2024年6月15日土曜日

読み聞かせを、SELスキルの育成に活用する(+SELの絵本リスト)

 小学校では、生徒の聴解力、背景知識、語彙力、言語構造の理解など、さまざまな読み書き能力を高めるために、対話読み聞かせ★がよく使われています。しかし、読み聞かせは学業面での利点だけでなく、SELスキルの育成にも役立ちます。

実際、教師はSELをテーマにした本の読み聞かせを朝の会、国語の授業、教科横断的な学習に組み込むことができます。

読み聞かせは、SELスキルと国語の力を同時に向上させる

研究によると、SELは生徒の心の健康を支え、積極的な行動を増やし、学業成績を強化することが分かっています。SELはまた、学業と個人的な場面の両方で日常生活に応用できる実社会のスキルを生徒に身につけさせます。

SELに焦点を当てた読み聞かせは、教師と生徒が協力し合い、学級コミュニティーを築く機会となります。読み聞かせが促進する話し合いや質問は、生徒や教師が物語の登場人物や出来事と個人的なつながりを持ったり、クラスメートの多様な経験や背景、文化について学んだりするきっかけともなり、共感を育みます。

読み聞かせの焦点となるSELスキルを選ぶ

SELをテーマにした読み聞かせをするとき、最初にすることは、絵本を選ぶ前に、どのSELのテーマやスキルに焦点を当てたいかを決めることです。CASELフレームワークによると、SELには自己認識、自己管理、社会認識、人間関係スキル、責任ある意思決定の5つの能力があります。

これら5つの能力/コンピテンシーの中には、社会的・文化的アイデンティティー、共感力、帰属意識、忍耐力、自己調整力、長所を認識し多様性を認める能力など、より具体的なスキルの内訳が埋め込まれています。自分のクラスで何に重点を置くかを決める際には、「どのSELスキルが生徒の発達段階に合っているか? 生徒たちはどのSELスキルを伸ばすのにさらなるサポートが必要でしょうか? どのSELスキルが私たちの理想的なクラスのあり方に最も適しているか?」などについて考えます。

この答えから、読み聞かせのテーマがいくつか見つかるでしょう。例えば、生徒が仲間に対して思いやりのない態度をとっていることに気づいたら、共感と思いやりの育成に焦点を当てることができます。あるいは、生徒が声をかけたり、手を離したりすることに問題を抱えている場合は、自己規制や衝動のコントロールに焦点を当てるのがよいでしょう。

本の選択 ~ 最後のリスト参照

読み聞かせの計画

絵本を選んだら、簡単な計画を立てるとよいでしょう。読み聞かせの前、読み聞かせの最中、読み聞かせの後に実施する話し合いのポイントや考え聞かせ★、質問などをあらかじめ計画しておくのです。

読む前に、生徒に本の簡単な紹介をし、読み聞かせの焦点を定め(例えば、選んだSELスキルやテーマ、関連する理解のための方法★★を確認する)、重要な語彙を予習し、生徒の背景知識を活性化する質問をし、生徒が文章や登場人物について予想するように仕向けます。

読み聞かせをしている途中、25回の中断点を予め計画しておきます。その際、教師が考え聞かせをしたり、生徒の話し合いを促したり、本文や登場人物と関連づける機会を設けたりします。

読み終わった後、物語の文脈の中でSELについて私たちはさらに話し合い、最初の葛藤を特定し、登場人物が特定のSELスキルを使ってどのように葛藤を解決したかを確認します。その後、生徒をフォローアップの活動に導き、SELのコンピテンシーに沿った思考、学習、応用を広げます。

フォローアップの活動

フォローアップの活動には、特定のSELスキルについて、またそれが学校現場でどのように応用できるかについて、ペアか小グループまたはクラス全体で話し合うことが中心です。生徒は、個人的な経験や知識に基づいて、本の登場人物や出来事との関連性を共有することができます。

例えば、個人的な物語を書いたり、文章に反応して絵を描いたり、葛藤や問題を解決するためにどのように行動すべきかを話し合うのです。そうすることで、筋書きやテーマ、登場人物の特徴や成長など、物語の要素を理解するための具体的な読解力★★を身につけることができます。

上で紹介したアプローチを通して、読み聞かせは、公平性と生徒のアイデンティティー、文化、生活経験の表現を促進しながら、読み書きのスキルとSELを育む機会を同時に提供します

出典:https://www.edutopia.org/article/social-emotional-learning-read-alouds-can-support-literacy

 

