2023年7月29日土曜日

SELをすることで得られる51の恩恵(価値)

  51もの恩恵のリストは、次の無料で得られる資料の中で、6つの柱に整理されて提示してくれていますので、ぜひ入手してください。

https://www.conovercompany.com/social-emotional-learning/

 ちなみに、6つの柱は、社会的、感情的、個人的、リーダーシップ、職業的、経済的です。それぞれ8~10の項目がリストアップされています。SELを学校等で取り組む価値を同僚や管理職にうまく説明できない場合の説得材料として参考になるのではないかと思います。(入手されたら、翻訳ソフトを使って訳せば、8~9割のレベルで翻訳してくれます。)

試してみても、51の恩恵のリストを入手できなかった方は、pro.workshop@gmailcomに問い合わせてください。

 

 上記の6つの柱に、学業面が含まれていないのが気になり「sel impact on academic outcomes」で検索してみたところ、次のような情報を得ました。(こちらも、翻訳ソフトを使って読んでください。)

https://casel.org/fundamentals-of-sel/what-does-the-research-say/ (CASELのサイトです)

https://www.panoramaed.com/blog/sel-impact-academics

https://files.eric.ed.gov/fulltext/ED505369.pdf(これは、学業に限定したものではなく、全部を対象にしています)

https://www.partnershipforchildren.org.uk/uploads/Files/evaluation/AcademicAchievement.pdf.pdf

https://kappanonline.org/social-emotional-learning-outcome-research-mahoney-durlak-weissberg/ (KAPPANという教育誌に掲載された研究論文です)

2023年7月22日土曜日

『感情と社会性を育む学び(SEL)』(マリリー・スプレンガ―/大内朋子ほか訳、新評論、2022年)のなかの「共感」 ~共感6

 この本の特徴は、SELの5本の柱(URLを参照)についての解説と具体的に取り組める活動の紹介の前後に、https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784794812056の本の目次でわかるように、第1章の「教師と生徒の関係を築く」、第2章の「共感する」、第8章の「プログラムではなく、人がSELに好影響を及ぼす」の3章が重視されていることです。

 共感的であることを含めた教師と生徒の関係が築かれていないと、SELの取り組み自体が絵に描いた餅(取り組んでいる振りをしているだけ)になってしまいます。それは、最後の第8章とも関係します。アメリカには、数百(300とも400とも言われています!)のSELのプログラムがあります。そのうちの一つを選んだら、それで自分の仕事の大半は完了したと思いがちになるのは無理もないことかもしれません(一つしかない教科書をこなしていれば、自分の仕事は安泰と思っている教師も決して少なくはありませんから)。第8章では、それでは子どもたちの助けにならないと強調しているので、ぜひご一読ください(その際は、『学びは、すべてSEL』の最終章の「SEL学校の創造」と合わせて読むとインパクトが増します!)。

 共感というよりも、SELについての前置きが長くなりました。

 第2章で大きく取り上げられているのは、共感を扱った内容のものでは多くの本や資料で必ずと言っていいほど取り上げられるカナダ人のメアリー・ゴードンの「共感のルーツ(Roots of Empathy)」が紹介されています。

1996年にはじまったこのプログラムは、「月に一度、教室に赤ちゃんを連れていきます。生徒たちは赤ちゃんを観察し、あやし、赤ちゃんが何を感じているかについて話し合います。そして、赤ちゃんが成長し、変化していく様子を目にしたり、仕草や表情、行動を観察したりすることで、赤ちゃんが何をどのように感じているのか推測していきます」(45ページ)という内容です。赤ちゃんを教室に招くことが困難な場合は、「クラスでペットを飼う」という方法もあります(5961ページ)★。

 以上の事例のほかにも、第2章では10以上の活動や事例が紹介されています。

手本となる ~ 「生徒に共感を教えるうえで一番大切なのは、手本を示すことです。・・・生徒は、思いやりをもって対応してくれる教師がいると分かると、教師に信頼を寄せるようになります」(53ページ)具体的な接し方や反応の仕方(言葉遣い)の例が、67~71ページに多数紹介されています。

