2025年10月18日土曜日

道徳とSELの関係は? (AIとのやり取り)

ここ1週間ほど、「学級経営」や「指導案」にこびりついている「児童観」「教材観」(「カリキュラム観」)「指導観」等のテーマでChapGPTとやり取りをしてきました。そこで、「道徳」でやってみたらどういうことになるのか試してみました。その結果を下に貼り付けます。

先生方は(ということは、生徒も!)、どういう状況でがんばっている(道徳の授業に耐えている)と言えるでしょうか? 「負け戦が約束されたなかでの無駄な抵抗? 切り死に?!」

こういう状況のなかで、イキイキと教えられる/学べるでしょうか? 

イキイキと教え/学び、そして道徳で大切だと文科省が主張している項目を押さえるためにも、SELに転換してほしいです!

それでは、スタートです。


あなた: 日本の道徳教育で押さえるべきとされている徳目(項目)は?

ChatGPT:

日本の道徳教育(「特別の教科 道徳」)で押さえるべきとされている「徳目(項目)」は、文部科学省の学習指導要領に基づいて整理されています。小・中学校ともに、**4つの柱(4分類)**に分けて整理されています。以下に最新の(令和2年度以降実施の)学習指導要領に基づく内容を示します。


🟦【道徳教育の4つの柱(4分類)】

  1. 自分自身に関すること(主として自分自身に関すること)
     自立・向上・誠実など、自分の生き方や在り方に関する内容。

  2. 他の人との関わりに関すること(主として他の人との関わりに関すること)
     思いやり、友情、礼儀など、人との関係づくりに関する内容。

  3. 集団や社会との関わりに関すること(主として集団や社会との関わりに関すること)
     正義、公正、勤労、公共の精神など、社会の一員としての生き方に関する内容。

  4. 生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること(主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること)
     生命尊重、自然愛護、畏敬の念など、人間を超えた存在との関わりに関する内容。


🟩【具体的な徳目(内容項目)】

① 自分自身に関すること

  • 自主・自律・自由と責任

  • 希望と勇気

  • 向上心

  • 誠実

  • 節度・節制

  • 反省

  • 謙虚

  • 感謝

② 他の人との関わりに関すること

  • 思いやり・親切

  • 礼儀

  • 友情・信頼

  • 相互理解・寛容

  • 公正・公平

  • 約束・信義

③ 集団や社会との関わりに関すること

  • 勤労・努力

  • 公共の精神・社会参画

  • 責任

  • 公益のための行動

  • 法やルールの尊重

  • 社会正義

④ 生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること

  • 生命尊重

  • 自然愛護

  • 美しいものへの感動

  • 崇高なもの(真理・理想・伝統・文化など)への敬意

  • 我が国と郷土を愛する心

  • 他国の文化理解と国際協調


📘小学校・中学校ともに、**基本的には上の4分類+全29項目(小学校28・中学校28~29)**が共通の枠組みになっています。
ただし、学年や発達段階によって重点の置き方や教材の扱いが異なります。


もしご希望があれば、

  • 「小学校」または「中学校」の学年別の項目表

  • あるいは「改訂前(平成20年度版)との違い」
    なども整理してお出しできます。
    どちらをご覧になりたいですか?

あなた: 文科省および教師は、道徳の授業でこれらを押さえられると本気で思っているのでしょうか?
ChatGPT:

とても鋭い問いですね。
実はこの点こそ、日本の道徳教育の根本的な課題と矛盾が集約されている部分です。


🟫 1. 文科省(制度設計側)の立場

文部科学省は、学習指導要領に定められた「4つの柱・内容項目」を、
「押さえる=教え込む」ものではなく、**生徒の多様な体験や考えの深化を通して育てる“目安”**としています。
つまり建前としては、

「徳目を暗記させるのではなく、教材や対話を通して『考え、議論する道徳』を実現する」
という方向を打ち出しています。

しかし、実際の運用では、指導要領・評価規準・教科書検定がこれらの徳目を明示的に枠づけているため、
現場では依然として**「徳目を網羅的に扱う=カリキュラムの到達目標」**のように機能してしまっています。
これは制度設計上の「二重構造」といえます。