おすすめの本の候補

ようこそ!ここはみんなのがっこうだよ  アレクザーンドラ・ペンフォールド作 ; スーザン・カウフマン絵 ; 吉上恭太訳  鈴木出版 2020

みんなとちがうきみだけど  ジャクリーン・ウッドソン作 ; ラファエル・ロペス絵 ; 都甲幸治訳  汐文社 2019

ぼくはにんげん : おもいやりってだいじだね スーザン・ヴェルデ文 ; ピーター・レイノルズ絵 ; 島津やよい訳  新評論 2020

きみはたいせつ クリスチャン・ロビンソン作 ; 横山和江訳  BL出版 2021

しあわせのバケツ キャロル・マックラウド作 ; デヴィッド・メッシング絵  TOブックス 2019

ええやんそのままで  トッド・パール作 ; つだゆうこ訳 解放出版社、 2008

ふたりのサンドウィッチ ラーニア・アル・アブドッラーさく ; ケリー・ディプキオぶん ; トリシャ・トゥサえ  TOブックス 2010

いいこでねんね デヴィッド・エズラ・シュタイン作 ; さかいくにゆき訳  ポプラ社 2012

せかいはふしぎでできている! アンドレア・ベイティー作 ; デイヴィッド・ロバーツ絵 ; かとうりつこ訳  絵本塾出版 2018

きりんはダンスをおどれない : ポップアップ ジャイルズ・アンドレイさく ; ガイ・パーカー=リースえ ; たにゆきやく  大日本絵画 2009

しんぱいしんぱい ウェンベリー ケビン・ヘンクス作 ; いしいむつみ訳  BL出版 2001

3歳から読みきかせるしあわせのバケツ : 英語でもよめる キャロル・マックラウド、 カレン・ウェルズ作 ; ペニー・ウェバー絵  TOブックス 2012

ごきげんななめのてんとうむし エリック・カールさく ; もりひさしやく  偕成社 1998

いろいろいろんな日 ドクター・スース作 ; スティーブ・ジョンソン、 ルー・ファンチャー絵 ; 石井睦美訳  BL出版 1998

ええきもちええかんじ  トッド・パール作 ; つだゆうこ訳  解放出版社、 2009

しっぱい!とおもったけど  トッド・パール作 ; つだゆうこ訳  解放出版社、 2014

ぼくはぼく スーザン・ヴェルデ文 ; ピーター・レイノルズ絵 ; 島津やよい訳  新評論 2023

SELの絵本は、以上の他にもhttps://docs.google.com/spreadsheets/d/e/2PACX-1vS_cqoO1OnMIqJzMTAhIbd-UZZTNLZZY-STwjYf9UJg2XvCN5JHLg-PbphrteMzz_-a8F9eRmbce1Om/pubhtml でテーマ別に分類したリストを見ることができます。

 

★「読み聞かせ」といっても、その方法は多様にあります。日本では、バリエーションが乏しく、小学校入学前の子どもを対象にした読み聞かせが、入学以降も使われている状況が続いています。目的が違えば、方法も変えなければならないのに(特に、学習の手段として使う場合は)! 対話読み聞かせは、読み聞かせをしながら聞いている対象と話し合いをもつ方法で、より参加型の読み聞かせになります。考え聞かせは、読み手が読み聞かせと同時に、読みながら自分が考えていることを披露する方法です。もちろん、絵本の最初から最後まで、対話読み聞かせや考え聞かせをしてしまっては効果的ではありません。どこでどれだけするかを事前に準備することが大切です。『読み聞かせは魔法!』(明治図書)の第2章で対話読み聞かせが、第3章で考え聞かせのやり方が紹介されています。また、小学生以上に対して行う読み聞かせについても第1章で紹介されています。

★★ https://wwletter.blogspot.com/の左上に「理解のための方法」「理解のための7つの方法」「優れた読書家が使っている方法」などを入力して検索すると「理解のための方法」Comprehension Strategiesを知ることができます。一方、より広範なreading skillについては、https://helpfulprofessor.com/reading-skills/で(英語の場合)75のスキルが紹介されています。そのうちの大半は日本語にも当てはまります。

2024年6月1日土曜日

教師の話すスキル、聴くスキル

 6月に入り、子どもも教師も新しい教室に慣れ、クラス全体の様子が安定してきたころではないでしょうか。一人ひとりの子どもたちの性格や特性を把握してきたころでもあるかと思います。

