2023年12月2日土曜日

SELのプログラムに関する問い合わせ2

 前回の齋藤さんからのご質問に関連して、アメリカでの実践について情報提供させていただきます。

 実践においての障壁や難しい点、失敗談やうまくいったことなど、現場の先生のご経験から学ばせていただければと思います。


SELプログラム

 前回の記事の通り、SELはプログラムとしてではなく、日々の学習のなかに取り入れていただくのが一番だと思います。もちろん授業内容に即して「取り入れる」ことが理想的だとは思いますが、数分でできるアクティビティもたくさんありますので、授業の初めや終わり、時間があるときにSELのアクティビティをできるようにしておくのもよいかもしれません。


 日々の学びに取り入れることが必要だと認識したうえで、SELのプログラムについていくつかの学区の情報についてみてみましたが、Healthの授業の時間を系統的にSELを学ぶ時間に当てているところが多いようです。子どもの学校では、7,8年生に週に2回Health(67分、45分)の時間があり、そこでSELについて学んでいます。先月は、『感情と社会性を育む学び (SEL)』にも紹介されているグリッターボトルを作り、マインドフルネスについて学んできました。


 たとえば、7年生の場合は、Healthの授業で、自己認識、ストレス対処、必要なサポートへのアクセス、マインドフルネス、健全な人間関係、聴く力、アンガーマネジメント、対立の解決、いじめ防止などがSELに関連した項目が取り扱われています。


 また、小学校では、アートの時間にSELを取り入れていることが多くなっています。自己表現と合わせて、自己認識についてふり返る機会が多くあります。


SELアンケート

 子どもたちの実態把握のため、学区全体で、毎年10月、1月、4月にSELに関するスクリーニングを行っています。こちらは、Panorama Educationのアンケートを利用しています。項目は、子どもたちのグリット、成長マインドセット、日々の感情や自己認識、自己管理、社会認識、共感する力、学校の安全性、多様性、所属意識などを測るものになっています。


 アンケート結果を基にして、子どもたちに必要なことを日々の時間やHealthの時間に重点的に教え、実践の時間をつくっているようです。そして、子どもたちのアンケート結果の変化を一年を通じて、もしくは学年を越えて毎年みていくことで、SELに関連したスキルの成長を評価しています。


 また、子どもたちと同時に教師自身の感情と社会性に関わるスキルを評価し、必要な支援は何か考えるためにアンケートも実践している学校もあります。

2023年11月18日土曜日

SELのプログラムに関する問い合わせ

以下のようなSELのプログラムに関する問い合わせを、新潟の公立中学校(理科担当)で教えている齊藤先生(仮名)からいただきました。

***

SELについて、ここ最近多くの書籍を読み、学んでおります。
きっかけは、自分の目の前の生徒が感情をコントロールすることが苦手で、荒れている状態を目の当たりにしたことです。そのときは、どうして、自分の感情をコントロールできないのか、自己制御するにはどうしたらいいのか、といったことを考えていました。そんなとき、SELというものがあることを知りました。

本を読み進めていく内に、たくさんの疑問が出てきたので、こうしてご連絡を差し上げた次第です。大変ご多用のところ恐縮ではありますが、SELについて教えていただければ幸いです。

1SELを年間通しての授業を行う場合、どのようなプログラムを導入するのがいいのか。2SELとして中学生に行うのに、最初に教えるプログラム(授業)は何か。

3SELプログラムの多くがSSTのように感じてしまうが、それをやったことで果たしてSELで付けたい力がつくのか。

4SELはものすごく大きなまとまりであり、近年話題になったグリットやレジリエンス、アンガー・コントロールなど、そのような指導も含めてSELなのか。

***

齊藤先生の質問に対する回答は、次の通りでした。

0.    (最初にいただいた齊藤先生からのメールの質問である)SELとは何か。

https://selnewsletter.blogspot.com/2023/06/sel.html がかなり網羅していると思います。

1SELを年間通しての授業を行う場合、どのようなプログラムを導入するのがいいのか。

齊藤先生は、「このプログラムがおすすめです」という答えを期待しての質問かと思いますが、残念ながら、どの学校にもベストなプログラムは存在しません★。

それもあって、『感情と社会性を育む学び(SEL)』の最終章のタイトルは、「プログラムではなく、人がSELに好影響を及ぼす」になっていますし、いま読まれている『学びは、すべてSEL』の最終章も、注意深くプログラムの選定をする作業を、その具体的な方法を示す形で紹介しています。そのようなステップを踏まない安易なプログラムの選定は、教師たちに「自分たちはSELを実践している」という安心感は提供できても、効果はほとんど得られないでしょう(生徒たちが、SELのスキルを身につけることはできないでしょう)。

