心身の健康と日課についてふり返る
アメリカでは、新年度を迎えて数週間が経ちました。中学校最終学年8年生の子どもが先日、保健体育の時間に記入した今年一年の心身の健康改善のための行動計画の紙にサインをするように求めてきました。生徒と教師だけでなく、保護者のサインを必要とするのはとてもよい方法だと思います。そうでなければ、思春期の中高生のなかには、なかなか保護者と共有しないこともあります。
「行動計画」と題された紙には、
心身の健康のための目標
その目標を達成するためにどのような行動をするのか(〇曜日、時間、場所を記入)、
その行動をとることで自分にとってどのようなよいことがあるのか、(個人的な満足、ストレス軽減、身体を鍛える、態度改善、やる気の向上、人間関係の向上、リスクの軽減、その他、のなかから該当するものを選ぶ)
一生懸命取り組むという宣言
自分と保護者の署名
やる気のでる言葉
が記入されていました。
一人ひとりの子どもが、自分の日々の生活をふり返り、どのようなことに関心をもち、どのような行動を取りたいと思っているのか、心身の健康の維持、向上について考える時間をとることは、感情や自己認識、ストレス改善について考えるうえでとても有意義だと思います。
日々の学びと、大きな夢、日常生活をつなげる
さらに一歩進んで、未来の自分を思い描き、日々の生活や学びとのつながりを考える機会を与えることで、学びに大きな意義を見出し、やる気を高めることにつながります。近年の脳科学の研究では、中高生は、ものごとを大きく捉えることができるようになり、社会や人の役に立ちたいという気持ちを内在しているそうです。中高生の脳は、自分について自由な思考をする部位と意識的に集中して思考する部位の調整がうまくできるように発達している段階で、このつながりを強めることが、成人後のアイデンティティの形成や自己認識、メンタルヘルスとも関連していると言われています。
未来の自分を想像し、自分がどのようなことに興味があるのか考えるために、ある研究では、科学の時間に9年生に次の2つの質問をし、短く回答してもらいました。
1.世界は不公平です。だれもが、さまざまな方法で世界をよくしたいと思っています。飢餓を減らす、偏見を減らす、暴力や病気を減らす、そのほかにも世界は、いろいろな方法でよくなります。あなたは、どのようになったら世界がよくなると考えますか。
ー回答例は、「差別をなくしたら、暴力や戦争が減る」「適切なエネルギー資源があれば、飢餓問題が解決できる」といった簡潔なものです。ここでは、生徒の興味関心のある分野が示されます。
2.世界に貢献するためには、あなたは、将来どのようなことができるますか。
ーある生徒は、「遺伝子組み換え作物をつくり、食物を増産して、飢餓を減らす」と答えました。また、エネルギー問題に関心のある生徒には、環境工学の基礎となる単元は関心が高いものになるでしょう。
研究結果によると、この、一授業時間内でできる簡単な課題で、生徒の成績が向上したそうです。また、生徒が「効率のよい農業経営の設計について考えるために数学を学ぶ」など、自分の将来の目標とつながった学ぶ意義を考えるときには、生徒はより我慢強く課題に取り組み、より多くの問題に挑戦するとの研究結果もあります。自分のなかの興味関心を引き出し、目標をもつことで、授業へのやる気や取り組みが改善します。
さらに、学びと自分の夢や目標をつなげるだけではなく、学んだことが自分や家族、地域にとってどのように役に立つか考えさせることもやる気の向上につながります。
「日常生活で自分や友人、家族にとって学んだことはどのように役に立ちますか?」
「このトピックについての学びは将来設計にどのように関連しますか?」
のような、学びを日々の生活と関連づけて考えることで、科学への関心が高まり、成績が向上します。研究では、この成績の向上は、成績の低い生徒にとくに顕著だったということです。
小さな日々の目標をたてることで日々のストレスや感情との向き合いかたを考える機会をもつとともに、スケールの大きな目標や夢と日々の学びとのつながりを考えさせ、言語化させることで、学びのオーナーシップを育むことになり、日々の学びをより意義のあるものにしていくことができます。ぜひ、目標や夢について考え、自分についてふり返る時間をとってみてください。
参照:To Motivate Teens, Ask Them “Who’s Your Future Self?” | Edutopia
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