そんなときだからこそ、子どもたちに固定観念をもたずに接し、批判することなく耳を傾けること、対話していくことが大切になります。それが教師と一人ひとりの子どもの信頼関係や、子ども同士の関係を深めていくことにつながります。クラス全体や一人ひとりへの話し方、対応の仕方は、日々それに触れている子どもの感情認識やコントロールする力、子ども同士の関係性にも大きく影響します。



クラス全体への対応


1.声の調子、話し方

 

 教室内ではとくに、落ちついて、批判的に聞こえないようにはっきりした声で話すことが大切です。子どもたちの家庭はさまざまで、子どもたちの話し方やコミュニケーションの取り方は一人ひとり異なりますが、適切な話し方で自己管理することを表現していくことが必要です。教師が、子どもに耳を傾けながら状況を把握していることを伝えることで、安心できる、大事にされているといった心理的安全性を確保できるとともに、落ちついた状態をみせることで、感情をコントロールする手本となることができます。

 

 常に冷静さを保つことは大人でも難しいものです。だれしもイライラしたり、不快に思ったりといった感情をもちますが、それを感情のコントロールを学ぶ途上にある子どもたちの前でどのように表現するか、教師自身の感情のコントロールと声の調子の訓練が必要になります。練習が必要な場合も多いでしょうが、練習することで目の前の子どもたちにとって適切な声の調子を保つことにつながります。

 また、別の活動に移行するときや注意を促す際には大きな声を出す必要もあるでしょう。怒鳴ることなく、冷静に対応すること、大声を出すのではなく、別の手段(ベルを使うや事前に合図を決めておく)を講じることも有効です。   


2.平等に対応する

 

 子どもが意見を言ったときや質問をしたときに、「いい考えだね!」「よい質問だね」というコメントをすることはよくあることだと思います。しかし、子どもたちのなかには敏感に反応する子どももいて、教師の自分への対応をよく記憶しています。自分の発言に対して、ほかの人の発言と同じ対応をとられなかったときー前に発言したクラスメイトは肯定的なコメントをもらったのに、自分はそうでなかったときーその子どもが次に発言する確率は高くなるでしょうか。 

 

 教師と子どもたちとの関係性が深まる前に評価を含めるコメントをすると、それがポジティブなものであっても、クラス全体の発言のしやすやや、心理的安全性の確保に影響します。発言してくれたこと、質問をしてくれたことの行為自体を認め、感謝すること、子どもたちに同じ対応をとり、コミュニケーションをしやすい環境をつくっていくことが大切です。


一人ひとりの子どもへの対応

 

 一人ひとりの子どもと接するときには、相手を理解するために敬意をはらいながら耳を傾ける聴くスキルが大切です。


 感情面のサポートについての研究でも、子どもが何かを相談しにきたり、不満を表したりするときに、批判することなく子どもの感情を認めること(例:「辛いね。傷ついてイライラするのは当然だと思う」)がのぞましいとされています。

 肯定的な発言においても、下記のように「どう感じるべきか」を意見し、子どもの感情を認めていないときが多くあります。

✖「明日にはよくなるよ!」ー感情を無視する

✖「そんなに気にすることじゃないよ」ー感情を却下する

✖「過剰反応だね」ー感情を批判する


 ただし、子どもの感情について完全にわかると伝えることも裏目にでることがあります。完全に子どもと同じ状況や感情を経験することは不可能です。自分はあなたのすべてをわかることができると言い切ってしまうと、子どもではなく話を聴いている相手側に注意が向けられてしまうことになります。似たような状況や過去の経験からその感情を想起し、共感することは大切ですが、子どもの独自の状況や立場を尊重して、「あなたの状況や体験を完全にわかることはできないけれど、動揺するのは無理ないことだよ」と子どもの感情を認めて受け入れることが、子どもの共感と関係性を育むことに繋がります。


 また、感情をコントロールする方法をシェアし、次にどうしたらいいかを話し合うことが有効です。このときに、「○○するべきだよ」と押しつけるのではなく、ある感情に圧倒されてしまっているときに、隣に座って子どもに寄り添うことが大切です。そして、その感情がずっと続くものではなく一時的なものであることを学べるように共にふり返る機会をもつことも重要です。