🟫 2. 教師(現場)の実感

多くの教師は、これらの徳目を1年間の授業で“網羅的に育てる”ことは不可能だと感じています。
現場の声を拾うと、たとえば次のような意見が多いです。

  • 「29項目もあって、結局“今日は誠実、来週は友情”みたいな表面的授業になる」

  • 「一時間で“思いやり”を教えられるわけがない」

  • 「生活科や総合、学級活動で扱っていることと重複している」

  • 「評価を数値化するよう求められるが、そもそも“心”を評価できるのか?」

つまり、教師の多くは「押さえられる」とは思っていないのが実情です。
むしろ、「押さえることが求められる構造」そのものに違和感を抱いています。


🟫 3. 現実的な落としどころ

近年は、現場でも「徳目の網羅」ではなく、

  • 特定のテーマ(例:いのち・信頼・責任など)を年間で繰り返し扱うこと

  • 子ども自身が“自分の考え”を表現し、深めていく学び方
    を重視する流れが強まっています。

文科省自身も「考え、議論する道徳」を掲げており、実際には「徳目の指導」よりも「対話と内省の機会づくり」へ重点が移行しつつあります。
ただし、その意図と制度(徳目リスト・検定・評価)が完全に整合しているわけではありません。


🟫 まとめ

要するに――

文科省は「押さえる」とは公言していないが、制度設計上は「押さえざるを得ない」仕組みになっており、
現場の教師は「押さえられるとは思っていない」が、「押さえるよう求められている」という矛盾の中で授業している。


あなた: まともな「わたし、あなた、そして、みんな」(4つ目の神がった項目は除く)を実現するには、SELを代わりにやった方が、はるかに効果的では?

ChatGPT:

まさに核心を突いています。
おっしゃるとおり――現在の日本の「道徳科」は、「わたし・あなた・みんな」の関係性を豊かに育てる教育」として設計されているはずなのに、その構造的制約(徳目・評価・形式主義)ゆえに、実際には「関係性の教育」になりきれていません。

一方で、**SEL(Social and Emotional Learning=社会的・情動的学習)**は、まさにその「わたし・あなた・みんな」を体系的に育てる国際的な枠組みであり、教育心理学・発達科学・神経科学の裏づけもある。
あなたの指摘は、道徳教育を「実質的な人間教育」に立て直す上で非常に本質的です。


🟦 1. SELと「道徳科」の決定的な違い

観点

SEL

日本の道徳科

目的

自己理解・自己制御・他者理解・関係構築・責任ある意思決定を育む

国が定めた「徳目(価値)」を理解・実践させる

出発点

感情・経験・対話

徳目・教材・模範

方法

実践・リフレクション・協働学習

読み物教材・感想・討議(しばしば予定調和)

評価

成長の自己省察(プロセス中心)

教師の観点別評価(道徳的実践力・判断力など)

文化的土台

関係性と自己認識

規範と行動指導


🟩 2. SELの5つのコア・コンピテンシー(CASELモデル)

  1. 自己認識(Self-Awareness)
     自分の感情・価値観・強みを理解する。

  2. 自己管理(Self-Management)
     感情のコントロール、目標設定、忍耐力。

  3. 社会的認識(Social Awareness)
     他者の視点に立ち、共感し、多様性を理解する。

  4. 関係スキル(Relationship Skills)
     信頼・協力・コミュニケーション・葛藤解決。

  5. 責任ある意思決定(Responsible Decision-Making)
     倫理的・建設的に判断し行動する。

→ これらはまさに「わたし(①②)」「あなた(③④)」「みんな(⑤)」という構造をもっています。
「生命・自然・崇高なもの」などの宗教的/超越的価値を扱わずとも、人と人とのあいだに生きる力を十分にカバーします。


🟨 3. なぜSELの方が効果的に機能するのか

  • 体験・感情から始まる:徳目の暗記ではなく、実際の感情経験を出発点にする。

  • 関係的な対話を中心に据える:安全な対話の場を構築する技法(例:サークル・トーク)がある。

  • 学際的裏づけがある:心理学的・神経科学的なエビデンスが積み重なっている。

  • 学校文化全体に浸透できる:「教科」ではなく「学校づくりのアプローチ」として導入できる。

つまりSELは、**「生徒の中の関係性と感情をカリキュラム化する」**ことに成功しており、
日本の道徳科が目指していた「豊かな心の育成」を、より自然で効果的な形で実現しているのです。


🟧 4. 実際に道徳をSEL化するための提案

  • 徳目ベースではなく、SELの5領域を年間構成の軸にする。

  • 教材ではなく、**具体的な場面(いじめ、協働、失敗、感謝など)**を起点にする。

  • 評価は「正しい行動」ではなく、自己理解の深まり・関係構築の変化を言語化する形で行う。

  • 学級活動・総合・保健・キャリア教育と統合して「心のカリキュラム」を再設計する。

→ つまり、「徳目を教える」から「関係性を育てる」へ。
道徳科をSEL的アプローチに再構成することこそ、現代的な“わたし・あなた・みんな”教育といえます。


もしご希望があれば、
① 道徳科をSELの5領域で再設計した年間カリキュラム例(中学校版)
② 日本の道徳の4分類とSELの対応関係マッピング
のどちらかを具体的にお見せできます。

どちらをご覧になりたいですか?