・理解しようと心がける

・話したり、指摘をしたりするのではなく、質問をする

・感謝を示すメモを送る

・親切の壁づくり

・対面でのコミュニケーションをはかる ~ そのときの注意点あり

・地域貢献プロジェクト

・学校内外でのボランティア活動

・馴染みのない生徒と昼食を共にするランチ

・文学作品を使って、国語の授業で共感を学ぶ ~共感3を参照

・紙袋のひらめき ~ 紙袋を使って、いじめへの抵抗力をつける

・ぐちゃぐちゃのハート

・教師の自己評価 ~ 「生徒に接するときに共感をしているか?」と問い直すための3つの質問が紹介されている

 最初と最後の活動事例(アクティビティー)で、教師がどのような言葉をかけるかが、生徒との関係が築けるか否かの分かれ目となります。この点については、次の機会に。

 

★ペットを飼うことは、命に対する責任が伴いますから、簡単に決断できる/すべきことではありませんが、飼うことを通して学べるものの多さは、映画の『ブタのいる教室』などにもあったように、言葉にできないものがあります。

 

2023年7月15日土曜日

子どもが学校で成功するのに欠かせないSEL の字幕付き動画

このTedトークの日本語タイトル「子どもが学校で成功するための創造的方法」は、原題を忠実に訳していますから、問題とは言えませんが、動画の内容に忠実なら、表題のようなタイトルになるのではないでしょうか? ぜひご覧ください。

https://www.ted.com/talks/olympia_della_flora_creative_ways_to_get_kids_to_thrive_in_school?language=ja

画面の下にある音量調節の隣にある「Subtitles」を日本語に変換すると、日本語字幕になります(あるいは、画面の下の「Read transcript」をクリックすると、校長先生の話の日本語訳が読めます)。

 あなたが知っている/見つけたSEL関連の情報を、pro.workshop@gmail.com宛にぜひ教えてください

2023年7月8日土曜日

様々な問題行動への対処の肝も「共感」!  ~共感5

  『生徒指導をハックする―育ちあうコミュニティーをつくる「関係修復のアプローチ」』(https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784794811691で、目次が見られます)の第7章「共感力を育む」の扉は、次の文章で始まっています。

「(前略)人というものは、相手の立場から物事を考えてあげられるようになるまでは、 ほんとうに理解するなんてことはできないものなんだよその人の身になって、生活するまでは、だよ」

 これは、あの有名なハーパー・リーの小説『アラバマ物語』の登場人物、アティカス・フィンチの言葉です(邦訳は、菊池重三郎訳、暮らしの手帖社、2017年、4445ページ)。

 学校内で起こる★多様な生徒指導がらみの案件に、教師を含めた当事者たちは、このことを理解し、かつ実践できているでしょうか? 『生徒指導をハックする―育ちあうコミュニティーをつくる「関係修復のアプローチ」』には、

自分の行動から学ぶこと、自分の行為によって損なってしまったことを修復すること、他者 に共感することは、関係修復のアプローチにおいては重要な要素となっています。「共感」とは、他者の感情を共有したり理解したりすることで、それは三つ(感情的共感、認知的共感、感情の制御)★★で構成されています。三つのうち一つでも欠けると、学ぶ環境を阻む要因になることがあります。(182ページ)

と書いています。

 これらのうちのどれかが育っていないと、グループワークがうまく機能しなかったり、いじめが起こったりといった形で症状が現れます。さらに、本では「人に共感することが難しい生徒には、ほかにもさまざまな症状が現れます。たとえば、人を思いどおりに操ろうとする、嫉妬、過ちを認めない、権利意識、他者の視点で考える能力の欠如などです。これらのどれ一つとっても、健全な学びの環境をつくるものはありませんが、(本書で提示している)関係修復のアプローチをうまく実践することができれば、これらのすべてを成長へと導くことができます。幸いなことに、共感力は生まれつき備わっている能力ではありません。共感力は、筋肉を鍛えるように、正しい方法によって育成することができるのです」(184ページ)と述べています。