 子どもとのコミュニケーションでは、耳を傾け、敬意をはらい理解しようとする態度を示していたか次の点でふり返るのがよいでしょう。

  • コミュニケーションを丁寧に行い、その子どもにどれだけ集中していたか

  • 適切なアイコンタクト、表情、声の調子、言葉遣い、ボディーランゲージで、自分の感情を表現したか

  • 話し手の伝えたいことを理解したか


 日々のコミュニケーションのすべてを理想通りに行うことはできませんが、気をつけるポイントを頭に入れて、ふり返ることで、どんどんよいコミュニケーションがとれるようになります。そして日々の積み重ねが子どもたちとの関係性を築き、子どもたちの感情と社会性を育む力へとつながるでしょう。


参照:Providing Students With Emotional Support | Edutopia

   『感情と社会性を育む学び(SEL)』(新評論 2022年)


2024年5月18日土曜日

「生徒の声をしっかり聴き、学校の意思決定に反映させる」

 表題の原タイトルは、Elevate Student Voiceです。

私たちの学校や授業は、果たしてどのくらいそれを実現できているでしょうか?

あなたは、自分の学校と授業を生徒の声を意思決定に反映させるという観点で評価したら、100点満点の何点ぐらいと採点しますか?

SELの5本の柱のうちの一つが、「責任ある意思決定」ですから、これは極めて重要なことです。学校や授業でその練習をしないで、いったいどこでするというのでしょうか?

SELを意識する/しないにかかわらず、私たちは「生徒の声をしっかり聴き、学校の意思決定に反映させる」ことは学校経営や学級経営の柱であるはずです!★

 

あなたの学校や教室では「生徒の声をしっかり聴き、意思決定に反映させる」ために、どんな仕組みや方法が実践されていますか? 以下のような質問に答えることで、そのための最初のステップや、継続的な改善の必要な領域を把握することができるでしょう。

・教職員は、生徒が学習者、リーダー、問題解決者、意思決定者として夢中で取り組む★★形で、生徒一人ひとりの視点と経験を尊重し、高めていますか?

・学校レベルのSELの実践、授業、および学校の風土形成などに、生徒が参加するための方法を組み込んでいますか?

・生徒は、定期的に教室、学校、およびより広い地域社会を改善するための活動、解決策、およびプロジェクトを自ら発案し、取り組んでいますか?

(以上のほかに、自分たちに対して投げかけられる質問は考えられますか?)

 

●「参画のはしご」とSEL

生徒の声を意思決定に反映する主な目的は、生徒が(教師を含めた)大人と協力して変革の担い手となることを支援することです。それを学校時代に練習するために。もう30年も前に提示された「参画のはしご」(下図)は、教師が生徒を意思決定にどのように関与させているかを振り返る方法を示しています。生徒がすべてを自ら発案し、取り組むことが現実的でない場合でも、教師や管理職には(生徒にも)多様な選択肢があることを思い出させてくれます。5段ぐらいは、マイナスの効果しかない(?)と言えるでしょうか。


生徒の声を聴き、学校や授業の意思決定に反映させる方法

・アンケートやインタビューで、学校全体でのSELの実践、学校の文化/雰囲気、授業への取り組み具合、教師と生徒の関係、およびその他の生徒たちが日々学校で体験している重要な要素に関する思いや考えを生徒たちから聞き取る。発展形として、教師が調査をしてしまうのではなく、生徒に調査をしてもらい、結果を発表してもらうことまでしてもらう。さらには、結果をどう活かすかのプロセスに参画してもらうことも!

・学校で意思決定が行われるできるだけ多くの場面に、生徒代表の参加を図る。特に、「声」の弱い生徒たちの参加に気を配る。ミーティングのもち方(話し合いの仕方)や意思決定のプロセスの練習になる。その際、お客さんとして参加するのではなく、自分事として捉えられる内容であることが不可欠!

・生徒主導の教室、学校、地域をよりよくするための計画立案(+実行)や提言活動を奨励しましょう。生徒たちは信じさえすれば、自分たちが関心をもつ問題について仲間と共に取り組むことができます。その際、教師は生徒がリーダーシップを発揮するために必要なスキル(例えば、スピーチ、会議の計画・運営、仲間の組織づくりなどの能力)を身につける手助けをする必要があるでしょう。

・生徒の声や考えが中心になるように授業形態をシフトしていく。もっとも手ごろなのは、プロジェクト学習やデザイン思考の学習です。『あなたの授業が子どもと世界を変える』『子どもの誇りに灯をともす』『プロジェクト学習とは』およびhttps://projectbetterschool.blogspot.com/2023/07/blog-post_16.html を参照ください。

出典:https://schoolguide.casel.org/focus-area-3/school/elevate-student-voice/

 

★同じことは、対教師や、対保護者や、対地域にも言えてしまいます。しかし、管理職や教師の声さえ反映できていない状況で、生徒、保護者・地域の声を反映させることは夢のまた夢の状態が続いています。このテーマに挑戦したい方には、『一人ひとりを大切にする学校』、『ペアレント・プロジェクト』がおすすめです。

★★単に生徒を学習者として夢中で授業に取り組むことさえ、かなりハードルの高い現状では(夢中で取り組めていない場合は、生徒一人ひとりの視点と経験を尊重し、高めることは期待できないことを意味します!)、学習者に加えてリーダー、問題解決者、意思決定者として授業や学校のことに取り組んでもらうということを考えられますか?