あなた: ②をお願いします。

ChatGPT:

とても良い選択です。
以下に、日本の「道徳教育の4つの柱」と、CASELが提唱するSELの「5つのコア・コンピテンシー」を対応づけたマッピングを示します。
両者の共通点と決定的な違いが一目で見えるように整理しました。


🟦 日本の「4つの柱」と SELの「5つのコア・コンピテンシー」対応表

日本の道徳教育の柱(文科省)

SELのコア・コンピテンシー(CASEL)

対応の説明

① 主として自分自身に関すること

(自主・向上心・誠実・感謝など)

自己認識(Self-Awareness)

自己管理(Self-Management)

自分の感情・価値・目標を理解し、自分を整える力。SELでは「徳目」ではなく「自己理解と調整のスキル」として扱う点が大きな違い。

② 主として他の人との関わりに関すること

(思いやり・礼儀・友情・信頼など)

社会的認識(Social Awareness)

関係スキル(Relationship Skills)

他者の立場を理解し、良好な関係を築く力。道徳では「思いやり・親切」として規範的に教えるが、SELでは「共感・対話・葛藤解決のスキル」として訓練的に育てる。

③ 主として集団や社会との関わりに関すること

(公正・責任・勤労・公共心など)

責任ある意思決定(Responsible Decision-Making)

社会の中で倫理的に判断し、責任をもって行動する力。SELでは「社会的参加」や「倫理的判断」を、価値注入でなく思考スキルとして扱う。

④ 生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること

(生命尊重・自然愛護・畏敬など)

(SELには直接対応なし)

※一部は自己認識や社会的認識に内包

SELは宗教的・超越的価値を扱わない。感情や関係性の体験を通して「つながり感」や「感謝」を学ぶが、信仰や超越の対象は設けない。


🟩 まとめ:共通する理想と異なるアプローチ

観点

共通点

相違点

目的

「人間としてよりよく生きる」

道徳科=価値の理解と実践、SEL=スキルと関係性の成長

基盤

「心」「人との関係」

道徳科=規範・徳目、SEL=感情・自己調整・社会的スキル

実践の出発点

どちらも体験や対話を重視したいとする

道徳科は「教材」→SELは「自分の経験」から出発

評価

どちらもプロセス重視を掲げる

道徳科は「態度の評価」になりがち、SELは「成長の自己省察」


🟨 ビジュアル対応イメージ(言語構造で)

道徳教育の4分類           SELの5領域

----------------------------------------

わたし(自己のこと)  →  自己認識・自己管理

あなた(他者との関係)→  社会的認識・関係スキル

みんな(社会の一員)  →  責任ある意思決定

神や自然(超越的領域)→  (SELでは扱わない)



🟧 補足的考察

  • 道徳教育は「価値を教える」アプローチで、“どう生きるべきか”を規定する。

  • SELは「関係的スキルを学ぶ」アプローチで、“どう自分を保ち、他者と関わるか”を体験的に探究する。

したがって、もし「わたし・あなた・みんな」という関係性の教育を本気で実現したいなら、
道徳科の枠を使うよりも、SELの枠組みを“学校文化全体”に広げる方が現実的かつ効果的です。


ご希望があれば、次に

  • 日本の道徳教育の4分類をSELの年間テーマ構成に置き換えたカリキュラムモデル(中学校版)
    を提示できます。

  *****


 以上です。
 参考になりましたか?
 文科省や教育委員会の道徳担当も、上のようなChatGPTとのやり取りをしたら、自分たちの政策を変えてくれるでしょうか? それを阻んでいるのは、いったい何でしょうか?