 そして、この本では、共感力を育むための方法として、「ボディー・ランゲージ」「感情を表す表現(=アイ・メッセージ)」「リフレクティブ・リスリング(聞き返し、ないし丁寧な聴き方)」の3つが具体的な事例と共に紹介されていますので(188~196ページ)、ぜひ試してみてください。

★学校内で起こることは、ある意味で学校外で起こる多様な問題行動の縮図的な位置づけにあると言えることを考えると、それへの対処法も、変わらなければならないことを意味します。つまり、その場しのぎの解決(の見せかけ)ではなくて、学校を卒業した後も十分に起こりえる問題への克服の仕方を生徒たちが学ぶ機会と捉えたアプローチです。その第一歩が「共感」という位置づけです。

★★これら3つについて、ここでは触れませんが、「3つの共感」でネット検索すると情報が得られます。

2023年7月1日土曜日

マインドセットとSEL

  今回は、マインドセットと教室での取り組みを紹介します。

 子育てに悩み、育児書や心理学の本に目を向けるようになったときに、出合ったのが「成長マインドセット」と「固定マインドセット」の言葉です(『Mindset: The New Psychology of Success』(Carol Dweck, 2006, Random House、邦訳『マインドセット――「やればできる!」の研究』今西康子訳、草思社、2016年)。


 マインドセットは、自分自身やほかの人の行動と態度に影響を与える一連の思考様式のことです。「成長マインドセット(growth mindset)」は、能力は可変的なもので、人は学び続ける(努力する)ことで成長できるとする考え方です。一方の「固定マインドセット (fixed mindset) 」は、生まれもった能力を超えて成長することはできないとする考え方です。日々の子どもの褒め方やフィードバックの仕方が子どものマインドセットに影響します。成長マインドセットを育むには、結果に注目するのではなく、子どもの努力や、取り組み方、粘り強さを認めることや建設的なフィードバックを行うことが大切です★。


 このマインドセットは、SEL、とりわけ自己認識【自分の感情を特定する、自分の価値や強み、成長すべきところを認識する】と自己管理【自分の感情と行動をコントロールし、目標を達成する】と深く関わっています。そして、成長マインドセットに根ざした教室では、子どもたちが安心して学べ、お互いに認め合い、共感する機会も増えるでしょう。


校では具体的にどのように成長マインドセットを育もうとしているのか小学校4年生の算数の取り組みを紹介します。


 年度初めの授業では、だれにでも算数ができる、好き、得意になれるというメッセージを伝えます。(年度初めでなくとも2学期のスタートとしてもよいと思います)

 算数に取り組むことの重要性をイラストを描いて、そのなかに自分も含まれることをイメージさせます(図1)。

図1

算数ができる人には、どうやったらなれるか?

ステップ1: (どんな種類でも)算数をしてみる

ステップ2: 人間であること大切にする

図2

 そして算数に取り組むうえで大切なことについて一緒に考えます。図2では、算数の授業での規範となる7つの点を挙げています。

  1. みんなが高いレベルの算数を学ぶことができる
  2. 間違えることは大切
  3. 疑問をもつことはとても大切
  4. 算数とは、 創造力を働かせ、論理的に考えること
  5. 算数とは、いろいろなことを結びつけ、コミュニケーションをとること
  6. 算数の授業は学ぶ場であり、できることを示す場所ではない
  7. 早く問題を解けることよりも、深く学ぶことが大切

 これらを算数のノートの一番初めの目にするところや、よく見返すところに貼ったり、もしくは掲示物で子どもたちが常に思い起こせるようにします。


 さらに日々の授業で、成長マインドセットに根ざした声のかけ方や褒め方や建設的なフィードバックを行うこととともに、子どもたちが自分にかける言葉を変えていくことが必要です。