★★★以下は、オマケ情報です。Elevate Student Voice」でChatGPTに尋ねてみてください。「生徒の声をしっかり聴き、学校の意思決定に反映させる」ための方法が、網羅されています。果たして、日本の学校ではこのリストのどれだけが行われているでしょうか?(各項目に5点を振り分けると、全部で100点になります。学校を採点する指標として使えるでしょう! 全部の項目を見てみたい方は、pro.workshop@gmail.comに資料請求してください。)

2024年5月4日土曜日

「優れたSELのスキルをもった人(現実または架空の人物)とディナーに行くことができるとしたら、誰を招待しますか? その理由も教えてください」

あなたは、この質問にどう答えますか?

長年SELの研究をしている3人の研究者にこの質問を投げかけたところ、名前と理由をあげて答えられたのは一人だけでした。

 ですから、誰でもすぐに答えられる質問ではありません。

 ですが、これからSELに取り組み続けることを考えたら、ぜひそういう人たちをリストアップし続けてください。

●唯一回答したDr.Mark Greenbergの答えは、次の通りです。

 まず、チャーリー・ブラウンです。彼は、他の人とうまくやるコツを教えてくれているだけでなく、自分ともうまくやる方法を教えてくれています。

 2番目は、スパイダーマンです。彼は、決して諦めません。また、常に正しいことをしようとしますし、自分のもっているパワーに責任をもとうとしています。

 3番目ですが、最も好きなのはヨーダ(映画『スター・ウォーズ』に登場人物)です。彼は、とても思慮深く賢明で、学べることがたくさんあります。一つだけ彼の名言を紹介しましょう。「恐れはダークサイド(暗黒面)への道じゃ。 · 恐れは怒りに導き、怒りは憎しみに導き、憎しみは苦しみに導くんじゃ」

ちなみに、ChatGPTの回答は次の通りです:

「その質問に答えるのは難しいですね。私の計算機能と知識ベースから得られる情報をもとにすれば、社交的で感情的に優れた人々の例を見つけることは可能です。しかし、私はそれらの人々と対話した経験がありませんし、感情的な接触もありません。したがって、私の選択は完全に理論的なものになります。

ですが、例えば、アントニオ・デミアスやネルソン・マンデラのようなリーダーシップと感情的知能を持った人々が、多くの場面で他者とのコミュニケーションを成功させてきました。また、フィクションのキャラクターとしては、ディズニーのミッキーマウスやジャンル・オースティンの小説に登場するエマ・ウッドハウスなどが挙げられます。彼らは、自己認識、他者との関係構築、コミュニケーションスキルにおいて優れた能力を示しています。」

 このChatGPTの回答に、あなたは何点ぐらいをつけますか? 筆者の評価は、70点ぐらいです。前段の「言い訳」の部分はユーモアと解しました。アントニオ・デミアスって、誰ですか? (いずれにしても、ChatGPTの回答はまだ6~7割程度で捉えておいた方が無難です!)

●最後に、グリーンバーグ博士にならって、筆者の招待したい人は、まず、『ギヴァー』の主役のジョナスです。ギヴァー以外はもっていないコミュニティー(人類)の過去の歴史を注入されたことによって、単に赤ちゃんのガブリエルを助けるためだけではなく、コミュニティー全体が目を覚ませるような責任のある行動をとったことによります。なお、ジョナスのSELのスキルは「人並」と言ったところだと思いますが、「責任のある行動」は傑出しています(その事実が、結果的には、SELのスキルも押し上げているような気がします。そうでないと、「あのような」行動はとれませんから!)。

 2番目は、鉄腕アトムをはじめ手塚治虫の漫画の主人公たちです。その理由は、グリーンバーグ博士がスパイダーマンを選んだ理由に似ています。ただ、鉄腕アトムの場合は、妹のウランとのセットにすると、SELのスキルがより高まるかもしれません。

