SELにおける目標設定は、生徒が自分自身を理解し、前向きな習慣を築き、より良い意思決定を行う能力を育むことを目的としています。様々な活動が、対象年齢、扱うテーマ、費やせる時間等に応じてあります。しかし、目標設定は大切なスキルだと認識しても、イベント的に実施するだけではそれほど効果はありません。ぜひ長期的、計画的、段階的に進めていってください。
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興味をもった活動について調べられるように、オリジナルの活動名を英語のまま残します。
●小学校低学年で取り組める活動
目標を「達成したいこと、それを実現するために頑張ること」として明確にし、視覚的で具体的な活動を織り交ぜながら実施する。
・Three Stars and a Wish(3つの星と1つの願い)~ 現在得意なこと(強みや成功体験)を3つ(星)挙げ、改善したいことや挑戦したいこと(願い)を1つ挙げます。教師は、その「願い」を達成するための簡単な一歩(行動)に落とし込む手助けをします。
・Goal Crowns/Trackers(目標クラウン/トラッカー)~「靴ひもを結ぶ」「新しい本を1冊読む」など、小さな目標を紙の王冠や簡単な進捗表に描いたり書いたりします。目標を達成するごとに色を塗ったりシールを貼ったりして、視覚的な達成感を得ます。
・Picture Goals(絵で表す目標)~ 文字が読めない・書けない生徒のために、達成したい目標の絵を描いてもらいます。教師が簡単な言葉を添えることで、目標を具体化します。
・Bucket Lists(バケットリスト)~ 短い期間(例:1か月)でやってみたい楽しい活動や小さな目標のリストをクラスまたは個人で作成します。目標をチェックしていく楽しさを感じさせます。
●小学校中学年以上で取り組める活動
目標の構造と振り返りのプロセスを導入し、学習面、個人的な側面、社会的な側面など、目標の種類を区別し始めます。この時期からSMARTの要素を教え始めます。
・Goal Ladder/Staircase(目標のはしご/階段)~ 描いたはしごや階段の一番上に大きな目標を書き、下の段から順に、目標達成に必要な「小さな行動ステップ(中間目標)」を書き出します。大きな目標を分割する方法を学びます。
・Introduction to SMART Goals(SMARTゴールの導入)~ 具体的
(Specific)、測定可能 (Measurable)、達成可能 (Achievable)、関連性 (Relevant)、期限がある (Time-bound) というSMARTの要素を、子どもにも分かりやすい言葉で教えます。例:苦手な科目の成績を上げる、特定のスポーツ技術を習得するなど。
・Goal-Setting Journal(目標設定ジャーナル)~ ノートなどに目標を書き、毎週の進捗状況を記録し、何が助けになり、何が障害になったかを振り返る時間を設けます。
・Vision Boards (ビジョンボード) ~ 雑誌の切り抜きや写真、言葉などを使って、将来や年間の目標を視覚的に表現したコラージュを作成します。目標を具体的で魅力的なものにします。
・Growth Mindset(成長マインドセット)~ 知識や能力は、努力と献身によって伸ばすことができる、という考え方に焦点を当てた授業やディスカッションです。具体的な例:固定マインドセットの言葉=ネガティブな言葉(例:「私には才能がない」)を、成長マインドセットの言葉=成長につながる言葉(例:「理解できるまで練習し続けよう」)に置き換えます。努力こそが成功の鍵であること、そして失敗から学ぶことの大切さを理解させます。(参考文献: 成長マインドセットに関しては、 bit.ly/4nwpSSF のなかにある『親と教師のためのマインドセット入門』を資料請求)
・Wheel of Fortune(生の輪)アセスメント~ 生徒たちは円を描き、それを「学校」「友人」「スポーツ」「趣味」「家族」などの様々な人生の領域を示すいくつかに分割します。そして、各領域について「改善したいこと」を目標として設定し、その目標を達成するための具体的なステップや、途中で直面し得る障害(困難)について話し合います。人生の様々な側面を考慮に入れた、包括的(ホリスティック)な目標設定を行うことがこの活動の意図です。
●中学生以上で取り組める活動
自己調整学習、長期的な計画、アカウンタビリティー(結果に対する責任)に焦点を当て、目標を将来のキャリアや進路と結びつける活動を行います。
・SMART Goal Contracts/Conferences(SMARTゴール契約と面談)~ 目標、行動ステップ、中間チェック、予想される障害、そして協力者(教師や保護者など)を明記した公式な目標設定シートを作成します。教師と生徒が一対一で面談し、計画を具体化することで目標への責任感を高めます。