 上のシートでは、固定マインドセットに基づいた発言や考えを成長マインドセットに変える練習をしています。たとえば、

  • 『私は算数は苦手だ』→『(苦手だから)練習しよう』『まだ分からないことがある』

  • 『できる問題だけしていればいいや』→『難しそうだけれど挑戦してみよう』

  • 『あの子はあんなにできるのに、私は全然できない』→『あの子はあんなにできるようになったのだから私もやってみよう』

といったように、自分自身への言葉を成長マインドセットのものへと変える練習をします。


 このように、成長マインドセットを育むために、日々の声のかけ方やフィードバックに気をつけることとともに、明示的に話す機会や、自分のマインドセットをふりかえり成長マインドセットを練習する機会を設けることで、成長マインドセットに根差した教室をつくっていくことができます。

 「成長マインドセット」の環境を作っていくことは、「学び、成長したい」という、子どもが本来もっている思いを受け入れて伸ばしていくものです。教師や親がよいと思って伝えるメッセージの伝わり方も子どもや状況によって異なってきます。どんな場合でも、考え方も性格も能力も変わることができるという「成長マインドセット」の考え方を念頭に置いて、それを促す環境づくりを実践していけば、そこが安心して安全に学べる場となります。


 そのような成長マインドセットの環境で学ぶ効果は、教科面の学力の向上にとどまりません。成長マインドセットを通じて、現時点の自分を前向きに受け入れることができるようになることで、自己受容が促されとともに、自分の感情や考え方に向き合ったり行動をふりかえったりする機会は、感情や社会性に関わるスキルの成長を促してくれるでしょう。人はだれでも成長できる、一人ひとりが今いる地点から感情や社会性に関わるスキルを伸ばしていけると考えることは、SELを実践していくうえの土台となります。


★この点についてより詳しく知りたい方は、https://projectbetterschool.blogspot.com/2020/06/blog-post_21.htmlの「けっかがこわくて チャレンジできなかったりする」の下に紹介されている2冊の本がおすすめです。


2023年6月24日土曜日

共感こそが、真のコミュニケーションと人間関係を構築させてくれる ~共感4

以下は、instituteofcuriosity.comが2023年6月9日に配信したinbox(『好奇心のパワー』の著者たちが定期的にフォローアップとして提供している情報)の翻訳です。


共感という言葉、あらゆる組織や職場で飛び交っています。しかし、それは何を意味するのでしょうか? どうすればいいのでしょうか? そして、なぜ気にする必要があるのでしょうか?

ほとんどの人は、自分には共感力があると主張しますが、実際のところ、その方法を知っている人はほとんどいません。

当時末期の病気だった、私の親友が語ってくれた経験を思い出します。

友人から電話があり、買い物に行くと気分がよくなるから連れて行ってあげると言われたそうです。私の友人はしぶしぶ友人の申し出通りに行動し、新しい服を何着か着、そして購入して疲れ果てて帰宅しました。買い物の後、彼女は、もう長くは生きられないので、すべて返品しなければならないと私に言いました。

あなたが落ち込んでいるとき、誰かがあなたの問題を解決したり、あなたを元気づけようとしたりした経験はありませんか? なぜなら、彼らはあなたが何を必要としているのか、つまり何をすれば気分がよくなるのかを知っていると思ったからです。

そのような状況では、「共感」を装って、あなたのニーズではなく、友人のニーズが満たされています。

  ですから、まず、共感とは何なのかを明確にしましょう。

 共感とは、他人の感情を理解する能力です。そして、共感するためには、好奇心を持たなければなりません。

 相手の立場を理解するには、相手の行動を観察し、感情に注意を向け、さらには何を必要としているのか、何を望んでいるのかを尋ねる必要があります。そうして初めて、あなたは相手と相手のニーズに焦点を当てることができるのです。

その方法は、次のとおりです。

1.     彼らの外見、エネルギーのレベル、からだの動きを広い心をもってよく観察してください。他人のボディー・ランゲージから多くのことを学ぶことができます。

2.     彼らの言うことをよく聞いてください。彼らの声の調子、言葉、考えはあなたに何を語っていますか?

3.     彼らの考え、気持ち、望んでいることや必要としていることについて、質問をしてください。

  思いやりの心を忘れないでください。彼らが自分のニーズは何であるかを伝えてくれたら、それに注意を払い、尊重してください。(自分がいるところ/いたいところで彼らと交わるのではなく)彼らがいるところで彼らと交わり、彼らが望む方法で彼らをサポートしてください。

 ボディー・ランゲージ、声の調子、言葉に注意を払うことで、相手の状態をよりよく理解し、相手が望む場合にのみ、必要なサポートを提供することができます。

 もし、彼らがあなたから何も求めていない場合はどうすればよいでしょうか?