それは、いま日本で行われている道徳の授業と同じレベルと言えます。ほとんど誰も、意味を感じられない状態が続いていませんか?★★

そのことが、私が1998年頃にSELの存在は知って、紹介する価値を切実に感じましたが、動けなかった理由です。私には唯一のプログラムを紹介することも、また開発することもできませんから★★★。そんななかで、20年以上待って、見つけたのが、

・『感情と社会性を育む学び(SL)』

・『まなびは、すべてSEL

・『成績だけが評価じゃない』 ~ これは、評価とSELの関係との本

・『SELを成功に導くための五つの要素』

・『「居場所」のある学級・学校づくり』 ~ これは、学級経営とSELとの関係の本(なかでも、一番のポイントは第6章「生徒を惹きつける、生徒主体の授業が居場所の原動力」)。「居場所」をSELに置き換えられます。逆にいえば、授業での指導法に大きな問題があることが、SELのニーズを生み出しているからです。授業の改善を図らない限りは、尻拭い(生徒指導やSEL)をやり続ける必要があることを意味します!

・『生徒指導をハックする』 ~ これは、生徒指導とSELとの関係の本

https://projectbetterschool.blogspot.com/2020/06/blog-post_21.htmlで紹介されている本も全部!(特に、『オープニングマインド』と明石書店に版権を取られてしまった2冊は、成長マインドセット関連の本です。もし、読んでみたければ、PDFファイルをお送りします。読んで感想を書く義務が生じますが。成長マインドセットではなく、固定マインドセットが日本の教育や教室に充満していることが、生徒指導やSELの必要性をつくり出しています。

・『一人ひとりを大切にする学校』 ~ SELを実践しているとは一言も著者は言っていませんが、理想的な形でそれが行われていることが分かる本。

・『国語の未来は「本づくり」』 ~ SELと国語指導を融合した実践例として書かれた本。https://selnewsletter.blogspot.com/2023/10/eq.html から分かるように、EQやSELと強調しなくても、ライティング・ワークショップ(作家の時間)やリーディング・プロジェクト(読書家の時間)を実践すると自然とそれらのスキルや資質が身につきます。もちろん、この理科版、社会科版、数学版等が考えられます。

・『だれもが科学者になれる!』 ~ 上記の理科版。

などでした。

特に、『SELを成功に導くための五つの要素』は、SELに関する教員研修のやり方を紹介している本と言えますし、クラスや学校レベルで、どのようなステップで進めたらいいのかも親切に書かれた本です。

★ 同じことは、実は教科書というプログラムにも言えるのですが、誰もそれを口に出そうとはしません。一つの教科書が、誰にも等しく意味がある/価値があるなんてことは、あり得ません! 

★★ 道徳を例に挙げて説明しましたが、状況は他の教科も同じです。教師は、教科書をカバーしていれば、意義のあることをしているという錯覚をもてますが、果たして生徒たちはどれだけ学べているでしょうか? 先生たちの口癖として「教えたのに、覚えてないの?」があります。覚えていないのは、真の意味では教えていないからです。残らないのは、必然性を生徒たちが感じていないからです。そうした状況に加えて、今度はSELを加えていいのでしょうか? 要するに、教科指導のあり方自体を根本的に見直す必要性に迫られている、ということです! これについては、『学びの中心はやっぱり生徒が!』が参考になります。

★★★SEL関連の調査および普及機関である「CASEL: Collaborative for Academic, Social and Emotional Learning」やハーバード大学にベースを置く「EASEL: The Ecological Approaches to Social Emotional Learning」が出しているレポートでは、40~50のプログラムが比較紹介されています。さらに、それ以外のプログラムが数百もあると言われています。

