2026年6月6日土曜日

どんな瞬間にも私たちは選択している

呼吸が導く落ち着き――教師のマインドフルネス実践

 ときどき、教育者としての私たちの仕事にとってあまりにも貴重で、「これはぜひ皆さんと共有しなければ」と思わせるようなリソース(参考になる資料や方法)に出会うことがあります。Meena Srinivasan(ミーナ・スリニヴァーサン)の新刊『Teach, Breathe, Learn: Mindfulness In and Out of the Classroom(教え、呼吸し、学ぶ教室の内と外で育てるマインドフルネス)』は、まさにそのような一冊です。

この本は、私が全国のあちこちで耳にする切実な願いに応えています――喜びを土台にし、思いやりから生まれ、今よりももっと人間的で、もっとゆっくりとした働き方・教え方を求める声です。ミーナがこの読みやすい本の中で誠実かつ惜しみなく提供しているのは、その願いに向かうための「道しるべ」です。さまざまなマインドフルネスの実践を紹介し、それらを私たちの日常や教室にどのように取り入れられるかについて、豊富な参考になる資料や方法を示しています。学校でマインドフルネスを取り入れたいと考えている人なら、必ず読むべき一冊です。

 レッスン(指導)案がとても役に立つことや、生徒たちの言葉がこのテーマに彼らの視点をもたらしてくれることも確かですが、私が最も心を動かされたのは、この本に織り込まれている教師としてのミーナの物語です。それこそが、この本を特別なものにしています。

彼女が最初のほうで語るエピソード――自分の気分が生徒に影響していると気づいた瞬間――を読んだとき、私は一気に引き込まれました。共感できたのです。彼女に何が起きたのか、どうやって「手一杯で圧倒されている教師」というあまりにもよくある状態から抜け出し、別のあり方へと変わっていったのかを知りたくなりました。彼女がどんな物語を歩み、どんな方法を使ってきたのかを知りたかったのです。それを知るには、ぜひ本を読んでみてください。

その前に、私が行ったインタビューを通して、ミーナがどんな人なのか、そしてこの本がどんな内容なのかを少しだけ味わっていただきたいと思います。これが、あなたが『Teach, Breathe, Learn』を手に取るきっかけになれば嬉しいです。

 

エリーナ: この本は誰のために書いたのですか? 誰に読んでもらいたいですか?
ミーナ: この本は、私の心からの贈り物です。マインドフルネスを自分の生活や若い人たちの生活に取り入れたいと願うすべての人に、ツールやリソース(方法や資料)、そしてインスピレーションを届けられたらと思っています。本書には、心のあり方を変えるマインドフルネスの実践の「効果」と「取り組みやすさ」を示すエピソードや具体的な方法の紹介がたくさん詰まっています。教師としての視点から書いてはいますが、内容は誰にとっても役立つものです。特に、教師、保護者を中心に子どもに関わる人、そして教育現場で働くすべての人に読んでほしいと思っています。

 

エリーナ:マインドフルネスは、教師や管理職にどのように役立つと思いますか?

ミーナ:私たちが「やさしい気づき」とともに「今この瞬間に戻る」練習を重ねれば重ねるほど、実際に「今ここ」にいることが容易になります。そしてこれは、教師にとって欠かせない資質です。
 おそらく外科医を除けば、教師ほど一日の中で多くの判断を下す職業はありません。教室で求められるのは、広い視野と集中した注意を同時に保つことです。

マインドフルネスは、まず自分自身と深くつながることを可能にし、その結果として他者とも本物のつながりを築けるようにしてくれます。校長や学校リーダーという役割は、とても孤独になりがちです。だからこそ、学校をうまく導くために必要な強い人間関係を築くうえで、マインドフルネスの実践は大きな助けになります。私の本で紹介しているマインドフルネスの基盤には、「相互依存」という考え方があります。長年、教師や同僚と仕事をする中で、この相互依存を意識することがとても役に立つと感じてきました。学校という場は、多くの要素がそれぞれうまく機能して初めて成り立つものです。どこか一つがうまく働かなくなると、学校全体に影響が及びます。学校の中では、立場の違う人たちの間で摩擦が生まれることもあります。しかし、管理職、保護者、スタッフ、生徒――そのどれが欠けても学校は成り立たないのだと理解できれば、私たちはもっと感謝と理解をもって、コミュニティーの中の他者と関わることができるようになります。

 

エリーナ:マインドフルネスがあなたの私生活や仕事にどんな役割を果たしてきたか、何かエピソードを教えてください。

ミーナ:マインドフルネスは、反射的に反応するのではなく、状況に応じて自ら選んだ関わり方ができるようにしてくれます。私が「マインドフルネスって本当に効くんだ!」と強く実感した最初の教室での出来事は、とても印象的でした。私は当時、インドのニューデリーにあるインターナショナルスクールの中等部で、学習支援クラスを担当していました。クラスには世界中から来た生徒がいて、それぞれに異なる特別なニーズがあり、私はその全員を支援する役割を担っていました。ある日、クラスにもっと支援を入れるためにアシスタントを採用することを伝えたとき、アメリカ出身のある男の子が突然こう叫んだのです。「インド人じゃなきゃいいけど!」その瞬間、胸がぎゅっと締めつけられました。私はその学校で数少ない有色人種の教師であり、インド系の外国人教師は私だけでした。彼の言葉は深く突き刺さり、怒りと悲しみが一気にこみ上げてきました。

