2024年8月18日日曜日

新学期の準備ー居場所を感じられ、集中して学べる環境をつくる

  

 近年のさまざまな研究で教室のデザインが学びに大きな影響があることがわかってきています。担任の教師が変えられないものも多くありますが、簡単かつ効率的に教室で子どもたちが学びやすい環境をつくることも可能です。新学期を迎える前に、どのような環境で子どもたちが学びやすいか、学んでほしいか考えてみるのもよいかもしれません。

掲示物

 

 教室が自分たちの居場所だと感じられるように、温かみのある掲示物をすることが推奨されます。適切な掲示物によって、子どもたちの所属意識を高めるばかりでなく、子どもの記憶力によい影響があるとする研究もあります。ただし、掲示物で壁が埋め尽くされたり、鮮やかな色づかいの掲示物が並んでしまうと、逆に集中力を削ぎ、学びに悪影響を与えることもあります。2015年の153の教室を分析した研究では、教室内の20ー50%の壁は空白とどめておくことが推奨されています。

 例えば、子どもの作品、ロールモデルとなる人物のポスターや引用、学習している分野に関連したポスターや地図、学習以外の子どもたちの興味関心のあることなどを掲示するのがよいでしょう。ただし、子どもの学習成果や成績などは掲示すべきではありません。それがモチベーションいなる子どもがいる一方で、恥ずかしく感じたり、やる気を失ってしまったりする子どもたちがいます。

 ほかにも、クラスの価値観や規範、契約(https://selnewsletter.blogspot.com/2024/04/blog-post.html 参照)、目標などを見直し、子どもたちが自分たちでポスターを作り掲示することで、所属意識が高まったり、行動に反映させやすくなったりします。定期的にふり返りの時間を設けたり、新しく追加することもできます。

 

 2021年の研究からは、教室内に自然の光が入ってくること、窓から自然や緑の景色が見えることで、子どもたちのストレスを軽減させ、学習に集中しやすくなる、といわれています。窓からの風景を変えることはできませんが、教室内に植物を置くことでも効果的だとされています。別の研究では、高校の教室に観葉植物を置いた場合に、高校生の、周りの環境への満足度、授業への集中力、授業や教師に対する満足度が高まったという研究結果が出ています。植物を置くことで、日々の変化や、植物を大切に扱うことにもつながり、共感する力も養われます。


 

 毎日の習慣をつくり子どもたちが安心した場所にするために、音楽を使うことも有効です。登校時や授業の始めには明るい曲をかけたり、協同学習やプロジェクト学習のときには、落ち着いたバックグラウンド音楽を流したり、といったように、状況に応じて音楽を取り入れると、子どもたちの授業への取り組みや切り替えがうまくいくことがあります。また、一人ひとりが集中するべき学びのときには、静かな空間を提供することで、子どもたちが、聴覚からどのようにふるまうか理解するためのサインにもなります。


座席とスペース

 

 席替えを行うことで、近くの席にらなければ接点がなかったであろうクラスメイトと友だちになり新しい人間関係を築くことができます。また、意図的に仲の良い友人と席を離すことで、授業の中断が劇的に減るという研究結果もあります。

 小学生の場合には、一列に並んだり、グループになったりするよりも、通常の授業では、大きなコの形で机を合わせることで集中力が高まとされています。もちろん、どのような形で学んでいるかにより、グループになったり、個々に分かれたりできるように柔軟に対応していくことが大切です。

 さらに、どの年齢でも、日中、授業の合間に身体を動かせるスペースがあることが大切です。子どもたちが積極的に身体を動かせる機会を与え、脳の休息のための時間をとるようにすることで、学びへのエンゲージメントや集中力を高め、よりよい学習効果が期待できます。


落ちつくためのコーナーを設ける

 

 限られた教室の空間のなかでも、感情が抑えられない場合でも、安心できる場所をつくることが大切です。学校内外で起きたことに関わらず、だれにでも大きな感情に飲み込まれてしまうことはあります。そんなときのために教室の一角で、ほかの人から距離をおいて一人になれる場所があるとわかっていることで、日々安心して学びに向かえるでしょう。そこには、視覚、触覚、聴覚、嗅覚など五感をつかって落ち着きを取り戻せるようなアイテムを用意して、必要に応じて使えるようにしておくのもよいでしょう。また、どのようなときに使う場所か、そこにいる人に対してほかの人はどのようにふるまうべきかクラスで事前に考えておくのがよいでしょう。



参照

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