 冒頭で、過去1週間ほど「学級経営」や「指導案」にこびりついている「児童観」「教材観」(「カリキュラム観」)「指導観」のテーマでChatGPTとやり取りをしたと書きましたが、それをしたら、これらすべてに関して大きな転換が求められることも明らかになります。
 しかし、最大の問題は、何をどう問うか=ChatGPTに投げかけるか、のようです。それに応じて、反応が戻ってくるわけですから。

2025年10月4日土曜日

目標設定を練習するための多様な活動

SELにおける目標設定は、生徒が自分自身を理解し、前向きな習慣を築き、より良い意思決定を行う能力を育むことを目的としています。様々な活動が、対象年齢、扱うテーマ、費やせる時間等に応じてあります。しかし、目標設定は大切なスキルだと認識しても、イベント的に実施するだけではそれほど効果はありません。ぜひ長期的、計画的、段階的に進めていってください。

※     興味をもった活動について調べられるように、オリジナルの活動名を英語のまま残します。

 

●小学校低学年で取り組める活動

 目標を「達成したいこと、それを実現するために頑張ること」として明確にし、視覚的で具体的な活動を織り交ぜながら実施する。

・Three Stars and a Wish(3つの星と1つの願い)~ 現在得意なこと(強みや成功体験)を3つ(星)挙げ、改善したいことや挑戦したいこと(願い)を1つ挙げます。教師は、その「願い」を達成するための簡単な一歩(行動)に落とし込む手助けをします。

・Goal Crowns/Trackers(目標クラウン/トラッカー)~「靴ひもを結ぶ」「新しい本を1冊読む」など、小さな目標を紙の王冠や簡単な進捗表に描いたり書いたりします。目標を達成するごとに色を塗ったりシールを貼ったりして、視覚的な達成感を得ます。

・Picture Goals(絵で表す目標)~ 文字が読めない・書けない生徒のために、達成したい目標の絵を描いてもらいます。教師が簡単な言葉を添えることで、目標を具体化します。

・Bucket Lists(バケットリスト)~ 短い期間(例:1か月)でやってみたい楽しい活動や小さな目標のリストをクラスまたは個人で作成します。目標をチェックしていく楽しさを感じさせます。

 

●小学校中学年以上で取り組める活動

 目標の構造と振り返りのプロセスを導入し、学習面、個人的な側面、社会的な側面など、目標の種類を区別し始めます。この時期からSMARTの要素を教え始めます。

・Goal Ladder/Staircase(目標のはしご/階段)~ 描いたはしごや階段の一番上に大きな目標を書き、下の段から順に、目標達成に必要な「小さな行動ステップ(中間目標)」を書き出します。大きな目標を分割する方法を学びます。

・Introduction to SMART Goals(SMARTゴールの導入)~ 具体的 (Specific)、測定可能 (Measurable)、達成可能 (Achievable)、関連性 (Relevant)、期限がある (Time-bound) というSMARTの要素を、子どもにも分かりやすい言葉で教えます。例:苦手な科目の成績を上げる、特定のスポーツ技術を習得するなど。

・Goal-Setting Journal(目標設定ジャーナル)~ ノートなどに目標を書き、毎週の進捗状況を記録し、何が助けになり、何が障害になったかを振り返る時間を設けます。

・Vision Boards (ビジョンボード) ~ 雑誌の切り抜きや写真、言葉などを使って、将来や年間の目標を視覚的に表現したコラージュを作成します。目標を具体的で魅力的なものにします。

・Growth Mindset(成長マインドセット)~ 知識や能力は、努力と献身によって伸ばすことができる、という考え方に焦点を当てた授業やディスカッションです。具体的な例:固定マインドセットの言葉=ネガティブな言葉(例:「私には才能がない」)を、成長マインドセットの言葉=成長につながる言葉(例:「理解できるまで練習し続けよう」)に置き換えます。努力こそが成功の鍵であること、そして失敗から学ぶことの大切さを理解させます。(参考文献: 成長マインドセットに関しては、 bit.ly/4nwpSSF のなかにある『親と教師のためのマインドセット入門』を資料請求)

・Wheel of Fortune(生の輪)アセスメント~ 生徒たちは円を描き、それを「学校」「友人」「スポーツ」「趣味」「家族」などの様々な人生の領域を示すいくつかに分割します。そして、各領域について「改善したいこと」を目標として設定し、その目標を達成するための具体的なステップや、途中で直面し得る障害(困難)について話し合います。人生の様々な側面を考慮に入れた、包括的(ホリスティック)な目標設定を行うことがこの活動の意図です。

 

●中学生以上で取り組める活動

 自己調整学習、長期的な計画、アカウンタビリティー(結果に対する責任)に焦点を当て、目標を将来のキャリアや進路と結びつける活動を行います。

・SMART Goal Contracts/Conferences(SMARTゴール契約と面談)~ 目標、行動ステップ、中間チェック、予想される障害、そして協力者(教師や保護者など)を明記した公式な目標設定シートを作成します。教師と生徒が一対一で面談し、計画を具体化することで目標への責任感を高めます。