 

2SELとして中学生に行うのに、最初に教えるプログラム(授業)は何か。

 上と関連しますが、中学生と一言でいっても、いろいろな中学生がいます。(教師の視点で)問題を抱えた中学生、なんの問題も抱えていない中学生、そしてその間の多様な中学生。

 言わんとしていることは、安易に、誰かが推薦するプログラムや活動に飛びつかないことです。何よりも、教室(と学校)の実態把握から始めないと、どのプログラム/活動を最初にすればいいかなんて、分かるはずがありません。(それが、教科書が機能しない理由です!生徒たちのことをまったく知らない人たちが、「これをすればいいのです」と言い切っているのですから。言われた側は、そういってくれると楽ですし、ありがたがるかもしれませんが、生徒たちの学びは最低限が続くことが約束されています。生徒たちには、それらをする必然性がありませんから。)

 だからと言って、何もできないか、というと、そんなことはありません。対象とする生徒たちのニーズと、教師が必要性を感じていること(生徒に身につけてほしいスキルや態度等)を熟考して、それらを満たす活動を選んだり、考えたりすることはできます。

 この返信のなかで紹介した本や資料のなかから、齊藤先生+2~3人の他の先生が、「これはやりたいよね」というのを個別にリストアップして、それをすり合わせる形で、選択すれば、結構いい活動が選ばれ、そしてプログラムになる可能性大です。大切なのは、プロセスです(誰かが選んだ結果ではなく!)。

 

3SELプログラムの多くがSSTのように感じてしまうが、それをやったことで果たしてSELで付けたい力がつくのか。

私自身は、SSTには興味をもったことがないので、2つの比較と言われても答えられません。ネットで検索したところ、SSTは、

1.人間関係で適切なコミュニケーションが取れるようになる

2.自身の感情をコントロールできるようになる

3.相手の気持ちを考えた行動ができるようになる

の3つを目的にしたプログラムということで、齊藤先生も理解していますか?

この3つの項目と、CASELの5本の柱を比較すると、一見、3つの領域でオーバーラップしているように目えますが、いま齊藤先生が読まれている『学びは、すべてSEL』のなかで捉えられているSELの項目(http://wwletter.blogspot.com/2023/02/sel.htmlの図) と詳しく比較すると、第2章、4,6章は丸ごと抜け落ちていますし、第3章と第5章も、ほんの一部で接点があるだけなのが分かります。

これで、齊藤先生が質問3で書いているように言えるでしょうか?

上記のURLの冒頭のライティングとリーディング・ワークショップ(WW/RW)の実践者が書いた文章を読んでみてください。この実践者は、SELを実践しているという意識は薄いか、ないと思います。しかし、この本で紹介されている第2~6章のかなりの部分を押さえてしまう実践をしているのです。この方が、齊藤先生が質問の1と2で質問しているSELのプログラム(SELに特化したプログラム)をするよりも、はるかに効果的です。その理由は分かりますか? 質問の1や2でするプログラムや活動は、道徳の授業みたいなものです。一過性のイベントという意味で。それに対して、上記のURLで紹介されているような実践を目ざさない限りは、定着しないというか、身につかないというか、本物ものにならないというか・・・・時間をかける意味がないというか、です。

なお、SSTもSELも言われるはるか前の1990年代の初頭に出た本が、http://www.eric-next.org/reflect_read.html#textsでリストアップされていますが、特に『いっしょに学ぼう』『いっしょにできるよ』『わたし、あなた、そしてみんな』は、おすすめです。最初の2つはSSTの内容そのものですし、『わたし、あなた、そしてみんな』はSELの内容と言えます。(前者2冊は小学校中学年ぐらいまでを念頭に開発され、後者は高校生を対象に開発されたものですが、教員研修でも使っていたので、対象に限らず使える内容です。)

 

4SELはものすごく大きなまとまりであり、近年話題になったグリットやレジリエンス、アンガー・コントロールなど、そのような指導も含めてSELなのか。

はい。上記で紹介した図http://wwletter.blogspot.com/2023/02/sel.htmlから分かるように、グリット(やる抜く力)やレジリエンスは第2章に、アンガー・コントロール/ストレス・マネジメントなどは、第3章に含まれています。