 なお、SEL用に使える本のリストは、https://docs.google.com/spreadsheets/d/e/2PACX-1vS_cqoO1OnMIqJzMTAhIbd-UZZTNLZZY-STwjYf9UJg2XvCN5JHLg-PbphrteMzz_-a8F9eRmbce1Om/pubhtml がありますので、それらも参考にしながら、ご自分のディナーに招待したい人のリストを収集し続けてください。

出典:https://casel.org/blog/30-years-of-sel-research-whats-new-and-whats-next/

2024年4月20日土曜日

教員も生徒も大切にするSEL

2月に『SELを成功に導くための五つの要素』を読んだ江濱悦子先生(東京都英語教諭)が書いてくれた現時点での取り組む状況を紹介します。

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2年間の大学院での学びを終え、久しぶりに学校現場に戻ってきました。大学院での自分と、学校現場での自分の中で、一番違うことは何か?と冷静に考えると、「学校現場には、めまぐるしい感情が伴っている」と感じます。学校現場では私たち教員はたくさんの感情と共に生活をしています。学校にはたくさんの「人」がいます。生徒だけではありません。保護者、同僚、管理職、専門スタッフ等、様々な場面で、その人、その状況に応じて適切なコミュニケーションが必要となります。私たち教員はそのような状況でコミュニケーションに失敗しないように、かなり気をはって一日を過ごしています。今だから比較できますが、大学院で過ごした一日と学校現場で過ごした一日の疲れ方、自分でも驚くほど違います!

SELを成功に導くための五つの要素』を読み終わって私が最初に思ったことは、私たち教員にこそ、このSEL★という考え方と実践が必要だということです。先生が疲れ切ったままでは、今私たち教員に求められている、個別の生徒の支援などできないからです。現実、学校が好き、子供が好き、教えることが好き、様々な理由で期待を大きく膨らませ教師になったのに、理想と現実のギャップで苦しんだり、もがいたり、体調を崩したり、そして離職する先生方が多いことに心が痛みます。 今、教員に必要なのは、生徒をエンパワー(人間のもつ本来の能力を最大限にまでひきだす『SELを成功に導くための五つの要素』p223)ために、教師自身がまず、エンパワーされることではないでしょうか? 私たち教員だって支援が必要です! どのようにすれば教師がエンパワーされるか? そのヒントが『SELを成功に導くための五つの要素』にはたくさん書かれています。その基礎となる方法は教師が自身の「教師としての感情の器を大きくすること」(p213)ではないでしょうか? この本には、不快な感情に向き合う、EQ★★の開発・感情の状態に対応する、感情の境界線を引くなど、学校の中で実践できる具体的な方法が満載です。実際、初任からこれらの方法を知っていれば、私自身もっとストレスを軽減できたと確信しています。

この本を参考に私が今年、実際実践していることを紹介します。私の今年の目標は、学校で先生方(もちろん最終的には生徒に良い影響を与えるため)にたくさんの選択肢を用意し、当事者意識をもってもらうことで、先生方をエンパワーすることです。この目標を達成する為に、本で紹介されているエンゲージ・ティーチングの計画表(参考p361)

を作成しました。その過程で学年の先生方と協働で、私たちが育てたい生徒像、どのような生徒に育ってほしいかを共有したり、共有を基に子供達の強みを鑑み、現状を確認しながら計画を立てました。この計画表を基に、常に自身の実践を振り返り、修正しながら自分の目標に向かいたい、と思います★★★。

この本の前提には、効果的な指導法★★★★は習得可能で、実践で向上でき、教師一人一人が自らにしかない才能に気づき、強みをいかし、生徒に良い影響を与え教育者としての経験値を向上させることができるという考え方(p19)があります。そして、教師として大事なことを自分に問い続けることができる貴重な本です。教師というのは、「常に『教師になり続ける』という存在である。・・・信念をもって突き進む学びのなかで、そして自らが築きあげたものへの深い内省のなかで、教師は自分が何者で、何をしようをしているのかを見いだし続ける(p17)」のです。

 

SELは、「感情と社会性を育む学び」ないし「社会性と情動の学習」のことで、本ブログのテーマです。

★★EQは「こころの知能指数」ないし「自分自身や周囲の人たちの感情を適切に察知し、うまく扱う能力」のことを指し、従来重視されてきたIQ(知能指数)よりも、人が成功するにはこちらの方が大切言われるようになってすでに30年が経過します。EQの中味(および、その身につけ方)については、https://selnewsletter.blogspot.com/2023/10/eq.htmlを参照してください。