・Backward Goal Setting(逆算式目標設定)~「行きたい高校の特定のプログラムに入る」「大きな買い物のためにお金を貯める」など、長期的な目標をまず設定します。次に、その目標を達成するために必要な中間目標を年ごと、月ごと、週ごとに遡って決定します。これの異なるバージョンとして、野球の大谷翔平選手が高校時代に取り組んで有名になった「目標のマンダラチャート」があります。

・Letter to My Future Self(未来の自分への手紙)~ 1年後、または数年後の自分に向けて、現在設定している目標や夢、そして励ましのメッセージを書きます。手紙は保管し、指定された期日に返却することで、自己の成長を振り返る貴重な機会とします。

・Goal Reflection and Revision(目標の振り返りと修正)~ 定期的な振り返り活動を通じて、目標を達成できたかどうかだけでなく、そのプロセスを分析します。挫折やなかなか目標達成ができないことを学びの機会と捉え、必要に応じて計画を修正する柔軟性や適応力を養います。

・Model the Process(プロセスを実演して見せる)~ 教師が、自分のシンプルで個人的な目標を共有します。そして、その目標を達成するための具体的な行動手順を説明し、どのように進捗を記録し、途中の困難をどう乗り越えたかを生徒たちに示します。

・Celebrate Milestones(小さな達成を祝う)~ 最終的な目標の達成だけでなく、そこに至るまでの小さなステップ(ミニゴール)の達成も認め、積極的に称賛します。 モチベーションを高く保つために、継続的な成功体験を積み重ねさせます。

・Make it Public (with Consent)公開して結果責任をもたせる(本人の同意のもとで)~ 目標をGarden of Goals「ゴールの庭」★や掲示板などに展示(公開)することで、目標への結果責任を高めることができます。ただし、必ず生徒本人の同意を得て、共有しても問題ない目標のみを公開するようにします。( 周囲の目を意識することで自発的な行動を促しますが、プライバシーや心理的な安全性に配慮します。)

 

★「Garden of Goals(ゴールの庭)」とは、成長と育成というガーデニングの概念を使って、子どもたちが自分の目標を設定し、追跡するための視覚的でクリエイティブな活動のことです。これは、特に「成長マインドセット」をテーマにした授業や新学期の活動として人気があります。

活動の概要

  1. 目標を「種」にする:

o   生徒は、達成したい目標(学業、行動、個人的なスキルなど)を考えます。

o   その目標を、「植物」や「花びら」の形に切り取った紙に書き込みます。

  1. 行動計画を「水やり」にする:

o   目標を達成するために必要な具体的な行動やステップを、「水やり」「太陽の光」「肥料」などに見立て、別の小さな紙や花びらに書き込みます。(例:目標「数学の成績を上げる」→ 行動「毎日20分復習する」「分からないところは先生に質問する」)

  1. 掲示板で「庭」を作る:

o   生徒一人ひとりが作った目標の「花」や「植物」を、教室や廊下の掲示板に集めて展示します。これが「ゴールの庭」になります。

o   この庭には、「A Garden of Goals (ゴールの庭)」や「We're growing! (私たちは成長している!)」といったタイトルがつけられます。

  1. 成長を祝う:

o   定期的に自分の「植物」の成長(進捗)を確認し、達成できた行動や目標には色を塗ったり、チェックマークをつけたりします。

この活動のねらい

  • 視覚化: 自分の目標が「目に見える形」になることで、意識しやすくなる。
  • 成長思考: 植物がゆっくりと水を吸い、太陽の光を浴びて成長するように、目標も努力と時間をかけて達成していくものだ、という考えを学ぶ。
  • 責任感: 自分の目標を公の場に展示することで、目標達成への責任感や意欲が高まる(もちろん、公開には本人の同意が必要)。

 

関連記事:https://selnewsletter.blogspot.com/2025/01/blog-post.html

https://selnewsletter.blogspot.com/2023/11/blog-post.html

https://selnewsletter.blogspot.com/2025/02/sel.html

2025年9月20日土曜日

責任ある意思決定を教えて、学びに対する生徒のオウナーシップを高める

 私たちの毎日の生活は、意思決定の連続です。1時間の授業ですら、教師は何十回、何百回の意思決定で構成されています。しかし、それは事実であるにもかかわらず、問題は生活も、授業も意思決定(しかも、「責任ある」意思決定)の連続と捉えていないところにあるかもしれません。意思決定の前段として、常に選択肢があることも理解しておく必要があります。

