認知的柔軟性」

感情の機能――感情の認識と表現、感情と行動の調整、および共感または他者の視点を取得

社会的・対人関係スキル――社会的手がかりの理解、葛藤解決(いじめ問題など、対人関係上のトラブル解決)、および向社会的行動(ほかの人々や社会に貢献する自発的行動)

 こうしたSELの捉え方の進化を踏まえて、この本の著者たちは、http://wwletter.blogspot.com/2023/02/sel.html の図に見られる「統合したSEL」の枠組みを考え出しました。

 

4)『SELを成功に導く5つの要素(仮題)』(ローラ・ウィーヴァ―ほか著、高見佐知ほか訳、新評論、2023年)では、

SELプログラムは学力向上にも役立ちます。学力とSELの統合を目的にして1994年に設立された非営利団体「CASELCollaborative for Academic, Social, and Emotional Learning)」は、SELを次のように説明しています。

「SELは、子どもと大人が人生を意味あるものにするために必要となるスキルを身につけるのを助けるプロセスであり、自分自身や周りの人、そして仕事に対して、効果的かつ倫理的にかかわっていくために誰しもが必要とされるスキルを養ってくれます」(図1-5参照)

27万人近くの幼稚園児から高校生までを対象とした研究のメタ分析(2011年までに発表された213本の研究が対象)では、この主張を大きく裏づける結果が出ました。SELプログラムに取り組む生徒は、SELスキル、態度、行動に大幅な改善が見られ、学力が11パーセント上昇したことが分かりました。また、ある研究グループは、2006年に発表した論文のなかで次のように結論づけています。

「生徒のSELの発達を促すことは、学力向上の基盤づくりに役立つだけでなく、学習者にとって安全で思いやりがあり、包括的な環境を整えるための基盤づくりにも役立つ。それは、社会的責任をもつ市民であるための、普遍的な人間性(人を思いやる、善悪の判断ができる、人を尊重する)を育む環境である」(44~45ページ)

 

 著者によって、SELの捉え方やCASELの5本の柱の解釈の仕方に微妙な違いがあります。CASEL以外のSELの柱ってありますか? また、SELのより分かりやすい説明をご存じの方は、pro.workshop@gmail.com宛に教えてください。

 

2023年6月10日土曜日

絵本や児童文学には、心を動かし(共感し)行動を変える力がある! ~共感3

 共感連載の1と2で紹介した『共感力を育む』(ミシェル・ボーバ著)の第4章のサブタイトルは、「共感力を養うための読書」で、私が一番お気に入りの章です。その有効性は、ほかの章のほとんどでも絵本や児童文学(+映画やビデオ)が使われていることからも分かります!)

 以下、第4章からのメインポイントを紹介します。

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 「子どもにとって読書が重要だということを信じない親は稀だし、世間に広まっているデータもこの見解を指示している。読書力がある生徒はそれが足りない生徒よりも、学校生活がうまくいき、高得点を取り、試験にも合格する。・・・しかし近年、読書は子どもの頭をよくするだけでなく、親切にもするという、驚くべき追加の価値が発見されている」(113~114ページ)

 「読書によって子どもの人生やうまくいくし、共感力も身につく―これはとても簡単なことに思える。しかし、デジタル機器に追い立てられ、何事も高速で動く今日の社会(子どもたちも過密なスケジュールに追い立てられている!)にあっては、子どもに読書の習慣を身につけさせるのは簡単なことではない」(114ページ)

 「映画を見たり、すばらしい本を読んだりした後、非常に心を動かされてしばらくのあいだ身動きもできなかったことはないだろうか? 影響を受けたのは心だけではないと、今では分かっている。誰かの感情を認識すると、私たちの脳は同じ感情を実際に生成すると、データは示している」(119ページ)

 本を読んだり、いい映画を見たりする習慣をつけるためのコツは、「子どもの能力と興味に読む本や映画・ビデオを合わせると共に、それをすることが子どもにとって楽しく意味があるものにすること」としたうえで、「子どもの共感力を培うと同時に、認知的発達を拡大し、学力を高めるために、文学作品や映画を使う方法」(127~8ページ)を紹介してくれています。その主だったものは、

・本を身近に置く。

・読み物は子どもの好み(興味、関心、こだわり、テーマ)に合わせる ~ 教師や親が読ませたいものではなく!

・子どもの読書能力レベルに合わせた本を選ぶ。

・優れた情報源を見つける ~ 司書に教えてもらうだけでなく、自分で本を選べる力を身につけてもらう。選書能力があれば、生涯読み続けることは間違いない!

・読み聞かせはできるだけ長く続ける ~ http://wwletter.blogspot.com/2023/04/blog-post_14.htmlを参照ください。

・家庭映画会(学級や学校映画会も)をする。

・ブッククラブ(読書会)をする ~ 絵本でも、児童文学でも、小説でも、ノンフィクションでもできます(最後のは「共感」を養うにはそぐわないかもしれません)。詳しいやり方を知りたい方は、学校や家庭での(+職場や教員仲間との)ブッククラブのやり方が詳しく書いてある『読書がさらに楽しくなるブッククラブ』がおすすめです。★