 それで大丈夫です。そのことを尊重し、「すること」から「いること」に移行できれば、ただ静かに彼らと一緒に座っているだけで、あなたは(自分のニーズではなく)彼らのニーズに焦点を当て、それを満たすサポートを提供することになります。

 痛みを抱えている人と一緒に座って共感することは、あなたを不快な気分になることがあります。苦しんでいる人に共感し、気づき、つながることは勇気が必要です。

  私たちは皆、時々落ち込むことがあります。職場でも家庭でも苦労することがあります。

  そのような脆弱な瞬間に、人々はただ見ていてくれ、聞いてくれ、そして理解されていると感じたいだけであることを思い出すのに役立ちます。

 そして、それを実現できる唯一の方法は、『好奇心のパワー』のなかで紹介されている方法を使って、 好奇心をもつことです。

 

  Inboxのメッセージは、ここまでです。

『好奇心のパワー』の本の中のどこで扱われているのは確認してみました。主には、第3章でした。そこには、「共感とは、ほかの人のことを自分のことのように感じることができる能力のことで、その人が感じていることを敏感に察することです。共感は、関係を築くだけでなく深めてくれますので、ほかの人のことを理解しようとする際の有効なツールとなります」(78ページ)としたうえで、聴き方の5つの選択肢を紹介しています。

・選択肢1 話し手を無視する

 ・選択肢2 自分に焦点を当てる

 ・選択肢3 話し手に焦点を当てる

 ・選択肢4 理解することに焦点を当てる

 ・選択肢5 話し手と聞き手の両方に焦点を当てる

 いうまでもなく、下にいくほど、より好ましいコミュニケーションが成り立ちますし、共感の要素が含まれているのは、下の二つのみです。これは、教師と生徒、親子、教師と教師等のコミュニケーションを含めて、すべての間のコミュニケーションで言えます。興味をもたれた方は、「コミュニケーションの仕方と人間関係が劇的に変わる」とサブタイトルがついた、このinboxの書き手による『好奇心のパワー』をご覧ください。

2023年6月17日土曜日

SELとは

SELの5本の柱は、このブログ(https://selnewsletter.blogspot.com/)の右側に表記されている5つですが、それを図化したものはhttps://selnewsletter.blogspot.com/2023/03/sel.html#moreで見られます。

動画だと(日本語ではないですが)、https://www.edutopia.org/video/5-keys-successful-social-and-emotional-learning/で見られます。(このURL以外にも、「social-emotional learning 動画」などで検索すると、大量の動画が見られます。)

 以下では、4冊の本でSELがどのように説明されているかを紹介します。

1)『感情と社会性を育む学び(SEL)』(マリリー・スプレンガ―著/大内朋子ほか訳、新評論、2022年)

Social Emotional Learning (SEL)は、日本語に訳すと、感情に向き合い対応する力であるEQ(感情知性)と、社会性に関わる力のSQ(社会的知性)を育てるための学びです。本書では、この感情と社会性の学びをSELと呼び、そのスキルをSQEQと呼びます。

 SELには、社会認識と人間関係の構築、維持、修復などの社会性(SQ)と、共感する力、自己認識、自己管理能力などからなる自分と他者の感情と向き合い対応していく力(EQ)を学ぶことが含まれます。これらの力は、学校を越えて、社会で必要な力、学び続けるために鍵となる力です。子どもたちにとっての社会である学校では、子どもたちが日々の生活を通じて、SQEQを鍛えていくことが必要です。学習レベルが異なるように、EQSQも一人ひとり異なります。EQSQを子どもの特性や性格と捉えるのではなく、学力と同じように、現時点での子どものEQSQをふり返り、目標を立て、それに向かって学べる環境をつくることが必要です。基礎的な認知能力である読み書きや計算がその後の学びに必要不可欠なように、EQSQも学ぶために必要な基礎的なスキルとみなし、その発達に取り組んでいくことが大切です」(訳者まえがき、 iiiページ)