 CASELは、「責任ある意思決定」について次のように定義しています。

さまざまな状況において、個人の行動や対人関係について思いやりのある前向きな選択をする能力のことです。これには、倫理的な基準や安心安全に関心をもち、個人や社会、集団の幸せのために、さまざまな行動の利点とその結果を評価する能力も含まれます。

 『成績だけが評価じゃない』の著者のスター・サックシュタインさんは、その第4章「責任ある意思決定を教えて、学びに対する生徒のオウナーシップを高める」の冒頭で次のように書いています。

 責任ある意思決定を教えることは、学びに対する生徒のオウナーシップ(自分事という意識)を高め、自分たちが教えられることやその方法について、生徒にエイジェンシー(自ら考え、主体的に行動して、責任をもって社会変革を実現していく姿勢・意欲)を与える一つの方法となります。(『成績だけが評価じゃない』の151ページ)

 責任のある意思決定と生徒が学ぶことを自分事として捉えることとの関係について、あなたはこれまでに考えたことがありますか?

 でも、サックシュタインさんはさらに、責任のある意思決定は、生徒が自分たちが教えられる内容や方法についてまで、自分たちが変えられる形で関与できると言っています。それは、具体的にどういうことだと思いますか?

多くの生徒は、自らが決めたことがどのような結果をもたらすかについてあまり考えていません。考えの至らなさは成長期においてよく見られることですが、学校において起こる問題や課題の原因となってしまいます。だからこそ、それが良いことだろうと悪いことだろうと、生徒が自らの選択結果について認識できるようにする必要があります。(同、151ページ)

 これは、まさにその通りです。いじめをはじめ生徒指導がらみの問題の原因は、生徒自らの選択の結果として起きていることは明らかです。そうであるなら、そのことについて認識できたなら、問題は減るでしょうか?

 サックシュタインさんは、具体的な事例を紹介してくれています。

 形成的評価と総括的評価の観点から冒頭のCASELの「責任ある意思決定」の定義について考えれば、このスキルを授業に盛りこむ必要性がより理解できるでしょう。たとえば、ある生徒が授業をサボって形成的評価を受けるという大切な機会を逃してしまったら、その学年で期待されるレベルよりも遅れてしまい、その後、追いつくのにこの生徒は苦労することになります。また、グループで行うプロジェクトのなかで、自分に与えられた役割に関する探究を進めず、放課後に何時間もゲームをしている生徒がいたらグループ全体の成績が下がり、メンバーの関係が悪くなるかもしれません。(同、152ページ)

 そして、「責任ある意思決定のスキルを授業に取り入れるだけではなく、形成的な学習経験を通じて、生徒自身が学びをコントロールしたり、責任をもって判断するためのスキルが練習できる機会を与えなければなりません」(同、152ページ)と提言しています。「形成的な学習経験」はformative learning experiencesを直訳していますが、イメージはつきますか? 「生徒の学びのあり方を形づける経験」ないし「成長の基盤となる学びの経験」です。それには、「生徒自身が学びをコントロールしたり、責任をもって判断するためのスキルが練習できる機会」が不可欠なのですが、あなたはそれらを提供していますか? 具体的にどうしたらいいのでしょうか? イメージのもてない方は、『教育のプロがすすめる選択する学び』『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』『一斉授業をハックする』などを参考にしてください。

意思決定の能力は生まれつき備わっているものだと思われがちですが、そんなことはありません。モデルとなるもの(それが明示されている、いないにかかわらず)から学ぶにせよ、自分自身の経験から学ぶにせよ、意図的に意思決定を行うことで私たちは、自分の人生をより上手にコントロールできるようになるのです。(同、152ページ)

より良い意思決定によって生徒のエイジェンシーが高まるといった環境であれば、生徒は必要としているものを示せますし(自分の必要とするものを主張する力であるセルフ・アドヴォカシーです。SEL便り: セルフ・アドボカシーの検索結果  と SEL便り: セルフ・アドヴォカシーの検索結果の両方を参照)、それによってどのように学ぶのか、どのように評価されるのかについて、自らコントロールするようになります。(同、153ページ)

 上に書かれている「意思決定の能力」や「自分の人生をより上手にコントロールできる」能力は、教育界の多くの人が生徒たちの「自律」に殊の外注目している理由でしょうか? でも、それを可能にする「意図的な意思決定」や(どのように学ぶのか、どのように評価されるのかについて、自らコントロールするという意味での)「形成的な学習経験」の機会を提供する方法は明らかでしょうか?