★★★「今私たち教員が作った計画表に生徒の代表(学級委員)の目標とする生徒の姿を併せて、協働で更に進化したものを作成中です。生徒の目標も入れながら生徒が理想の姿を絵で表してくれる予定です」とのことなので、それが完成次第、再度紹介させていただきます。

★★★★ここでいう「効果的な指導法」は、エンゲージ・ティーチングのことで「生徒たちが夢中で学べるように、教師が夢中で取り組める教え方」のことです。その具体的な方法については、『「居場所」のある学級・学校づくり』の第6章「生徒を惹きつける、生徒主体の授業が居場所の原動力」や、https://projectbetterschool.blogspot.com/2023/07/blog-post_16.html を参照ください。

2024年4月6日土曜日

新年度におすすめの活動

  教室内には、教師とひとりひとりの子ども、教師と子どもたち全体、子ども同士、それぞれの関係性が学級をつくります。新年度は、人間関係を構築し、深める絶好の機会です。成長途上にある子どもが人間関係を培うサポートをし、楽しい学校生活を送れるようにすることはもちろん、教師を信頼でき、安心して学習できる環境をつくることは、学業への取り組み方にも大きな恩恵があります。今回は、新年度活動に効果的な活動をいくつかご紹介します。


一人ひとりの子どもについて知るための活動

 子どもについてをよく知れば知るほど、教室で生徒のニーズを満たすことができるようになります。まずは、子どもの声を聞く機会をつくることが大切です。


「先生に_____を知っていてほしい」という文章を完成させる

 子どもに「先生に____を知っていてほしい」という文章を完成させてもらうと予想以上のことがわかります。子どもの答えには、「今年私のお父さんが死んでしまったことを知っていてほしい」といった深刻なものから、「大きい音に敏感なことを知ってほしい」といった学校生活に必要な情報、「○○のキャラクターが好き」のような趣味を知ることができるものとさまざまことが共有されるでしょう。子どもの感情や考え、置かれている状況を知る一歩になるとともに、子どもは、教師が自分のことを知ろうとしてくれていると感じることができ、新しい一年の関係を築いていく第一歩として効果的な方法です。

 これは、アメリカコロラド州の3年生の教師がはじめた活動で、彼女が日本で話した動画 あります


ランキング表をつくる

 これは、子ども自身にとっても自分の価値観と優先順位をふり返り、意思決定をする経験、そして、教師にとっては、子どもの現在抱えているニーズについてよく知ることができます。

 A4用紙の一枚には、一枚には1から12までの番号を書いた表、もう一枚の紙には、11の言葉:楽しむ、友だちをつくる、お金、物、見た目、家族、教育、ほかの人から尊敬される、健康、何かに秀でる、トラブルに巻き込まれないようにする、を書いた12マスの表を配ります。(白紙のA4用紙を二枚配り、子どもたちに表と言葉を書いてもらってもよいでしょう。)子どもは、12番目の空欄に自分にとって大切なものを足し、言葉の書かれたマスを切り取り、もう一枚の数字を書いた表に優先順の高いと思う順に並べます。

 子どもひとりひとり違うランキングができ、教師は子どもの志向を知ることができます。ほかの人と共有するのにためらいがない場合には、その順番に並べた理由とともに発表してもらったり、ほかの人のランキングをみたりすることで、自分との違う考え方をする人がいることを知り、さらに、自分と価値観の近いクラスメイトを見つけることもできます。


あいさつは一人ひとりの名前を呼んでする

 あいさつにクラスメイトの名前を含めるよう手本を示すと、子ども同士でも名前を呼んであいさつをしやすくなります。「おはよう、調子はどう?」と話しかけるのではなく、「〇〇さん、おはよう、調子はどう?」と聞くようにしましょう。名前を呼びあうことで、会話も促されます。ほかの人の名前を呼ぶのは、初めのうちは気まずく感じるかもしれませんが、教師が子どもたちの名前を呼んであいさつする場合、脳がその方法を認識します。自分の名前を耳にすると脳の特定の箇所、自己に関連づける働きをする内側前頭前皮質が活性化するとの研究があります。この領域は他者の所属意識や絆を育むことと直接つながっている箇所です。

 なお、アメリカでは、教師から子どもは姓ではなく名前(ファーストネーム)で呼ぶことが一般的で、子ども同士の間でも名前で呼び合います。学校全体での方針がある場合もあるかと思いますが、自己紹介の際に子どもたち同士の間でどう呼んでほしいか言ってもらうのもよいと思います。


