『生徒指導をハックする―育ちあうコミュニティーをつくる「関係修復のアプローチ」』(https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784794811691で、目次が見られます)の第7章「共感力を育む」の扉は、次の文章で始まっています。
「(前略)人というものは、相手の立場から物事を考えてあげられるようになるまでは、 ほんとうに理解するなんてことはできないものなんだよ… その人の身になって、生活するまでは、だよ」
これは、あの有名なハーパー・リーの小説『アラバマ物語』の登場人物、アティカス・フィンチの言葉です(邦訳は、菊池重三郎訳、暮らしの手帖社、2017年、44~45ページ)。
学校内で起こる★多様な生徒指導がらみの案件に、教師を含めた当事者たちは、このことを理解し、かつ実践できているでしょうか? 『生徒指導をハックする―育ちあうコミュニティーをつくる「関係修復のアプローチ」』には、
自分の行動から学ぶこと、自分の行為によって損なってしまったことを修復すること、他者 に共感することは、関係修復のアプローチにおいては重要な要素となっています。「共感」とは、他者の感情を共有したり理解したりすることで、それは三つ(感情的共感、認知的共感、感情の制御)★★で構成されています。三つのうち一つでも欠けると、学ぶ環境を阻む要因になることがあります。(182ページ)
と書いています。
これらのうちのどれかが育っていないと、グループワークがうまく機能しなかったり、いじめが起こったりといった形で症状が現れます。さらに、本では「人に共感することが難しい生徒には、ほかにもさまざまな症状が現れます。たとえば、人を思いどおりに操ろうとする、嫉妬、過ちを認めない、権利意識、他者の視点で考える能力の欠如などです。これらのどれ一つとっても、健全な学びの環境をつくるものはありませんが、(本書で提示している)関係修復のアプローチをうまく実践することができれば、これらのすべてを成長へと導くことができます。幸いなことに、共感力は生まれつき備わっている能力ではありません。共感力は、筋肉を鍛えるように、正しい方法によって育成することができるのです」(184ページ)と述べています。
そして、この本では、共感力を育むための方法として、「ボディー・ランゲージ」「感情を表す表現(=アイ・メッセージ)」「リフレクティブ・リスリング(聞き返し、ないし丁寧な聴き方)」の3つが具体的な事例と共に紹介されていますので(188~196ページ)、ぜひ試してみてください。
★学校内で起こることは、ある意味で学校外で起こる多様な問題行動の縮図的な位置づけにあると言えることを考えると、それへの対処法も、変わらなければならないことを意味します。つまり、その場しのぎの解決(の見せかけ)ではなくて、学校を卒業した後も十分に起こりえる問題への克服の仕方を生徒たちが学ぶ機会と捉えたアプローチです。その第一歩が「共感」という位置づけです。
★★これら3つについて、ここでは触れませんが、「3つの共感」でネット検索すると情報が得られます。
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