2026年7月4日土曜日

EQ=最も見過ごされている教師とリーダー(管理職)の力

リーダーは、教師を支え、学校文化をより良くするために必要な感情面の知性(EQ)を育てることを優先することができます。

 自分を学校のリーダーと捉えていない方は、自分が教える授業をイメージしながらお読みください。すべての教師は、生徒たちとの関係においてはリーダーですから。

 

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学校のリーダーの一人として、私はいつも学校のリーダーシップチーム(校長・副校長と、教務主任・学年主任・教科主任等で構成されるメンバー)と、学校のデータ、教え方の改善、そして教員研修について話し合っています。これらの対話は、生徒の学力を高めるために欠かせないものですが、しばしば重要な点が抜け落ちています。リーダーシップチームは、教職員の感情面の知性(EQ)について、ほとんど話し合うことがないのです。

過去5年間、数学の授業改善のリーダーとして働く中で、私は次第に、リーダーとして成功するために重要なのは技術的なスキルよりも、むしろ感情面での気づきであると考えるようになりました。どれほど有効なカリキュラムがあり、どれほど詳細な年間計画があり、どれほど確かな評価・管理の仕組みがあったとしても、学校のリーダーに自己理解や共感が欠けていれば、教師を支えることはできません。そして教師が支えられていると感じられなければ、教職にとどまり続けることが難しくなるのです。

 数年前、私はダニエル・ゴールマンの感情面の知性(EQ)に関する本★を読みました。そのおかげで、学校で私が目にしていた多くの出来事に言葉を与えることができました。すなわち、教師たちが、支えられていない、見てもらえていない、そしてリーダーが高い期待を保ちながら支える方法を知らないために感情的に疲れ果ててしまい、職場を離れていくという現実です。

 彼の著作の中で、感情面の知性(EQ)は五つの側面に分けられています。自己理解、自己調整、動機づけ、共感、そして社会的スキル★★です。五つすべてが重要ですが、私はその中でも、自分がリーダーとして成長するうえで最も大きな影響を受けた三つに焦点を当てたいと思います。

 

自己理解の重要性

最初の側面である自己理解は、私のリーダーとしてのあり方を最も大きく変えたものです。リーダーとしての一年目、私は同時に父親としても新しい生活を始めていました。眠れない夜、さまざまな不安、そしてまったく新しい役割を学ぶ重圧を抱えながら過ごしていました。学校に入るとき、いら立っていたり、気が散っていたり、反応的になっていたりする日がありましたが、自分ではそれに気づいていませんでした。やがて気づいたのは、私が意図したかどうかに関わらず、部署のメンバーは私の気分に反応していたということです。

私にとって、自己振り返りは、会議や授業、コーチングの会話に入る前に、自分の感情の状態を意図的に整えるための鍵となりました。私はより落ち着き、よりその場に集中し、反応するのではなく聞くことに注意を向けられるようになりました。その変化は部署全体に広がっていきました。

こうしたことを踏まえると、自己理解がまず最初に必要だと認識しました。自分自身の感情の状態を振り返って整えていなければ、困っている教師に共感をもって接することはできませんし、自分の存在が場を落ち着かせているのか、逆に緊張を高めているのかを理解していなければ、疲れ切った教職員を支えることもできません。

自分自身の自己理解を高めることを優先し始めるとき、朝、学校に向かう際にどのような感情をもち込んでいるのか、それが教職員にどのような影響を与えているのかを振り返ることが役に立ちます。私は振り返るだけでなく、生徒や教師と関わる前に気持ちを整えるための時間を朝に確保することが有効だと感じました。

これは続けていくべき取り組みであり、誰にとっても簡単にできるものではありませんが、取り組む価値があります。私が見てきた最も効果的なリーダーは、常に完璧な答えをもっている人ではありません。自分自身をよく理解しているからこそ、自分自身が障害にならないようにできる人なのです。

 

共感することは、期待を下げることではない

私は幸運にも若い頃から共感を育むことができたリーダーですが、同僚の中には共感することは期待を下げることと同じだと見なす人がいることに気づきました。実際には、最も力のあるリーダーは、高い期待と共感の両方を同時に保つことができます。

教師は振り返りを求めていますし、多くの教師は本気で成長したいと願っています。ただし、成長の過程で、恥をかかされたり、軽んじられたり、支えられていないと感じることは望んでいません。私が学んだのは、教師が教え方の指導を十分に受け入れるためには、それを行う相手に対して心理的に安心できることが必要だということです。

その安心感は、話を聞き、負担のかかっている点を理解し、教師をまず人間として見てから職員として見ることができるリーダーから生まれます。ときには、共感とは単にタイミングを見極めることを意味します。教師が直接的な指導を必要とする場面もあれば、教え方の話に入る前に5分だけ話を聞いてほしい場面もあります。その違いを理解できるリーダーは、より強い関係を築き、より強い部署をつくります。

 

社会的スキルは学校文化に影響する

感情面の知性(EQ)を備えた一人のリーダーが、部署の文化をまったく別のものに変えることがあります。私は、強い社会的スキルを示す小さなやり取りが、時間をかけて文化を形づくっていく様子を実際に見てきました。リーダーは、難しい授業のあとに短い声かけをしたり、成長を認めるメッセージを伝えたり、新しい教え方に挑戦をした教師を研修の場で公に称えたりすることで、教師が教室で直面している困難を理解し、その努力を誇りに思っていることを示すことができます。

そうした瞬間は取るに足らないものに見えるかもしれませんが、積み重なることで、人々が大切にされていると感じられる文化をつくります。これは、教師の疲労が高まり続けている今日の教育において、特に重要です。学校のリーダーとして、教師がどれほど努力しているかを知るだけでなく、それを積極的に認め、困難な時には支え、成功をチーム全体で祝うことが大切です。

強いリーダーシップには感情面での気づきが必要です。学校は人間関係の上に成り立っているからです。データやカリキュラム、教え方が重要でないということではありませんが、教師が感情的に疲れ果てている場合、それらだけでは長期的な成功を保証できません。

教師が学校にとどまり、生徒が成長する学校は、多くの場合、リーダーシップが単に仕組みを管理することではないと理解している人によって導かれています。リーダーシップとは、人間関係を支え、誰かに支えられている、見てもらえている、そして安心して成長できると感じられるようにすることなのです。

 

出典・https://www.edutopia.org/article/importance-emotional-intelligence-school-leader

(数学と理科教育に10年以上携わる中で、執筆者のマシュー・スティーン先生は教師として、そしてニュージャージー州カムデンのチャーター・スクールで教え方の改善を担うリーダーとして働いてきた。現在のMath Instructional Supervisor=数学指導監(日本の数学科の教科主任よりも多くの権限をもつ)になる前は、58年生の教師リーダーとして、カリキュラムづくりや問題解決の取り組みに力を入れていた。)

 

★『EQ こころの知能指数』を皮切りに、彼のEQ/感情知性に関する本は多数翻訳されています。ぜひ、読んでみてください。ビジネス関係者は結構読んでいますが、教育関係者のEQ/感情知性への関心はあまり高くない状態が続いています。

★★EQの5つの要素を、SELの5つの要素と対比すると面白いです。

self‑awareness(自己理解) ↔ self‑awareness(自己理解)で一致していますが、残りの4つは若干のズレがあります。以下、左側がEQで、右側がSELです。

self‑regulation(自己調整) ↔ self‑management(自己管理)

motivation(動機づけ)    ↔ responsible decision‑making(責任ある意思決定)

empathy(共感)      ↔ social awareness(他者理解)

social skills(社会的スキル)↔ relationship skills(人間関係のスキル)