・Backward Goal Setting(逆算式目標設定)~「行きたい高校の特定のプログラムに入る」「大きな買い物のためにお金を貯める」など、長期的な目標をまず設定します。次に、その目標を達成するために必要な中間目標を年ごと、月ごと、週ごとに遡って決定します。これの異なるバージョンとして、野球の大谷翔平選手が高校時代に取り組んで有名になった「目標のマンダラチャート」があります。
・Letter to My Future Self(未来の自分への手紙)~ 1年後、または数年後の自分に向けて、現在設定している目標や夢、そして励ましのメッセージを書きます。手紙は保管し、指定された期日に返却することで、自己の成長を振り返る貴重な機会とします。
・Goal Reflection and Revision(目標の振り返りと修正)~ 定期的な振り返り活動を通じて、目標を達成できたかどうかだけでなく、そのプロセスを分析します。挫折やなかなか目標達成ができないことを学びの機会と捉え、必要に応じて計画を修正する柔軟性や適応力を養います。
・Model the Process(プロセスを実演して見せる)~ 教師が、自分のシンプルで個人的な目標を共有します。そして、その目標を達成するための具体的な行動手順を説明し、どのように進捗を記録し、途中の困難をどう乗り越えたかを生徒たちに示します。
・Celebrate Milestones(小さな達成を祝う)~ 最終的な目標の達成だけでなく、そこに至るまでの小さなステップ(ミニゴール)の達成も認め、積極的に称賛します。
モチベーションを高く保つために、継続的な成功体験を積み重ねさせます。
・Make it Public (with
Consent)公開して結果責任をもたせる(本人の同意のもとで)~ 目標をGarden of Goals「ゴールの庭」★や掲示板などに展示(公開)することで、目標への結果責任を高めることができます。ただし、必ず生徒本人の同意を得て、共有しても問題ない目標のみを公開するようにします。(
周囲の目を意識することで自発的な行動を促しますが、プライバシーや心理的な安全性に配慮します。)
★「Garden of Goals(ゴールの庭)」とは、成長と育成というガーデニングの概念を使って、子どもたちが自分の目標を設定し、追跡するための視覚的でクリエイティブな活動のことです。これは、特に「成長マインドセット」をテーマにした授業や新学期の活動として人気があります。
活動の概要
- 目標を「種」にする:
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生徒は、達成したい目標(学業、行動、個人的なスキルなど)を考えます。
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その目標を、「植物」や「花びら」の形に切り取った紙に書き込みます。
- 行動計画を「水やり」にする:
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目標を達成するために必要な具体的な行動やステップを、「水やり」「太陽の光」「肥料」などに見立て、別の小さな紙や花びらに書き込みます。(例:目標「数学の成績を上げる」→ 行動「毎日20分復習する」「分からないところは先生に質問する」)
- 掲示板で「庭」を作る:
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生徒一人ひとりが作った目標の「花」や「植物」を、教室や廊下の掲示板に集めて展示します。これが「ゴールの庭」になります。
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この庭には、「A Garden of Goals (ゴールの庭)」や「We're growing! (私たちは成長している!)」といったタイトルがつけられます。
- 成長を祝う:
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定期的に自分の「植物」の成長(進捗)を確認し、達成できた行動や目標には色を塗ったり、チェックマークをつけたりします。
この活動のねらい
- 視覚化: 自分の目標が「目に見える形」になることで、意識しやすくなる。
- 成長思考: 植物がゆっくりと水を吸い、太陽の光を浴びて成長するように、目標も努力と時間をかけて達成していくものだ、という考えを学ぶ。
- 責任感: 自分の目標を公の場に展示することで、目標達成への責任感や意欲が高まる(もちろん、公開には本人の同意が必要)。
関連記事:https://selnewsletter.blogspot.com/2025/01/blog-post.html
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