クラス全体の活動


クラスの価値観を話し合い、契約を結ぶ

 価値観とは、何は正しくて何は正しくないかについての一般的な考えです。状況に応じて変わる規範とは異なり、価値観は一定のものです。そして、優先順位からは、自分が大切にしているものは何かがわかります。生徒と価値観について話し合い、クラス全体の価値観をつくり出しましょう。そして、意思決定が必要なときにはクラスの価値観を参考にすることが大切です。クラスの価値観を話し合ううえでは、一つの方法としてクラスで「契約」を結ぶことがあります。次のような質問を通じて話し合いを進めるのがよいでしょう。

  • 教師にどのように接してほしいか?

  • クラスメイトにどのように接してほしいか?

  • 教師は生徒にどのように接してほしいと思っているか?

  • 守られないときにはどのように対応するか?

 生徒は一人ひとりが質問について考え、考えを共有し、それをもとに合意できるように契約を組み立てます。合意できる契約文書が作成できたら、生徒と教師が署名をし、教室に掲示します。この過程を経ることで、生徒同士の交流が促され、自分の声が届いていると感じるとともに、契約に沿って自分たちをモニターし始めます。上の4つの質問とその答えを下に書くことで契約とすることもできますし、お互いに尊重する、よく聴く、共感を示す、親切にするなど、クラスの価値観を示す行動を並べることをもって契約とするのもよい方法です。


規範づくり

 社会規範を理解し、それに従えることは、社会認識上重要なことです。「向社会的なふるまい」とは、他者に利するよい行動で、個人的利益(私利私欲)によって突き動かされないことを意味します。社会的なスキル、ないし、向社会的スキルは、多くの場合、教師が学校や教室で設ける規範を通じて培われます。

 規範は、すべての生徒が関わり参加していくなかでつくられるべきものです。教科や内容によって異なる規範が必要なこともあります。たとえば、国語の授業では、読むときの規範と書くときの規範が考えられます。「読んで学んでいるときは、自分たちはどのように見え、どのように聞こえるでしょうか?」と尋ね、自分たちについて言い表す形容詞を考えてもらうようにします。集中している、静か、電子機器がない(タブレット端末を使って読まない場合)、みんなが参加できる、落ち着いている、不安がない、夢中になっている、などが挙げられるでしょう。また、「グループワークでは自分たちどのように見え、聞こえるでしょうか?」と尋れば、子どもたちはグループで課題に取り組むのに最も重要な規範を決めることができます。お互いを尊重する、共有する(分かち合う)、用意ができている、パーソナル・スペース(個人の空間)を侵さないなどの規範が出てくるかもしれません。「教室のルール(決まり)」」と呼ぶよりも「規範」と言うことで、ただ何をすべきかを指示するのではなく、どのようにふるまうかを表現することができます。

 教室や学校ではいろいろな規範を取り入れられます。重要なことは、生徒が向社会的になれるような規範をつくり、使っていくことです。事前に何をすべきか、どのようにふるまうべきかがわかっていることは、学校内外で生徒の役に立ちます。 


契約も規範について学年の途中でふり返り、改訂するのがよいでしょう。


子ども同士の関係を深める


二重に輪になって1対1のコミュニケーションをする

 子どもたちに二重に輪をつくります。それぞれの輪は同数の子どもが必要で、内側の輪の人は外側に、外側の輪の人は内側に向かって並びます。学級が奇数の場合は教師も加わる、もしくは、外側の輪に二人一組をつくるとよいでしょう。教師は、子どもたちが知り合い理解を深められる質問をし子どもは、向かい合っているパートナーと答えを共有します。数分したら、内側の輪の子どもに右に3つ動いてください、などと指示を出し、異なるパートナーと話せるようにします。慣れてきたら子どもにお題や質問を出してもらったり、教師も答えたりするのがよいでしょう。

 まずは、リラックスできるように。「山が好きか、海が好きか」「お寿司で好きなものは何か」など簡単な質問から始めることをおすすめします。慣れてきたら、一人ひとりを知るために「将来の夢は何か」「怖いものは何か」「学校行事で一番思い出に残っていることは何か」など、個人的な質問をしていくのもよいでしょう。

 なお、各教科でもディスカッションや意見交換をするときにも同じように行うことができます。



 新年度に取り入れやすい活動をいくつか紹介しました。一年間のSELを充実させるためにもぜひ取り入れてみてください。


参照