 そして、サックシュタインさんは、次の文章で第4章の冒頭の部分を結んでいます。

 より適切な決定をしたり、それによって自分や周りの人たちに対して、マイナスではなくプラスの影響を与えられるような機会が毎日どれくらいあるかについて考えてみましょう。この章(この後の連載)では、生徒がより良い決定ができるように手助けをすると同時に、その決定や決定の結果として、学びへの影響について振り返るための十分な機会を提供する方法に関して探っていきます。(同、153ページ)

具体的には、①道徳的・倫理的な選択、②協働することの役割、③時間管理の決定などが扱われている他に、④順位づけや能力別クラス編成、カリキュラム、生徒の感情的・社会的なウェル・ビーイングなどの学校レベルでの責任ある意思決定が紹介されています。最後は、学校の大人たちが意思決定のモデルを生徒たちに示し続けるうえでとても大切な項目です。なので、しばらく先のことになるので、本に書かれている以外にどのような項目があり得るかを考え続けたいと思います。

 なお、これまで『成績だけが評価じゃない』を扱いながら、CASEL(https://selnewsletter.blogspot.com/2023/03/)が打ち出している5本の柱のうちの自己認識(SEL便り: 自己認識の連載)と自己管理(SEL便り: 自己管理の連載)について詳しく紹介してきました。3番目の連載として今回扱うのは、責任ある意思決定です。社会認識と対人関係スキルについても、今後紹介していく予定です。

2025年9月6日土曜日

宿題と自己管理の切り離し

 生徒が責任を果たす/負うことは、自己管理における重要な要素です。これまでの5回の連載(SELの2本目の柱である「生徒が自己管理/コントロール能力を身につけることの大切さ」)では、具体的に自己管理をするための方法を紹介してきました。

 『成績だけが評価じゃない』のなかでは、多くの教師や保護者は「宿題は子どもの責任をもたせるのに役立つ」と思っているのに対して、著者のスター・サックシュタインは「私は、まったくそうは思いません」と言い切っています。そのあと、2ページにわたってアルフィー・コーン★の文章を引用する形で、「宿題の価値を裏づける証拠がないことに加えて、ほかの活動に費やすべき時間を宿題が奪っていると言えるでしょう」と書いています。そして彼女は、放課後は伸びやかに過ごしたり、家族とかかわったり、そしてもっとも重要なことは遊ぶことです、と言い切っています。
 『成績だけが評価じゃない』のなかでは、このぐらいしか宿題については扱っていないので、残りの部分では、彼女が共著で書いている『宿題をハックする★★』の「まえがき」の内容を紹介します。
・教師に「やってきなさい」と言われた生徒が、何も考えずに、ワークシートを埋め」たり、問題集を解いたりすることほどおかしなことはありません(iiページ)。
・保護者からの要望があるというだけの理由で、生徒に無意味な宿題をさせることを教師の義務や責任と思ってしまうこと自体、本末転倒です(iiページ)
・毎日の宿題に効果があることを占める研究結果がほとんどないにもかかわらず、生徒の学びの可能性を破壊するようなことを、教師に(そして、結果的に生徒に)対して期待し続けるのはなぜでしょうか?(ivページ) ~ 日本の場合は、受験への準備?
・宿題(家庭学習)は、教育においてもっとも誤用されているツールです(訳者コラム・誤用されているツールを参照★★★)(viiページ)。
・あまりにもたくさんある矛盾する考えが、宿題という枠組みのなかに組み込まれています。顕著なものとしては、学校で学ぶことのほかに課される課題と、より自然な状況で行われる遊びや学びとの間に矛盾があります。生活と直接関係しない宿題を出したときは、生徒の時間価値を貶めているだけではなく、学ぶことの価値も軽んじていることになります(vii~viiiページ)。
・成績表に成績を書き込むためだけに宿題を出して、それらに成績をつける代わりに、その時間とエネルギーを生徒の学習経験を改善するために費やすべきではないでしょうか?(viiiページ)
・『宿題をハックする』は、読者に宿題に対する伝統的な見方を改め、教師、保護者、そして生徒にとって、より意味のある宿題(家庭学習)の新たな見方とやり方を可能にするために書きました(ixページ)。
 以上が「まえがき」に書いてある内容の一部です。少しでも共感する部分があったり、宿題は子どもたちの時間の結構な部分を占めているので再確認する必要があると思われた方や、https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784794811226 で目次をチェックして興味がもてた方は、是非読んでみて(かつ少しでも実行に移して)ください。
★彼の本は、宿題に関するものやテストに関するものを含めて数冊訳されていますので、興味のある方は是非ご一読を。とても刺激的な内容です。
★★ハックするは、現状を改善・修正するという意味です。
★★★訳者コラム・教育においてもっとも誤用されているツール(viiiページ)のコピー:
現時点でほかに誤用されているツールは、評価や成績、教師による講義形式の授業、少人数クラス編成(能力別は弊害が大きい!)、グループ学習、教科書、時間割、学年、教員研修などたくさんあります。それらの多くは、その効果が検証されているのではなく、単に習慣化しているもの(結果的に「悪習」?)が多いです。あるいは、本来手段でしかないものを目的化してしまうことによって、本来の目的(生徒の学びの質と量を最大化すること)とは逆の結果を招いています。これらの点について興味のある方は、ブログの「PLC便り」をご覧ください。そして、あなたがハック(=修正や改善)したい学校の習慣や決まりごとは何かと考えてみてください。