『成績だけが評価じゃない』では、https://bit.ly/3XZmfbhSELと捉えていますから、さらに大きな枠組みになります。しかし、「思考の習慣」は、https://projectbetterschool.blogspot.com/2022/11/blog-post_20.htmlにあるように「まともな教師を含めた社会人」として生きていくうえで必要な資質やスキルばかりだと思われませんか? 現時点で、それらの資質やスキルは、どこで身につけられているでしょうか? 学校や大学でやらなくて、身につける努力をせずに、いったいどこで身につけられるのでしょうか?

2023年11月4日土曜日

目標を設定し、計画を立てて行動する

  SELのなかで自己管理は、「自分の感情と行動をコントロールし、目標を達成する」ことです。これには、目標を設定し、計画を立て、達成に向けて行動する経験を積み、目先の欲求に対して我慢する力や脳の実行機能(Exective function)を訓練していくことが大切です。

 実現可能だと思える目標とそれに向けた計画、意欲がある場合、脳の学ぶ効率が最大限に高まります。そのためには、生徒自身が自分にとって意義のある目標を設定することが第一歩です。生徒自身に選択させることは、学びを自分のものと捉え、主体性を高めることに、そして、計画を実行し、目標達成に向かっていくことは、自己効力感を育みます。


 今回は、一時間~一週間単位で目標設定からふり返りまで行うWhat I Need(WIN)という方法と、SMART Goalsという中長期的な目標を立てる方法をご紹介します。


What I NEED Time

 What I Need(WIN)の時間では、目標を定め、自分で時間を管理することを経験します。たとえば、教師に質問や相談をしたり、終わっていない課題に取り組んだり、欠席したときの補習をしたりする時間です。さらには、学業的なことに限らず、生徒の興味関心、コンピュータのプログラミングやマインドフルネスの呼吸法を練習するなど、自己研鑽につなげる時間として使うこともできます。単に自習の時間とも捉えることができますが、制限のない自由な時間ではなく、目標設定や実行、ふり返りを含む意図的に計画された学びの時間です。


 初めの5分~10分は、生徒にとって必要な日常的なスキル(ノートの取り方や、インターネットの使い方、教師にEmailを送るときのマナ―など)について教えるのもよいでしょう。ここでは、課題となっていることを乗り越えられるためのヒントを伝えることを目的とし、画一的な方法ではなく、ひとりひとりにとって最適な方法が見つかるようにさまざまな方法を紹介します。


 サポートが必要な生徒には、その週に「面談するべき教員」のリストと面談可能な時間、場所、面談に必要な時間の長さ、優先度などが記入されたグーグルシートを共有します。生徒はそのシートを見て、もしくは、自分に価値のある時間の過ごし方を考え、残りの授業時間の目標設定フォームに記入します。WINの時間に何をするかとそれを行う理由、それぞれの課題に予測される所要時間、どのようなリソースが必要かを考え、記入します。


 生徒はその後の時間で計画を実行します。終了時間5分前には席に戻り、目標を達成できたかどうかふりかえりシートに記入します。目標の達成に関わらず、次のWINの時間にどのような方法を使うかについて考えます。


SMART 目標

SMART Goalsの、SMARTは、次の意味です。

S: Specificー具体的 [達成したい/する価値がある具体的な目標] M: Measurable - 測定可能な [目標達成のための基準] A: Action Oriented - 行動志向の [目標を達成するための具体的な行動] R: Realistic - 現実的な [現状のリソースと制限を踏まえたうえでの実現可能なもの] T: Timely - 時宜を得た [妥当で集中力が切れない適切な期間設定]


娘の中学校では、学期の初めに健康目標を立てるために次のワークシートを使って行っていました。

 まず、目標を決定し、ワークシートのSMARTの項目を考えます。その後、SMART目標を文章化します。(例「私のSMART目標は、______(S)です。_______となったら目標が達成できたことになります(M)。そのためには、_____の行動をします(A)。___の期間で達成できると思います(T)」)