 マインドフルネスを実践する前の私なら、彼の発言は受け入れられないと強く言い返していたでしょう。でも今の私は、マインドフルネスのおかげで感情の自己調整ができるようになっていました。胸の中に湧き上がる感情に気づき、いったん立ち止まり、深呼吸をしました。そして生徒を叱りつけるのではなく、丁寧に「どうしてインド人のアシスタントが嫌なの?」と尋ねたのです。

彼は、インドのアクセントがとても聞き取りにくく、それが学習を難しくしているのだと説明しました。その言葉を聞きながら、彼に私のインド系の背景を傷つける意図などまったくなかったことに気づきました。私の目の前にいたのは、学ぶことに苦労している一人の少年であり、自分の意思でインドに来たわけではなく、父親の仕事の都合で連れてこられた少年でした。彼はただ、フラストレーションを抱え、自分の気持ちを理解してほしいと願っていたのです。その瞬間から、私は生徒を本当に理解するために、必ず対話をすることを自分の方針にしました。生徒を理解して初めて、私は彼らを本当に教えることができるのだと気づいたのです。

 

エリーナ:学校では、マインドフルネスを「集中力を高めて学力を上げるための方法」として語られることがあります。テスト準備のために「マインドフルネス」を使う教師もいると聞きます。こうしたアプローチについてどう思いますか? あなたの本で提案している内容と一致しますか?

ミーナ:確かに、マインドフルネスは生徒が集中したり自己調整したりするのを助けることで、学びやすい環境をつくることができます。しかし、私が若い人たちにマインドフルネスを伝えるときの目的は、決してそこではありませんでした。マインドフルネスが力をもつのは、どんな瞬間にも私たちには選択肢があるということを気づかせてくれるからです。よりよい行動を選ぶことができ、そしてそのための具体的な方法がある――それによって、私たちの生活にもっと平和や愛、喜びをもたらすことができるのです。

 

エリーナ:読者があなたの本を読んで、何か一つ行動を起こすとしたら、どんなことを望みますか?

ミーナ:私たちが他者に提供できる最も価値あるものは、私たち自身の幸せです。読者の皆さんには、本を読み終えたあと、自分自身の幸せを育て、深めていくために、個人的なマインドフルネスの実践を始めてほしいと願っています。大切なのは、何を教えるかだけではなく、どのように教えるか、そしてその背後にある愛や喜びです。それこそが、生徒に最も強く残る印象になるのです。

生徒にマインドフルネスを伝える前に、まず私たち自身が、実践を通してマインドフルネスを「体験的に理解する」必要があります。自分の実践を育て始めると、それが教室でのふるまいや、他者との関係にどのように影響するかが見えてきます。マインドフルネスは、すでに私たちの内側にあるレジリエンス(しなやかさ)にアクセスする方法を提供してくれます。マインドフルであるために、1日の時間を増やす必要はありません。『Teach, Breathe, Learn』は、日常生活にもっと気づきと愛、そしてレジリエンスをもたらすための実践的なガイドなのです。

 

エリーナ:マインドフルネスに興味があり、もっと学びたいと思っている人がいたら、本を読む以外に何を勧めますか? どこから始めればよいでしょうか?

ミーナ:私が強くおすすめしたいのは、マインドフルネスのリトリート(合宿形式の研修プログラム)に参加することです。世界中でさまざまなプログラムが提供されています。また、Mindfulness in Education Network(教育におけるマインドフルネス・ネットワーク)のメーリングリストに連絡し、希望する期間や場所などを伝えるとよいでしょう。きっと、想像以上に多くの選択肢があることに驚くはずです。

この投稿について、あなたの考えや疑問・質問や提案をぜひコメント欄で共有してください。

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 日本でもマインドフルネス関連の本の売れ行きは結構なものです(社会的なニーズはあるということだと思います!)。しかし、教育関係者対象のマインドフルネスの本はまだ知りません。すでに出ていたら、ぜひ教えてください。お願いします。(紹介者も10年ほど前にこの本を読んだ時、エリーナさんと同じ気持ちをもったので、訳させてくれる出版社を教えてくれたら、もっとうれしいです!)

出典・https://www.edutopia.org/blog/just-breathe-when-teachers-practice-mindfulness-elena-aguilar

 この投稿は、『教師のためのアート・オブ・コーチング』の著者のエリーナ・アギラーさんによって2014年の9月25日に書かれたものです。ちなみに、彼女は、夏休みや冬休みの前に教育関係者が読める本を何冊か一緒に紹介する以外、自分の本も含めて、本の紹介をすることがほとんどない人です! 今回は、そういう人が紹介したかった本ということになります。