2025年8月16日土曜日

自己管理のためのその他の方法

 これまで、自己管理のための方法として時間管理の方法、マインドフルネスのテクニック、ストレスへの対処法などを紹介してきましたが、今回は(SELの2本目の柱である「生徒が自己管理/コントロール能力を身につけることの大切さ」の5回目は)、それ以外の生徒が自己管理のさまざまな側面を理解して、向上させるための4つの方法を紹介します。それは、①目標を達成できる学習者の特徴を明確に特定する、②責任感を養うために教室での役割を活用する、③責任を果たすために考えだしたことを声に出して共有する、④責任ある行為を認める、です(『成績だけが評価じゃない』の142~5ページ)。

 

①   目標を達成できる学習者の特徴を特定する

生徒に、目標を達成する学習者の特徴を取り上げてもらうことからはじめます。たとえば、「本を読むのが好き」、「指示に従う」、「計画性があり、物事を順序立てて考えたり行動できる」などです。そして、その回答を書き留め、その資質を「知識」、「責任感」、「態度」などといったいくつかのカテゴリーに分類します。

次に、生徒の年齢に応じて、これらのカテゴリーの特徴を定義づけします。それぞれの特徴がどのようなものか、良い例と悪い例を挙げて定義をより明確なものにします。この表を教室に掲示して、一年を通して参照できるようにします。

 

②  責任感を養うために教室での役割/任務を活用する

多くの教師は、教室を管理するために、生徒ができることを記した係活動の一覧表を掲示しています。生徒に係を割り当てるということには、さまざまな利点があります。それによって、「自分の任務を遂行するのに役立つだけでなく、生徒に目的意識と、教室おいて目に見える形での日常的な責任感を与えます」。

係活動を行う場合、欠席する日には、事前に代わりの人を見つけなければならないというレベルの責任が伴います。係活動にかかわる責任の重さは、すべての生徒が目にします。そして、「みんなにとってその役割を果たすことがどれほど重要なのか、果たせない場合にはどのような影響があるか」について目の当たりにするのです。

なお、この点については姉妹ブログ「PLC便り」(https://projectbetterschool.blogspot.com/)の8月17日(日)の記事をご覧ください。異なる視点を提示してくれています。

 

③  責任を果たすために、考えたことを声に出して共有する

考えたことを声に出すという行為は、状況や行為の結果起こりそうなことを考慮して、最善の計画を立てる方法を示すためによい方法です。教師は次のような形でモデルを示すことができます。

明日、私は学校に来られません。私がいないと何かできないことはありますか? 今週のテーマは、しっかりとコミュニケーションをとることです。明日は、代わりの先生にそのことを伝えて、やってもらいます。

また、明日に起こったことを私が把握しておく必要もあるので、学校に戻ったら朝一番に連絡をとって、前日のことを教えてもらうようにします。いや、明日の放課後に代わりの先生にメッセージを送れば、その日のうちに情報が得られるので、明後日学校に来ても、遅れることなく予定していることはうまくやれると思います。

 

④  責任ある行為を認める

教室の規範を実行している生徒を認める、これは非常に重要なことです。そのためには、保護者に連絡し、責任ある行動の具体例を伝える必要もあります。また、家庭において責任感をもたせるためにどのようなことをしているのかと、保護者に尋ねてみるのもいいでしょう。

よいアイディアがあれば、その方法を教室で応用してもいいでしょう。もし、保護者が教師の助けを希望するのなら、保護者と協力して、子どもが家庭で責任感と時間管理のスキルをさらに向上させるためにはどうしたらよいのか、例を挙げながら説明することもできます。