 

2)『成績だけが評価じゃない―感情と社会性を育む(SEL)ための評価』(スター・サックシュタイン著、中井悠加ほか訳、新評論、2023年)では、CASELの5本の柱の内容について、https://projectbetterschool.blogspot.com/2023/01/blog-post_22.html で読めます。なお、この本はSELと評価/成績とを関連付けた本なので、評価との関係を若干強調する形の説明になっています。

 このCASELの5本の柱の説明以外に、この本では、

SELの核となる能力は、学習するときを含めて、生きていくうえで不可欠となる「思考の習慣」として研究者が提示しているものとなります。それらはすべて教えられますし、教えられるべきものです。また、誰にも居場所があるクラスを築くために、すべての年齢層の生徒と接する際には不可欠な要素となります。◆注・「思考の習慣(Habits of Minds)」については、69ページの表2-4(https://bit.ly/3XZmfbhおよび『学びの中心はやっぱり生徒だ!』(べナ・キャリックほか著/中井悠加ほか訳、新評論)を参照してください。

二人の教育コンサルタントが著した『生徒の尊厳を大切にした居場所のある教室づくり(Belonging Through a Culture of Dignity』◆注・この本は未邦訳のため、日本のニーズによりマッチしている『「居場所」のある教室・学校づくり』を参照してください。のなかで「尊厳の枠組み」が紹介されています。ひとたび生徒のニーズを見極め、帰属意識の高い文化を築き、教える側だけでなく、教える相手の尊厳が尊重できれば、生徒は力を発揮して、より評価が理解されるような学習環境が築けるのです。

本書では、第1章から第4章までにおいて「CASEL」の能力を取り上げ、その内容と、生徒の感情と社会性のウェル・ビーイング◆注・健康で幸福であり、肉体的にも精神的にも社会的にもすべて満たされた状態を言います。◆を促進しながら、子どもたちの学びをより良く評価するために学校がすべきこと、そしてそれらの能力との重なりを説明していきます」(11~12ページ)

そして、「居場所の感覚を高め、違いを認め合う」については42~44ページで、学習の過程で得ることが求められている(それが得られていないなら、教育の成果はあるのか、と問われてしまうほど大切な!)「思考の習慣」ないし「学習気質」については詳しく68~77ページで説明されています。なお、後者の「思考の習慣」については、日を改めてこのブログで詳しく触れたいと思っています。

 

3)『学びは、すべてSEL(ナンシー・フレイほか著、山田洋平ほか訳、新評論、2023年)では、6~10ページにかけて次のように説明しています。

SELにはさまざまな定義があります。それらは、学校や職場、そして地域での良好な人間関係を可能にする社会的・感情的・行動的、および性格(キャラクター)のスキルに焦点が当てられています。

これらのスキルは、生徒の学業に影響を与えるにもかかわらず、学校教育においては明確な指導対象とはなっておらず、「ソフトスキル」や「個人の特性」と見なされている場合が多いです。しかし実際には、無自覚かもしれませんが、教師はSELを教えているのです。ある教師が次のように述べています。

「私たちがどのように教えるかは、私たちが何を教えるのかと同じくらい生徒に対しては影響があります★。教室における文化が帰属意識と精神面の安全を反映しなければならないのと同じく、教科指導においてもそれらの能力を体現し、強化すると同時に教科指導もそれらの能力によって高められます」

意識するかどうかにかかわらず、教師はまちがいなくこれらの価値観を生徒に伝えているのです★。

まったくその通りで、この部分の認識が乏しいです。もし、意識や認識が乏しいままだと、負の価値観やメッセージが生徒たちに伝わる可能性が大なのに・・・・!

