2025年2月1日土曜日

生徒に学びの振り返り方を教える

 生徒が目標を設定し、学習に取り組んだ後(ないし、取り組んでいる最中に)、効果的に振り返られるようになるためには、取り組んできたこと(いること)やその過程を見直す機会が必要となります。

 『成績だけが評価じゃない』の著者のサックシュタインは、次のように書いています。少し長くなりますが、大事なことが書かれているのでそのまま引用します(84~85ページ)。

振り返りとは、学習に関する態度や性質/気質(disposition)★であると同時に、自己認識の核ともなる部分です。生徒には、「振り返り」とは何かを明確に伝え、なぜそれを行う必要があるのかについて説明します。生徒に対して「振り返り」という言葉を使うときには、それが意味している(期待されている)ことを全員が同じく理解できていなければなりません。

 単に「振り返り」とは何かを明らかにしておくだけではなく、そのなかで気づいたことの先にある次のステップを生徒がはっきりと認識できるようにすることが大切です。苦労したことやうまくいったことがはっきり分かるようになったら、「さて、次はどうしようか?」と問いかける必要があるのです。つまり、苦労したことで学習者としての自分はどうなったのか? 自然任せではできない事柄をやり遂げるための忍耐力をどのようにして身につけるか? さらには、どうすれば「自分自身の振り返りを振り返る」ことができるか? といった問いかけです。

 生徒に効果的な振り返りをしてもらうためには、まず振り返りを行うプロセスについての「足場かけ」を行う必要があります。ルーブリックと目標達成のための基準を用いた形式的な課題のように、振り返りを教え、練習し、具体的なフィードバックによって評価される必要があります。

私の経験では、ほとんどの生徒が、振り返りには学んだ内容をある程度特定することが含まれていると理解しています。一方、学習経験についてよかったことや、気に入らなかったことを共有する機会だと勘違いしている生徒も少なくありません。共有すること自体は悪くはありませんが、私がここで取り上げたいのはそういう意味ではありません。生徒は、以下の三点について書く(いたり、発表したりする)必要があるのです。

(1)課題で求められていることについての自分の理解

(2)自分がどのように課題を完成したかの説明

(3)ルーブリック(評価基準)に照らしあわせて、課題をどのレベルで完成できたのかについての振り返り

 

取り組んできた学習のなかから取り出した証拠を使って、自分がこれまでどのように学んできたのかについて理解している事実を示さなければなりません。とくに三番目については、生徒がもっともフィードバックを必要とする部分です。

 ここまで読まれて、あなたがこれまでに捉えていた「振り返り」の理解や実践と同じですか? それとも違っていましたか? どんなところは修正しよう/できると思われましたか?

 このあと、サックシュタイン氏は、生徒や卒業生の振り返りに関する取り組みや感想の実例を5つ紹介してくれています。生徒の実際の振り返りの記録や、それを体験した人たちの声ほど大切なものはないからです。あなたは、このように「振り返り」に関して生徒たちの声を聞いた/求めたことはありますか? 簡単なことですから(たとえ、卒業生であっても!)、すぐに尋ねてみてください。その際、大切なのは本音で応えられる状況をつくることです。本音が言えない/書けないと、振り返りの意味はほとんどありませんから。

 そしてサックシュタイン氏は、振り返りについて、次のようにまとめています(94~95ページ)。

 振り返りの目的は、生徒が設定した目標を取り上げて、使った方法について説明し、それがどのようにうまくいったのか(あるいは、いかなかったのか)、またその理由について論じながら、はっきりと具体的に自分の学びについて語ることです。

このような情報が最適となるデータ収集につながり、現在やこれからの学びを強化するフィードバックhttps://selnewsletter.blogspot.com/2024/12/blog-post.htmlを可能にします。また、生徒の声を尊重して、それぞれの生徒が適切なペースで進んでいけるような、情報提供に関する評価を今後開発する際にも役立つでしょう。

 振り返りについての『SELを成功に導くための五つの要素』(89~90ページ)からの情報も紹介します。

 この本の著者たちは、ロビン・ジャクソンの「振り返りは、私たちの思考や行動をよい方向に変えるためにもっとも効果的な方法です」をまず紹介しています。ちなみに、これは約100年前にジョン・デューイが言っていたことと同じです。

「振り返り」(本書のなかでは「自己を見つめる」とされています)というのは、以下のようなことができる力を養うことです。

(1)自己の内面へと目を向け、自分の思考や行動、またそれらを引き起こすきっかけ(トリガー)が何であるのかに気づくこと。

(2)気づいたことを振り返ること。

(3)意志に基づいて行動を選択すること。

(4)必要に応じていつもの行動を変えること。

 日本ですでに広範に起こっている「振り返り疲れ」https://note.com/daisukesensei/n/n57c6eeb73208のなかで行われているのは、これら4つのうちのどれでしょうか? 4つすべては行われているでしょうか? あまりにも、(2)だけで捉えていないでしょうか? 残りの3つをしっかり押さえるには、どうしたらよいでしょうか?

他の関連情報:①https://wwletter.blogspot.com/2023/11/blog-post.html

       ②『「考える力」はこうしてつける』 ~ 本全部が振り返りに関する本と言えます。原書のサブタイトルは、Developing Strategies for Reflective Learningですから。別な言い方をすると、「指導と評価の一体化」を実現するための本です。

 今回は、https://selnewsletter.blogspot.com/2024/11/blog-post.html の第5弾です。

★これについては、次回の第6弾で詳しく紹介します。

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