 次に、目標を設定する理由や、なぜその目標が大切なのかを書きます。そして、どのように目標を達成するのか具体的な行動計画を立てます。ここでは、何曜日の何時から何時まで、どこで何を行うのかということを記します。そして、目標が達成できると生活にどのような影響があるのかを選択します(満足感、ストレス軽減、自己肯定感の向上、体力向上、やる気の向上、人間関係の深まり、などから選択)。


 最後に目標達成に向けて「私___は、この計画を遂行するために努力し、生活を変えることを誓います」宣言と署名をし、保護者からも署名をしてもらいます。


 このSMART目標について、計画の調整や自分の行動をふり返る時間を定期的に設けます。


 目標設定の期間に関わらず、これらのプロセスでは、生徒を評価するのではなく、生徒が自分でふり返るスキルを育めるようにすることが大切です。さらには、生徒が常に援助を求められる環境にすることが大切です。自ら必要なことを認識し、ほかに援助を求めることもスキルの一つです。必要なときに生徒が課題を共有したり、質問をしたり、目標達成に向けて計画の見直しやアドバイスをしたりすることを促すことも必要です。


 また、目標が達成できたらどのようにして祝うか、ということを考えることで、目標に向けて肯定的で、探究する化学物質のドーパミンが放出されることにもつながります。


 低学年でも、視覚的表現を用いることで、目標設定や、達成するための段階を考えたり、自分がどのあたりにいるかを認識したりすることができます。



参考資料 

2023年10月28日土曜日

コミュニティー・サークルというパワフルな活動  ~共感13

 あなたは、コミュニティー・サークルというパワフルな活動をご存じですか?

 常時実践している先生は、身のまわりにいますか?

 (他にも、単なる「サークル」、あるいは「魔法のマイク」「シェアリング・サークル」「おしゃべりサークル」などの名称でも呼ばれています。) 生徒相互の共感、コミュニケーションを図るのに、とても優れた活動です。


 これをすることのメリットとして、ある教師は、

・すべての活動において、生徒同士の結束力が高まる

・普段の授業でも、積極的に発言するようになる

・リスクを取ることが増える

・個人的な考えや感情を共有することへの安心感と自信が増す

などを挙げています(『聞くことから始めよう!』239ページ)。これらは、彼が実践した結果獲得したことですが、彼は自分が教員研修で体験したことによって、そうしたメリットとは関係なく、生徒たちにも体験してもらいたくなってしまった、というのが本音のところのようです(同、230~231ページ)。

 

 サークルをする際の参加者の責任と期待には、次のようなものがあります。

・生徒は、発言するように促される。(ボールやぬいぐるみや枝などの物を手渡されることで、視覚的にその人のみが話せることを表す効果がある。)だからと言って、発言することを強制されない。発言せずに、パスすることができる。

・一人(=何か物を持っている者)だけが発言し、他の人は敬意をもって聴く。

・ファシリテーターにではなく、生徒は互いに話し合う。

 

 ちなみに、この活動でのファシリテーターの役割は、上記のような質問を紹介し、まずは自分からそれへの答えを発言することぐらいです。(目的によっては、サークルが終わった後の振り返りの進行役を担うこともあります。)

 

サークルを最初に導入するときのテーマは、次のようなものがあります(賛否が分かれたり人を傷つけたりすることのない安全なものであることが大切です。その場合、「正しい」答えがない質問を使うので感情的な負担も少なくなります):

・もし、あなたがすごい力をもっていたとしたら、それはどんな力で、なぜですか?

・もし、あなたが動物になれるとしたら、何を選びますか? どうしてですか?

・あなたの夢における休暇はどのようなものですか?

・あなたをもっともよく表す言葉は何ですか?

・もし、あなたがある島から出られなくなったとしたら、欲しいものは何ですか?

・あなたが好きな色は何色ですか? (『学びは、すべてSEL』201ページ)

 

 教科指導で使う場合は、例えば歴史の授業で使う場合は、次のような質問が考えられます。

 ・第二次世界大戦と聞いて、どのようなイメージがまず浮かびますか?