SELのニーズに対処するための取り組みは、1983年の研究にまでさかのぼれます。その研究では能力(コンピテンス)を、「ニーズに対する柔軟で適応力のある反応をつくりだしたり、調整したりする力、および環境のなかで機会を生みだして活用する力」と表現しています。言い換えれば、有能な人々には適応力があり、適切な方法で状況に対応し、所属するコミュニティーのなかでチャンスを求めるということです。こうした力を、私たちは生徒に望んでいるのではないでしょうか。つまり学校は、これら一連のスキルが身につくように力を注ぐべきなのです。

年々、SELに対する考え方は進化してきました。1997年にSELが一連の能力で構成されていると示されましたが、別の研究者たちが以下の能力としてSELを説明しています。

•感情の認識と管理

•前向きな目標の設定と達成

•他者視点の理解

•生産的な対人関係の確立と維持

•責任ある意思決定

•対人関係の諸問題の建設的な処理

 

そして2005年、教科指導とSELの統合を推進することを目的として1994年に設立された非営利団体「CASELCollaborative for Academic, Social, and Emotional Learning」が、相互に関連する五つの認知・感情・行動の能力を次のように定義しました。

自己への気づき(自己認識)――自分の感情、価値観、行動を内省する能力

他者への気づき(社会認識)――別の視点から状況を眺める能力、他者の社会的および文化的規範を尊重する能力、多様性を称える能力

対人関係スキル――仲間や教師、家族、その他の集団との前向きなつながりを築き、維持する能力

自己のコントロール(自己管理能力)――動機づけ、目標設定、計画遂行、自制心、衝動のコントロール、およびストレス対処法の使用を含む一連のスキル

責任ある意思決定――自他の幸福を考慮した選択を行う能力

 

また、最新の書籍では、「ウォレス財団」のモデルによってSELの三領域が定義されています。

認知の調整(自ら考えや行動を観察して、適切に修正する)――注意力や集中力を自らコントロールする「注意制御」、不適切な反応を抑制する「抑制制御」、「ワーキングメモリ(短期記憶)」と「計画性」、および柔軟に物事を考える「認知的柔軟性」

感情の機能――感情の認識と表現、感情と行動の調整、および共感または他者の視点を取得

社会的・対人関係スキル――社会的手がかりの理解、葛藤解決(いじめ問題など、対人関係上のトラブル解決)、および向社会的行動(ほかの人々や社会に貢献する自発的行動)

 こうしたSELの捉え方の進化を踏まえて、この本の著者たちは、http://wwletter.blogspot.com/2023/02/sel.html の図に見られる「統合したSEL」の枠組みを考え出しました。

 

4)『SELを成功に導く5つの要素(仮題)』(ローラ・ウィーヴァ―ほか著、高見佐知ほか訳、新評論、2023年)では、

SELプログラムは学力向上にも役立ちます。学力とSELの統合を目的にして1994年に設立された非営利団体「CASELCollaborative for Academic, Social, and Emotional Learning)」は、SELを次のように説明しています。

「SELは、子どもと大人が人生を意味あるものにするために必要となるスキルを身につけるのを助けるプロセスであり、自分自身や周りの人、そして仕事に対して、効果的かつ倫理的にかかわっていくために誰しもが必要とされるスキルを養ってくれます」(図1-5参照)

27万人近くの幼稚園児から高校生までを対象とした研究のメタ分析(2011年までに発表された213本の研究が対象)では、この主張を大きく裏づける結果が出ました。SELプログラムに取り組む生徒は、SELスキル、態度、行動に大幅な改善が見られ、学力が11パーセント上昇したことが分かりました。また、ある研究グループは、2006年に発表した論文のなかで次のように結論づけています。

「生徒のSELの発達を促すことは、学力向上の基盤づくりに役立つだけでなく、学習者にとって安全で思いやりがあり、包括的な環境を整えるための基盤づくりにも役立つ。それは、社会的責任をもつ市民であるための、普遍的な人間性(人を思いやる、善悪の判断ができる、人を尊重する)を育む環境である」(44~45ページ)

 

 著者によって、SELの捉え方やCASELの5本の柱の解釈の仕方に微妙な違いがあります。CASEL以外のSELの柱ってありますか? また、SELのより分かりやすい説明をご存じの方は、pro.workshop@gmail.com宛に教えてください。