 これらをしやすくするためにも、第4章を中心に本全体で、たくさんの絵本、本、ビデオ、映画のタイトルが紹介されていますので(下のURLの「共感2」)、これまでに紹介したSEL用の本と一緒にご覧ください。

https://docs.google.com/spreadsheets/d/e/2PACX-1vS_cqoO1OnMIqJzMTAhIbd-UZZTNLZZY-STwjYf9UJg2XvCN5JHLg-PbphrteMzz_-a8F9eRmbce1Om/pubhtml

(※ なお、共感1と2以外のリストは、島根県立大学松江キャンパス・おはなしレストランライブラリーの司書、尾崎智子さんと内田絢子さんが作成してくれました。)

 

★このブッククラブ、やり方次第では、他のどんな方法よりも効果的かつ効率的な教員研修の方法です。そのためにも、ぜひ本プラス https://tommyidearoom.com/%e3%83%96%e3%83%83%e3%82%af%e3%82%af%e3%83%a9%e3%83%96%e3%81%a8%e3%81%84%e3%81%86%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%95%e3%83%af%e3%83%bc%e3%82%af/ を読んでみてください。 

2023年6月3日土曜日

PBLで世の中の難題の解決・改善に迫る(アプローチ2)

  「車椅子やベビーカーユーザーの優先/専用エレベーター問題」を含めて、世の中の複雑な問題を解決・改善するための2番目のアプローチとして紹介するのは、PBL(プロジェクト学習とプロブレム学習)です。

https://wwletter.blogspot.com/2021/08/wwrw.html および

https://wwletter.blogspot.com/search?q=PBL

https://projectbetterschool.blogspot.com/search?q=PBL

 

 どちらも、SELと(教科を統合する形で)問題解決学習を同時に実現する教え方・学び方です。教科をブツ切りに教えられるよりも、子どもたちははるかに喜ぶ(だけでなく、主体的かつ身につく)学び方です。

まず、次のSELPBLを比較した表をご覧ください。

 これだけでも、両者が密接な関係にあることがお分かりいただけると思います。いずれかを実践するということは、もう一方も同時にしていると言えそうです。★

 https://spencerauthor.com/the-powerful-combination-of-pbl-and-sel/★★のなかには、いくつかの見ごたえのある動画と聞きごたえのあるポッドキャストがあります。(最初に紹介した表も、そこで紹介されていたので知りました!)


 もう10年以上前になりますが、グーグルが2つのプロジェクト(プロジェクトOxygenとプロジェクト・アリストテレス)を通して、SELの重要性を証明しました。

プロジェクトOxygenは、理想のチーム・リーダーの資質を明らかにしたものです。8つの資質がリストアップされましたが、そのほとんどすべてが「ソフト・スキル」、つまりSELのスキルでした。一方、プロジェクト・アリストテレスは、2012年にGoogleが発表した企業向けリサーチです。プロジェクトの目的は、生産性の高い「効果的なチームの条件」を調査して、定義づけることでした。発見したことは、真に重要なのは「誰がチームのメンバーであるか」よりも、「チームがどのように協力しているか」であることを突き止めています。そして具体的には、次のような条件が大切だと!(これらも、ほぼすべてSELのスキルと言えそうです!)

1)心理的安全性 ~ 対人関係においてリスクある行動を取った時の結果に対する個人の認知の仕方。
2)相互信頼 ~ 相互信頼の高いチームのメンバーは、クオリティの高い仕事を時間内に仕上げる。(これに対し、相互信頼の低いチームのメンバーは責任を転嫁する)
3)構造と明確さ ~ 効果的なチームを作るには、職務上で要求されていること、その要求を満たすためのプロセス、そしてメンバーの行動がもたらす成果について、個々のメンバーが理解していることが重要になる。
4)仕事の意味 ~ チームの効果性を向上するには、仕事そのもの、またはその成果に対して目的意識を感じられる必要がある。
5)インパクト ~ 自分の仕事には意義があるとメンバーが主観的に思えるかどうかは、チームにとって重要である。

 ある意味では、ソフトウェア等を中心にした企業の多くは、プロジェクトで仕事を常に動かしていると言えます。その意味でも、その練習として学校にいる間にプロジェクトに取り組む形でプロジェクト学習に取り組むことは価値が大きいわけです。(もちろん、理由はほかにもたくさんありますが、なかでもその筆頭は、従来の学び方では記憶に残らない/身につかないのに対して、プロジェクト学習は生徒たちの主体性の度合いが比較にならないほど高いので、身につく/記憶に残るレベルも格段に高くなります。)なお、PBLとして知られるもう一つのプボブレム(問題解決)学習や、探究学習、デザイン思考は、基本的に同じです。いずれも、探究のサイクル、問題解決のサイクル、デザイン思考のサイクルを回し続ける形で学びます★★★。これらについて詳しくは、『あなたの授業が子どもと世界を変える』『だれもが科学者になれる!』『プロジェクト学習とは』『PBL~学びの可能性を開く授業づくり』を参照ください。どれも、サイクルが描かれる形で説明されています。


SELPBLの表の出典は、https://www.michaelkaechele.com/marriage-of-sel-and-pbl/

★★このサイトの運営者が『あなたの授業が子どもと世界を変える』の著者でもあり、その本の中で、このURLで紹介されている内容が詳しく紹介されています。

★★★1~2回、回す程度ではやらないのと同じです。繰り返し回して、習慣化することが大切です。それほど大切なものですから(ほかの多くのことを忘れても、これだけ身についていたら、世の中ではかなりのことが達成できるぐらいに!)。 なお、デザイン思考については、次回紹介します。