 ・あなたの家族や地域が第二次世界大戦の影響を受けたことを知っていますか? どんな影響でしたか? (『聞くことから始めよう!』238ページ)

 

 (これまでの自分たちの考えや思いなどを聞かれた経験がない場合や、対象年齢が上がるに従って)最初からみんなが積極的に発言することは期待できないので、数回はぎこちなくても続けることが大切です。徐々に、みんなが発言できるようになります。個人差もありますから、話す用意ができるまで待つ必要もあります。

 

 サークルは、授業の初め、真ん中、終わりで活用したり、①順番に発言する、②順番に発言しない、③金魚鉢方式(2つのサークルをつくり、内側の人だけが話し、外側の人は聞くタイプ)などの多様な方法もあります(『学びは、すべてSEL』202~210ページ)

 

なお、バリエーション(というか、サークルの発展形)としての「スパイダー・ウェブ討論」もお勧めで、そのやり方は『最高の授業』アレキシス・ウィギンズ著で詳しく紹介されています。教師役は話し合いのテーマを提供したら、その後は、サークルの外で観察しながら「蜘蛛の巣図」を描く役割を担います。生徒たちは最初の内はかなり偏った図になってしまう話し合いしかできませんが、繰り返し(5回~10回)行うことで本当の蜘蛛の巣図のようないい形を描く話し合いができることから、このネーミングになっています。また、サークルという形だと時間がかかると判断したときは、ペアや小グループでするのも効果的です(『私にも言いたいことがあります!』98~103ページ「さまざまな形態のペア・グループ活動」を参照)。

 

今回の記事を書くのに特に参考にしたのは、『学びは、すべてSEL』196~210ページ、『聞くことから始めよう!』228~240ページ、そして『生徒指導をハックする』第2章でした。

 

なお、毎月第2と第4土曜日にSEL便りのスピンオフとして書いてきた「共感」をテーマにした連載は今回で終わりにします。来週からは、毎月第1と第3土曜日に戻ります。

2023年10月21日土曜日

教育委員会が、SELの推進に大切な役割を果たしているアメリカ

その具体例としてカリフォルニア州のサンフランシスコの対岸に位置するオークランドの例を紹介します。(ちなみに、オークランドは、MLBの野球チームのアスレティックスと、NBAの強豪ゴールデンステイト・ウォリアーズの本拠地でもあります。)

 https://sites.google.com/ousd.org/ousdsel/home のサイトをご覧ください。

 SELを推進するための専用サイトです。(日本で、このようなサイトを教育委員会が運営するようになるまで、あと何年かかるのかな、と思ってしまいました! 評価やより生徒たちが前のめりに学べるような方法の紹介など、他のテーマでも教育委員会が情報発信できることはたくさんあります!)

 この中には、教師用のオンライン研修講座も提供されています。

 https://sites.google.com/ousd.org/ousdsel/implementation/sel-pd-resources

さらに、研究がSELを実践することの価値を証明していることも

https://sites.google.com/ousd.org/ousdsel/sel-research で見られるようになっています。

 

 もう一つは、アラスカ州のアンカレッジも、教育委員会のサイトのなかにSELのセクションがありました。https://www.asdk12.org/Page/6643

 そのなかには、具体的に教室や学校で取り組める活動も紹介しています。https://drive.google.com/file/d/1bRrGYwZoM9TMNK0IFR82e0ePeuMMP-Td/view

 さらには、保護者がSELに関連して出来ることhttps://www.asdk12.org/Page/6644も提供されています。

 

 もし、あなたが似たような情報を(国内外で)見つけられましたら、右側にあるメール・アドレス宛に、ぜひ教えてください。お願いします。

2023年10月14日土曜日

自分たちのストーリーを語り合う ~共感12

 夏休み前に、ストーリーを生徒たちが語る/書くことの大切さが書かれた本のブッククラブをしていました。一人ひとりがみんな、かけがえのないストーリーをもっているにもかかわらず、学校という場はそれらを共有する場にはあまりなっておらず、常に他の誰か(権威をもった人である場合が多い?)が語った/書いたものを聞いたり、読んだりする場になっています。それで、生徒たちは「自分が地域や世界に影響力をもちえる人間なんだ」という感覚★をもつことはできるでしょうか?

 そのためのベースが、「共感を大切にしたクラスづくり」だと言います。

 その際、互いに対して共感すると同時に、自分に対しても共感することを強調しています。つまり、自分のアイデンティティーや自分の居場所があるという感覚がもてることを意味します。

 文学作品の多くや、自分たちが体験しているストーリーの多くは、他者の視点に立てることの大切さや具体的な方法を紹介してくれます。

 ストーリーこそ(共感こそ)が、私たちを人間にしてくれるもの、といえます。

 (https://selnewsletter.blogspot.com/2023/09/blog-post_23.html も参照)

 ストーリーは、他の人の考え、思い、悩み、もがき、生活/生きざま、夢、そして思考のパターンなどを見せてくれるのです。

 https://digitalcast.jp/v/14170/ (日本語の字幕付きの動画)がおすすめです。

 ストーリーは、自分の周りの世界を見ることも促してくれます。しかも、自分の見方とは異なる視点で見ることや。見方を切り替えるのを容易にし、他の人が世界をどう見ているのか/体験しているのかを理解させてくれます。

 共感は、他の人がどう感じているかを知る能力です。他の人の苦痛、悩み、もがき(あるいは、困惑、戸惑い、苛立ち、驚き、喜び・・・)を感じ、それに対して何らかのアクションまでとることも含みます。

 (まさに、このブログで共感シリーズがスタートしたきっかけのhttps://selnewsletter.blogspot.com/2023/05/sel.html や https://selnewsletter.blogspot.com/2023/09/blog-post_16.html 等を参照)

 日本の国語で(ないし学校教育)で、この辺までしている事例はあるでしょうか? それとも、共感をしっかり扱ったうえで、アクション(行動)の部分とは分けたままでいいのでしょうか?

★これは、engagement, agency, ownership, empowerment, innovationなどの感覚と言い換えられます。日本の教育からはなかなか生まれないものばかりなので、日本語にすることが難しく、せいぜいカタカナにするのが精いっぱいの言葉ばかりであり続けています!

 

2023年10月7日土曜日

EQとは?

 以下は、May 17, 2010に、「ライティング・ワークショップ=WW=作家の時間」★のサイトに掲載した、WWの思わぬ(偉大な)おまけ = EQとライフスキル」というタイトルの記事のコピーです。(いまは、サイト自体が消されてしまい、アクセスしにくい状態なので、下に貼り付けます。)

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エンカウンター、PA(プロジェクト・アドベンチャー)、NLP( 神経言語プログラミング)、構成的グループエンカウンター、ドラマ教育、環境・人権・平和・開発・多文化理解・グローバル教育などのアクティビティーを使ってクラスづくりができることは、別項で触れましたが、実はWWをすることで、EQやライフスキルのほとんど(技能、態度、資質)が身につくことがわかってきました。

  というのも、上の各種プログラムを知らずに小学校低学年から高校まででWWを実践している先生たちに、下の表を見てもらい、どのくらいが身についているか聞いたのです。その答えは、「ほとんど全部」でした。 (なお、EQとは、「こころの知能指数」のことで、マルチ能力=MIの自己観察・管理能力と人間関係形成能力に相当します。)

従来の作文指導で、これらのどれだけが身につくでしょうか?

 この表は、『校長先生という仕事』の174ページから貼り付けました。その意味では、校長先生をはじめ学校のリーダーにはもっていてほしいスキルなわけです。それが、WWを教えたり、学んだりする中で身についてしまうのですから、一石二鳥どころか、一石三鳥、四鳥だと思われませんか? もちろん、人間誰しもがこれらのスキルをもっていれば、生きやすくなりますし、成功にも近づきます。

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 EQSELの違いについては、上記の表(EQ)とhttp://wwletter.blogspot.com/2023/02/sel.html の図にある項目を比較していただくと、ほぼオーバーラップしていることが分かります。表の「自分自身のコントロール」は図の第2~4章に、表の「関係づくり」は図の第5~6章に。しかし、表の右側のライフスキルの項目と比較すると、さほど多くはありませんが、SELにはあって、EQにはないものがいくつかあることにも気づきます。

★ WW=ライティング・ワークショップについては、先週のSEL便り(https://selnewsletter.blogspot.com/2023/09/blog-post_30.html)をご覧ください。